2018年4月20日(金)に北海道大学工学部フロンティア応用科学研究棟レクチャーホールにて、開催されたOpen Network Lab Hokkaidoローンチイベントに行ってきました!本記事は後編、パネルディスカッションの模様をお届けいたします。
前編はこちらの記事をご覧ください!
地方展開第一号が札幌!Open Network Lab HOKKAIDOのローンチイベントに行ってきた!(前編)
豪華メンバーによるパネルディスカッション
Open Network Lab HOKKAIDOのローンチイベント、最後は北海道の研究者と起業家によるパネルディスカッションが行われます。左から、
- モデレーターの株式会社デジタルガレージ執行役員SVP 佐々木智也さん
- はこだて未来大学システム情報科学部教授 松原仁さん
- 北海道大学調和系工学研究室教授 川村秀憲さん
- クリプトン・フューチャー・メディア株式会社代表取締役、No Maps実行委員会実行委員⻑ 伊藤博之さん
- 株式会社ファームノート代表取締役 小林晋也さん
となっています。各パネラーによる自己紹介、自身の活動紹介後、パネルディスカッションが始まります。
北海道の学生、起業家を育成する土壌について
最初のテーマとして、モデレーターの佐々木智也さんより「現状の学生の状況について。起業家を育成する土壌があるかどうか」というテーマをパネラーに投げかけます。
松原 : はこだて未来大学の卒業生は函館に残りません。2/3が首都圏、20%が札幌に行ってしまいます。函館に学生が勤めたい会社ができれば、勤めるでしょう。私は函館にベンチャー企業を作ったので、前よりは良くなっていると思います。
はこだて未来大学の学生の7割ぐらいは北海道出身です。真面目で素直でいい子が多い。「ベンチャー作る」と言っても「え?」となります。今回のような機会から「ベンチャーを作る」という選択肢の存在を学生に見せられたらいいなと思っています。
川村 : 北海道大学の工学部もほぼおなじ状況でしょう。おそらく100%が就職じゃないかと思います。
理由は二つあると考えており、一つは北海道人の気質だと思います。フロンティアスピリッツやボーイズビーアンビシャスと言っておきながら、冒険するという気質はありません。どちらかというと決まりきったところできっちりやりきる特徴があります。なかなか新しいことが踏み出せません。
周りの環境はどうか?と考えると、周りの札幌、北海道で元気良くベンチャーを立ち上げる人や情報がそもそもない。周りにサクセスストーリーがないので、立ち上げ方がわからない。
二つ目は情報の問題であって、やる気の問題ではありません。そう考えると、Open Network Lab HOKKAIDOをきっかけに応援する仕組みができ、周りがおもしろいことをやって成功すれば、状況は少しずつ変わると思います。
伊藤 : 1995年に会社を作りました。起業ブームも何もない状況です。周りに支援する人もいませんでした。支援する人が多ければ、起業する人が増えるかというと、そう単純なものではないかと思っています。
「起業したい」よりも「おもしろいことがしたい」と好奇心を刺激することが周りにあって、例えばブロックチェーンのような「これを使えば、これができる」というワクワクする気持ちの高まりが大事だと思ってます。
その中でOpen Network Lab HOKKAIDOのようなプログラムで高まりを確信に変えていくことが大事だと思っています。「ワクワクを感じてください」というのがもう少しあってもいいかと思っています。
NoMapsではワクワクすることをテーマにしています。昨年はプログラミングワールドという小学生にプログラミングを教えるワークショップは1,000人参加者がいて、ICCに入りきれませんでした。
大学生より上の人たちに対しては起業の呼びかけ、平行して小学生に「プログラミングで楽しいよ」「音楽は楽しいよ」という種を撒き、好奇心を高めることをやっていきながら、北海道型の起業を考えたいと思っています。
小林 : 北海道のスタートアップはレベルが低くすぎてダメで、ピッチイベントを見てもずっと出ている人がいつも一緒。「これはスケールしないな」というビジネスモデルが多い。
問題は動機づけだと思っています。「人間はやりたい」と思ったらやります。ただ、やりたいと思ったけど、やらないのは不安を感じているからだと思います。なぜ不安か?
