最優秀賞は「灯油難民」を解決するサービス。“NoMaps NEDO Dream Pitch” with 起業家万博に行ってきた!

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最優秀賞は「灯油難民」を解決するサービス。“NoMaps NEDO Dream Pitch” with 起業家万博に行ってきた!

2019年10月16日から20日までの5日間にわたり札幌市内で開催されたクリエイティブコンベンション、NoMaps2019。初日の10月16日(水)13時30分より始まった“NoMaps NEDO Dream Pitch” with 起業家万博に行ってきました。場所はACU-A。主催者発表の来場者は189人でした。

北海道札幌市中央区北4条西5丁目アスティ45-12F・16F

北海道札幌市中央区北4条西5丁目アスティ45

NEDO Dream Pitch会場
会場ぎっしりの観客。189人の方が来場

NEDO Dream Pitchとは?

“NoMaps NEDO Dream Pitch” with 起業家万博

「“NoMaps NEDO Dream Pitch” with 起業家万博」とは、具体的なシーズ(※起業家が持つ種のこと。事業化、製品化の可能性のある技術やノウハウ)を基に起業して、事業を大きく拡大させたいと考えている起業家、起業家予備軍、起業意識のある研究者などが自らのビジネスプランを発表するピッチコンテストです。

北海道経済産業局の山本さんによると、NEDO Dream Pitchは今回で4回目。

NEDO Dream Pitchの目的
NEDO Dream Pitchは3局、5組織が共同で準備、開催

今回のピッチに至るまでには、応募から多数のプロセスが踏まれています。ビジネスプランを添削し、書面審査があり、集合研修、メンタリング……そして本日のピッチコンテストを迎えます。

ちなみに2019年6-8月にビジネスプランを募集し、全国からの応募が15件。そのうち書類審査を通過し、研修を経た12チームが本日、ピッチを行います。ピッチ時間は1チーム7分間。質問時間は3分間。

ピッチ後に6名の審査員が

  • 顧客ニーズを意識しているか
  • 将来性・実現可能性
  • 事業化に対する情熱・熱意
  • 社会的課題の解決の可能性
  • 技術シーズの事業化の可能性

という点で基準で審査。審査員は下記の6名です(敬称略)。

  • クリプトン・フューチャー・メディア株式会社 代表取締役/NoMaps実行委員長 伊藤 博之
  • 株式会社ABBALab 代表取締役/さくらインターネット株式会社フェロー/京都造形芸術大学教授 小笠原 治
  • 東京大学 産学協創推進本部 イノベーション推進部長 教授 各務 茂夫
  • 株式会社メディア・マジック 代表取締役 里見 英樹  
  • BIJIN & Co.株式会社 代表取締役社長 田中 慎也
  • 一般財団法人SFCフォーラム 事務局長/SFCフォーラムファンド ファンドマネージャー 廣川 克也

今回、表彰されたチームは他の大会への出場権もあります。用意された賞や特典は以下のとおりです。

用意された賞や特典

以上の紹介後、12チームのピッチがスタート。キタゴエの本記事ではIT、北海道からのチームをピックアップしてお届けします!

soko-co FOREST – 株式会社BREAK THROUGH

soko-co FOREST - 株式会社BREAK THROUGH

審査員特別賞Mt.Fujiイノベーションエンジン賞をダブルで受賞したのは株式会社BREAKTHROUGH(北海道札幌市)。北原健太郎さんの発表サービスは、林業における電波圏外下での位置情報共有ソリューション、soko-co FOREST。

IT業に従事してきた北原さん。2015年から携わる林業ハッカソンイベントをきっかけとして、林業の現状を知り、林業向けサービスの制作を開始します。

ピッチをする株式会社BREAKTHROUGHの北原健太郎さん
ピッチをする株式会社BREAKTHROUGHの北原健太郎さん

日本は国土の7割が森林の世界第三位の森林率。戦後、禿山になった山に戦後造林が行われましたが、約50年経ちます。林業は50年が木の切り時。「今が切り時なんです」と北原さんは力説します。

