2017年6月10日(土)から、9月9日(土)までICC(インタークロス・クリエイティブ・センター)で開催されていたサッポロクリエイティブキャンプ2017を取材してきました!
サッポロクリエイティブキャンプ2017が開催されたICCは札幌市産業振興センター内にあります。札幌市産業振興センターは札幌市営地下鉄東西線の東札幌駅から徒歩7分。
サッポロクリエイティブキャンプは現場の第一線で活躍するプロフェッショナルの講師から、IT・クリエイティブ系の内容を学べるセミナーを受講できます。なんと参加費は無料。
講師と内容は毎回違い、2017年6月10日(土)から9月9日(土)までの全10回、土曜の午後から開催。一般財団法人さっぽろ産業振興財団が主催し、株式会社えぞキッチンが事業運営しています。セミナー内容や講師陣はサッポロクリエイティブキャンプ2017のサイトをご覧ください。
インタビュアー・構成・撮影 : 赤沼俊幸 取材日 : 2017年8月5日(土)
事業運営者・主催者インタビュー
サッポロクリエイティブキャンプ2017を知るために、サッポロクリエイティブキャンプ2017事業運営者の株式会社えぞキッチン代表取締役社長大石敬さんと、一般財団法人さっぽろ産業振興財団 情報産業振興部IT推進課IT推進係長の佐々木諭志さんにお話をお伺いしました。
ーーサッポロクリエイティブキャンプはどのような方が参加していますか?
大石 : セミナーによっても異なりますが、社会人9割、学生1割ぐらい。できれば、もっと学生の方に参加してほしいと考えています。男女比率はほぼ同じか、少し男性が多いぐらいですね。
ーークリエイティブキャンプの魅力について教えてください。
大石 : 例えば、何かを作ろうという時。開発手法やツールがAとBという複数が存在し、どちらの方法を選択するか悩むことがあると思います。
AとBという開発手法の中、Aのほうが魅力的に感じる。そうなると、Aを選択しますよね。でも、A特有の落とし穴があるかもしれません。そうなると、最初からBを選んでいったほうがいい。サッポロクリエイティブキャンプでは、そのようなことを学ぶことができます。それがショートカットになります。
サッポロクリエイティブキャンプは最前線で活躍する講師がセミナーを行います。最前線で活躍している方は必ずいろんな壁にぶち当たって、遠回りして、今に至っています。必ず迷い込む迷路を指し示してくれ、受講者は講師から最短距離を学ぶことができ、事業や学びのショートカットができます。
ーーサッポロクリエイティブキャンプの開催は2013年から4年目。以前はスマホキャンプという名前でした。スマホキャンプというものはなんだったんでしょうか?
大石 : 元々は2011年にえぞキッチンが単独で開催したのがクリエイティブキャンプの前身のスマホキャンプというセミナーでした。
そもそもなぜスマホキャンプを行ったかというと、当時2011年ごろはスマホバブルだったという背景があります。東京や大阪、福岡のクリエイターの方とお話をすると、スマホ系の開発案件が多く存在するバブル状態だったんですね。
でも札幌にいると、スマホバブルが来ている印象がありませんでした。どうしてそうなのかを聞いてみると、昔の札幌はクリエイティビティが高かったけど、当時の札幌はついてこれてなかったんですよね。特別な技術があるわけでもなく、価格が特別安いわけではなく「オフショアで良いじゃん」というようになっていました。
そこで札幌の技術や勉強の遅れを解消するスキルアップの勉強会を行いたいと思ったのがスマホキャンプを始めたきっかけです。東京など最前線で活躍している講師を招いた勉強会、スマホキャンプを開始しました。
スマホキャンプは1講座1.5万円、全10回で10万円という金額です。札幌では高いように思われますが、東京では1講座3万円という倍以上の金額でも満席になるんですよね。スマホキャンプは2011年、2012年の2年間、実施しました。
受講者の方からは高い満足度を得ました。ですが、人集めに奔走し、苦労しました。同時に私たち、えぞキッチンのライバル企業も増えますので、「何もいいことない」と思って、2012年に「辞めた宣言」をしたんですよね。
ただ、さっぽろ産業振興財団から「絶対にいい取り組みですね。継続させましょう」という話をいただき、2013年から生まれ変わり、サッポロクリエイティブキャンプとしてスタートしました。
ーー年によって、サッポロクリエイティブキャンプのセミナー内容に変化はありますか?
大石 : 毎年変わっています。そのとき旬な話題を極力、入れるようにしています。今年はAIがらみで旬のプログラム言語Pythonのセミナーがありました。言語だと昨年はiOSの開発言語Swiftもありました。
ーー受講者に評判の良いセミナー、内容などはありますでしょうか?