それは漠然と何をしたらいいかわからないから、不安を感じるんだと思います。やり方がわからないから不安を感じる。ですので、「不安は乗り越えられる」という動機づけが必要と思っています。
また、起業を推奨しない文化もあるのではと思います。起業はクリエイティブで、超カッコイイと思われる文化も必要だと思います。
起業家友達の間で、レベルの高い会話があればあるほど変わっていく。一緒に乗り越えていく仲間が必要です。スタートアップの仲間づくりの支援があれば、どんどんスタートアップが増えると思ってます。
佐々木 : おっしゃるとおり、東京でもOpen Network Labを運営していても、コミュニティが大事だと思っています。「失敗してもいいよ、俺が拾ってやるから」という環境が大事。そういう環境や卒業生のアドバイスが北海道にないと感じているので、コミュニティ作りを含めて、これから北海道にスタートアップの歴史を作っていければと思っています。
Open Network Lab Hokkaidoに期待すること
最後のまとめとして、佐々木さんより「今後、Open Network Lab Hokkaidoに期待を教えてください」とのお話があります。
小林 : 起業家とは「間違いを正しながら前に進む仕事」だと思っています。自分がやりたいという動機から、やっていくうちに大きな使命感が沸いて来たり、世の中を良くしたいという強い思いに変わります。
最初は自己中心から、次に他己中心、人のためになることが大事だと思っています。自分がカッコよくありたい、利益が欲しいという自己的にすすめても最終的には人のためになることが成功していくパターンだと考えています。
いろんな失敗をしますが、間違いを正せるかどうか。いろんな意見が聞けるか、いろんな事例があるかどうか、そういう情報から起業家は意思決定をしていきます。そのためには情報のソースとしての場があるといいと思います。信頼できる仲間と相談できる場作りを重要だと考え、Open Network Lab Hokkaidoに期待しています。
北海道が面白いと思うのは、イケてるベンチャーが札幌にはないことです。インターステラーは大樹町ですし、ファームノートは帯広です。それらはその場所でしかできないビジネスです。畜産は帯広が世界レベルですし、宇宙は大樹町だからこそできる。市場規模で考えると難しい。その場所でしかできない世界的にインパクトが有ることをやればいいと思っています。
不安を解消するいざないがあればいいですね。札幌を恨んでいるわけではないですよ(笑) 函館の水産もそうですね。強みがある場所を活かす。僕もサポートできればと思っています。
伊藤 : 土地、土地のやり方があります。北海道は北海道なりのやり方があります。
Open Network Lab Hokkaidoに期待することは、東京方式ではなくて、北海道型として既存の産業を後押しするのがいいのではと思います。
北海道は開発地として、土建屋と役所が強い土地です。北海道は「いい親方に寄生するのが生き残る道というメンタリティ」があります。ITも土建屋的な元請けがいて、大企業と仲良くすれば仕事もらえてという、いい親方を見つけるのを繰り返す社会です。
Open Network Lab Hokkaidoがいい親方にならないように。そういう北海道気質を脱却しないといけないと思っています。
川村 : ずっと北海道に住んでいますが、すぐ飛行機でどこへでも飛んでいけるし、日本の狭さを感じます。外へを考えると、世界との距離はそんなにありません。最近決めたのはまだ会ったことのない人に会うということで、年間1,000人ぐらいと名刺交換しています。
私が大学にいても、年間1,000人と名刺交換できる世界になっています。北海道の課題を解決するのがきっかけかもしれないが、実はヨーロッパの問題を解決できるかもしれません。そういう可能性を考え、世界を目指して、スタートアップについて考えてほしい。シリコンバレーやヨーロッパに繋がっていく面白いことをどんどんやっていき、楽しいことがあればいいですね。
松原 : ベンチャーは北海道の人だけでやらなくもいいわけで、日本・世界中から来ても良いんです。ベンチャーで一番大事なのは仲間だと思っています。
北海道は食べ物は美味しいわけですから「北海道おいでよ、美味しいよ」と言えます。いい仲間といい食事があれば、その場所にくる。北海道はそういう意味では潜在性があると思っています。
ですので、「この人たち楽しそうだな」という姿を見せて、北海道の学生に見せて、マインドを持っていき、雰囲気のラボを形成できればいいなと思っています。
取材を終えて
北海道のスタートアップ業界には大きいニュースとなりました。日本で多くのスタートアップ実績のあるOpen Network Labの地方展開の第一号が札幌に、Open Network Lab HOKKAIDOとして誕生しました。すでに第1期シードアクセラレータープログラム募集は終わり、多くの応募があったと聞きました。
一方、パネルディスカッションで話されたように、まだまだ北海道にはスタートアップ文化が根ざしているとはいえません。厳しい意見のほうが多い現状です。しかし、少しずつではありますが、北海道のスタートアップの形が生まれつつあるのも確か。北海道の経済は以前として厳しいですが、その分、伸びしろがあるということもいえます。北海道の山積みの課題をスタートアップが解決する可能性があるのではないでしょうか。
Open Network Lab HOKKAIDOが生まれ、北海道はどう変わっていくか。今後もますます目が離せません。
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