人工林の齢級別面積

しかし、林業は現在、担い手不足が発生しています。非常に危険な職業であり、毎年約40人前後の死者が発生。事故原因を調べたところ、「お互い近いところにいるのに気づけない」という原因が多くあることに気づきます。作業する森林では、携帯電波が圏外なことが多く、連絡手段が難しくなっているのです。

林業の事故原因
林業の事故原因

そこで考えたのは林業における電波圏外下での位置情報共有ソリューション。オフラインでもスマートフォンの送受信を可能します。本ソリューションを使用すれば、電波圏外の状態でもお互いの存在に気づくことができ、事故を防ぐことができます。ミッションは「林業におけるICTで安全に効率化したい」。

シェアリングフライトという新たなる選択肢「MILE SHARE」 – 株式会社マイルシェア

株式会社マイルシェア

審査員特別賞を受賞したのは株式会社マイルシェア(北海道札幌市)。森田宣広さんが発表するサービスは、シェアリングフライトという新たなる選択肢「MILE SHARE」。

今まで飛行機ユーザーが「飛行機代が高すぎる」「約7割のユーザーがポイントやマイルを有効活用できていない」、飛行機会社には「ポイントやマイルが負債として、たまり続けている」という問題がありました。これを解決するのが「MILE SHARE」です。

株式会社マイルシェア(北海道札幌市)の森田宣広さん
株式会社マイルシェアの森田宣広さん

「MILE SHARE」は世界中の飛行機に乗りたいユーザーと、ポイントが余っているユーザーをマッチングするプラットフォーム。

「ポイントやマイルは売買していいのか?」「ポイントはシェアしていいのか?」という疑問がありますが、シェア可能なマイルのみを使っているそうです。JALやANAはシェア不可のため不使用ですが、なんとJALやANAに乗ることは可能。どうやってJALやANAに乗るのか。

理由は世界3大アライアンス。JALやANAは世界3大アライアンスに所属しているため、このアライアンス経由でのマイルのシェアが可能なそうです。

マイルシェアのスキーム
マイルシェアのスキーム

ポイントは売買不可ですが、個人間のシェアは可能。発生する金額はサイトのシステム利用料として、処理しているため、各社の利用規約にも触れず、リーガルチェックも済んでいるようです。

「マイルシェアは世界一を目指します。世界をもっと小さくしていきます」と熱く語り、ピッチをもっと締めくくりました。

相続・贈与プラットフォーム レタプラ – 株式会社FP-MYS

NoMaps賞を受賞したのは株式会社FP-MYS(東京都)。工藤崇さんが発表するサービスは、相続・贈与プラットフォーム、レタプラ。

相続はなくなった時だけの問題ではありません。不動産をどうするか、誰にどう分け与えるのか……ところが資産を持っている人の意見を聞いたり、生きているうちの相続の話し合いは難しいのが現状。2019年は50年に一度の相続新時代と言われており、50〜55歳から話し合うことが理想。

ピッチする株式会社FP-MYSの工藤崇さんは北海道・増毛町出身。

そこで提供するサービスが50歳から家族と相続の第一報を考え始めるためのサービス、レタプラ。レタプラは財産や資産を入力すると、相続に関わる専門家からのアドバイスを受けられるサービスです。

相続を受けられる専門家

今後は北海道に本社を移転し、北海道版のレタプラを作りたいと想定。令和10年の社会問題は相続が起点となると話し、「相続(そうぞく)を争続(あらそうぞく)にしない」と強く語り、ピッチを終えました。

満室ナビ – 株式会社RESA

優秀賞を受賞したのは株式会社RESA(北海道札幌市)。芝哲也さんが発表するサービスは、満室パターンで物件価値最大化をナビゲートする「満室ナビ」。

芝さんの母親は過去にアパート経営。物件購入後の半年で、半分の退去があった経験があったそうです。空室を埋める方法の一つは、家賃の調整。近隣の空室物件の家賃を調べて、その家賃に合わせます。しかしこの方法では売上が下がり続けしまいます。

空室を埋めるもう一つの方法は物件への投資。家賃はそのままで魅力のある物件になるよう、設備へ投資します。しかしながら、限られた予算の中で、どの設備に投資すればいいのかは非常に難しい問題です。