大石 : ハンズオン形式は人気が高いですね。関わっている方が多いジャンルのセミナーは人気が高く、受講者が多いですね。例えば、CSSなどです。CSSを扱うのはクリエイターやWebデザイナー、技術者の方など、多岐のジャンルに渡り、受講者が多いですね。
ーーサッポロクリエイティブキャンプはセミナー終了後には毎回、講師と受講者の方を交えた交流会があります。交流会を行っているのはどういう狙いでしょうか?
大石 : 交流会はセミナーでは聞けなかった、さらに奥深い話を講師の方から聞ける会というのがあります。
そして私たちの考えでは、セミナーで終わりではなくて、交流会はセミナーの次に続くものだと思っています。
例えば、えぞキッチンに仕事依頼があった時、私たちは小規模な会社ですから、全部は受けられなく、「データベースはあの企業に頼もう」「イラストはあの会社に頼もう」とアライアンスを組んで、案件ごとに仕事をしていく場合があります。
そのアライアンスの礎(いしずえ)は参加いただいた講師や受講者の方々がいるクリエイティブキャンプなんですよね。これが私たちの大きな財産になっています。
ただ、私たちだけで財産を持つわけではなくて、受講者の方々にも、それぞれの財産にしてほしいと思っています。自分たちの仕事の中で連携を持ってほしい。
札幌では会社を大きくしていくのではなく、得意分野に特化し、得意分野以外はチーム編成して仕事を行う会社が多いと思います。それが小さいIT企業の選ぶ道だと思うのですが、サッポロクリエイティブキャンプの交流会がアライアンスの礎になると思っています。
ーーなぜ無料で学べるのでしょうか?
大石 : さっぽろ産業振興財団のサポートによるところが大きいです。「人を育てたい」という気持ちで続いている事業ですね。さっぽろ産業振興財団の力と、関わる方の盛り上がりと熱意で成り立っています。
ーーさっぽろ産業振興財団は公的な機関ですので、何かしらの成果が求められると思います。その中で、続けられている理由について教えてください。
佐々木 : やはり、答えがすぐに求められるというのはあります。
ただ、ITはAIやIoTなど、移りゆく技術が多いですし、続々と新しい技術も出てきます。札幌の企業、開発者、学生が新しい技術に触れることで、ITにより興味を持っていただき、技術を身につける。ゆくゆくは学生がIT人材として札幌の企業に就職する。最終的に札幌のIT産業が盛り上がっていくことにゴールだとすれば、今は種を撒いている段階です。
アンケートの結果として「すごく勉強になっている」という感想も多く寄せられます。それが私たちの財産にもなっています。
ーー来年以降の展望、目標、夢などを教えてください。
大石 : 今年はAIとIoTについてのセミナーを行いました。まだ決定ではありませんが、今年は概論が多かったので、来年はもっと突っ込んだ講座を行いたいですね。
クリエイティブキャンプの価値は新しい技術に触れるフェーズと、技術の最先端を知って習得するフェーズがあります。例えば、CSSなどは技術の最先端や現場を知るフェーズになっています。AIなども来年は技術の最先端や現場を知る講座ができたらいいですね。
イラストレーターやアニメーターのライブペインティングの評判も良いので、強化していきたいですね。例えば、昨年の講座では深谷暎作先生にアニメーションの講座を行っていただきました。
題材はまばたきのアニメーションです。まばたきは開けている目と、閉じている目のニコマがあればいいと思いますよね。でも、アニメーションの世界でいうと、実際は三コマ必要なんですよね。開いている時と、閉じている時と、中間のコマである半開きの目のコマの三コマが必要です。
目の前で書いてもらって、目の前でアニメーションにしていきます。そのようなプロならではのテクニック、ツボを目の当たりにすると、興味を持ってもらったり、気付きがあります。
それらのプロの技を直接、間近で見られるのがクリエイティブキャンプの良いところです。プロの極意とコツ、テクニックを学べます。このようなプロの技を見る機会を増やしたい。どのジャンルにおいても見せていければと思っています。
さっぽろ産業振興財団を始め、講師陣など様々な方にご協力いただき、いい畑を作って、いい種を撒いていると思いますので、この種を育てていきたいですね。
佐々木 : 財団としては水をあげ続けて、枯れないように大きな花を咲かせたいですね。
また、これを続けていく中で、受講生の方が今後、講師側として回るというような循環があるように続けていきたいと思っています。
サッポロクリエイティブは無料で受講でき、最新の技術に触れらます。札幌でこういう取り組みをしていることをもっとアピールしていきたいと思います。そして札幌の企業のブランド化、札幌IT産業の地位向上を目指していきます。
ーーサッポロクリエイティブキャンプが札幌のIT産業の地位向上、レベルアップの一翼を担っていることがわかるお話でした。ありがとうございました!
Blenderではじめるアニメーション!(講師:大澤龍一氏)
それではサッポロクリエイティブキャンプでは、実際にどのような講座が開催されているか、紹介します。
紹介するのは8月5日(土)に開催されたサッポロクリエイティブキャンプ2017の第7回「Blenderではじめるアニメーション!」(講師:大澤龍一氏)です。
この日の講師の大澤龍一さんは専門学校で非常勤講師としても教えている先生です。無料で専門学校の先生のお話を聞けるのがサッポロクリエイティブキャンプの魅力です。
今回の講座はハンズオン形式。受講者はあらかじめBlenderをインストールしたパソコンの持参が参加条件となっています。Blenderとはオープンソースの3Dグラフィックスソフトです。
なかなかハードルが高い参加条件ながらも、この日の受講者は24名が集まりました。Blenderやアニメーションに関する高い関心が伺えます。
Blenderの初期設定から始まります。マウスやキーボードの設定から、Blenderの操作方法の説明を行います。
アニメーションを行うときに自然に見えるテクニックを解説します。例えば、自然なジャンプのアニメーションにさせるために、速いボールのときは横に長くなり、ボールが着地するときは横に長くなります。
「アニメーションの予備動作というのがあります。逆方向への動きをつけることです。ジャンプするときは下方向にかがみ込んでから、飛び上がる。鏡方向の動きを表現します」
ハンズオンの後半では「このシロクマにどのようにポーズ付けを行うか」という方法の説明があります。
最後は作った3Dをアニメーションとして出力する方法を紹介。計3時間のハンズオンが終わりました。
受講者インタビュー
キタゴエでは本ハンズオンを受講した方、お二人にインタビューを行いました!
ゲーム会社社員
株式会社DMM.com OVERRIDEの谷藤静香さんにお話をお聞きしました。
ーークリエイティブキャンプを知ったきっかけについて教えてください。
クリエイティブキャンプに初回から参加している会社の同僚の紹介で、知りました。
ーークリエイティブキャンプの魅力について聞かせてください。
これほどまでの内容を無料で聞けるのが嬉しいですね。自分が参加しやすい季節や、時間帯(休日の昼間)に行われているのもいいですね。
ーー今回の講座はいかがでしたか?
普段使わないツールを本ではなくて、リアルタイムで見て学べるのが良いと感じました。このような形式は、身体に入ってきやすいと感じています。
ーーハンズオン形式は身になりますよね。ご協力、ありがとうございました!
学生の方
続いて、学生の方にもお話をお聞きしました。
ーークリエイティブキャンプを知ったきっかけについて教えてください。
学校のパソコンに詳しい非常勤講師の方から教えていただきました。去年、Blenderの回から参加しました。
ーー今回の講座はいかがでしたか?
今回の講師である大澤先生の講座を昨年も受けていました。昨年、Blenderのモデリングを教えていただきまして、大澤先生の本を買ったのですが、アニメーションについてはよくわからない状態でした。
この間、自分でゲームを作っていた時、わからない点がありましたが、今回の講座を聞いて、わからない点が解決しました。わかりやすい講座で助かりました。Blenderに関する本はあっても、札幌ではこのような講座はないので、開催自体、とてもありがたいです。
ーー現在、高校生とのことですが、将来の仕事に活かしていきたい考えはありますか?
すごくあります。私自身、3DCGアニメーター、モデラーになりたいと思っていまして、それを学べる大学に行く予定です。
ーーそれではまさに将来の役に立つ内容ですよね。ご協力、ありがとうございました!
取材しての感想
サッポロクリエイティブキャンプ、まず驚いたのはこの内容が無料で学べるという点です。特に今回取材したようなハンズオン形式は有料形式が一般的です。インタビューでもありましたが、無料で学べるのは、さっぽろ産業振興財団の協力のおかげです。さっぽろ産業振興財団の「札幌IT産業の地位向上を目指す」という願いが反映されているイベントだと思いました。
その願いと重なったのは受講者インタビューに応えていただいた高校生の方です。高校生の方は3DCGアニメーターを目指しており、本講座が大きなステップアップになったと思います。
本やネットなどさまざまな情報がある現代ですが、やはり直接教えていただく形式に優るものはないでしょう。はっきりと成果が出るのは時間がかかるかと思いますが、サッポロクリエイティブキャンプは札幌のIT業界をさまざまな点で向上させる良い取り組みと感じました。
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