株式会社RESAの芝哲也さん

その問題を解決するのが「満室ナビ」。満室ナビは、満室になっている物件のデータを集めて、満室空室とで何が違うかを分析。分析をすることにより、どうすれば満室になるかがわかると言います。芝さんは「スポーツと一緒で、上手い人を真似るという考えがあります」と説明します。

この例だと宅配ボックスに投資することにより、家賃を67000円から70000円に値上げ可能ということがわかる

満室の物件との違いによる改善シミュレーションが可能。例えば、宅配ボックス、テレビ付きTVインターホンにチェックを入れると、どのくらいの家賃相場になるかを確かめることが可能に。最も投資効率の良い設備が明らかになります。芝さんは「私たちは情報非対称性を業界をハックしながら、好循環を目指したい」と語り、ピッチを締めくくりました。

灯油エネルギーを可視化するIoTデバイス – ゼロスペック株式会社

ゼロスペック株式会社

そして最後に、最優秀賞、NICT賞(北海道起業家万博賞)をダブルで受賞したのはゼロスペック株式会社(東京都)。多田満朗さんが発表するサービスは灯油エネルギーを可視化するIoTデバイス。

北海道では8割が灯油エネルギーに頼っている中で定期配送が課題になっています。灯油の配達員にとって、灯油タンクの灯油の残量がわからないが、定期的に通い、配送しなければいけません。そのため一度あたりの供給量は安定しません。さらに、配送員は過酷労働で人手不足。高齢化が進み、灯油難民という言葉が出ています。このままだと、灯油エネルギーのインフラが維持できなくなります。

ゼロスペック株式会社の多田満朗さん
ゼロスペック株式会社の多田満朗さん

この問題はどのように解決するのか。考えたのが「遠隔で残量を可視化できれば、一回の供給量を最大化すること」これをIoTで行うためにデバイスを制作。デバイスのセンサーが灯油タンクの量を可視化します。

タンク内の灯油残量を可視化するIoTデバイス
タンク内の灯油残量を可視化するIoTデバイス。灯油の蓋と交換する

取得したデータをかけ合わせて、今まで人がやっていた残量管理、発注管理、配送管理。今までできなかった消費予測を自動で行うシステムも提供します。効果として、配送回数は48%下がり、約37,320時間の配送時間を減らせることを想定しています。

審査委員長の各務(かがみ)さんは審査後の講評において、ゼロスペックについて、以下のように評しました。

「広大な北海道の土地において、『灯油難民』 という社会的課題が課題があることがわかりました。遠隔では灯油の残量がわからず、残量が十分な場合、灯油の輸送コストと見合わない場合があります。ゼロスペックのサービスは遠隔でも可視化して最適化することによって、輸送コストを下げ、売上を上げられる顧客ニーズがある。さらに技術的にも顧客の状況を知った上、灯油の蓋を変えるだけで導入できる技術的シーズもある。さらに『灯油難民』という社会課題を解決する合わせ技一本として、最優秀でした」

取材を終えて

登壇者と審査員で記念撮影

長らく「収益を生むサービス」と「社会的課題を解決するサービス」という目線は別だった印象があります。社会課題を解決するサービスは収益を生みづらい。ただ、今回登場したサービスの多くは「社会的課題を解決する」がメインになっており、なおかつ、収益を生むサービスを目指したビジネスが多かったように思います。

「社会的課題を解決する」だけでは長く続かず、いわゆる「スケールしにくい」となります。今回の最優秀賞を受賞したサービスはIoTの技術も取り入れることによって、まさに理想的なビジネスになったのではないかと思います。

古くからの課題が最新のIT技術で解決していく方法を提示してくれた“NoMaps NEDO Dream Pitch” with 起業家万博。これからもどのような起業家が生まれてくるかが楽しみです。

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マーケティスト代表。札幌を中心にWebマーケティングコンサルティング・サポートのサービスを提供しているフリーランス。キタゴエでは北海道IT業界の最前線をお伝えします!プライベートでは今熱中している趣味を話すドハマリや、赤沼俊幸の写真都市というイベントを行っています。最近はnoteも書いています。

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