2019年6月6日、「ブロックチェーン技術を用いたEVスタンドのプラットフォーム構築に関する共同研究の実施について(INDETAIL×北海道電力)」というニュースがキタゴエ編集部に飛び込んできました。
ブロックチェーン技術?EVスタンド?プラットフォーム構築?共同研究?北海道電力…?
気になるワードが頻出したニュースのタイトル。本文からでは具体的な内容がよくわからず……詳細が気になったキタゴエはINDETAIL社に訪問。詳しく聞いてきました!
インタビュアー・取材・撮影/構成:赤沼俊幸 取材日: 2019年6月27日
INDETAIL代表取締役CEOの坪井大輔さんに詳しく聞きました
今回、インタビューに応えてくださったのは株式会社INDETAIL代表取締役CEOの坪井大輔さん(写真左)とプロジェクトリーダーの定居美徳(よしのり)さん(写真右)。
EVとは? EVスタンドとは?
本題に入る前、定居さんに用語と電気自動車の現状の説明を行っていただきました。
EVとは、電気で走る自動車である電気自動車。また、電気で走る機能を加えて、ガソリンでも走れる自動車としてプラグインハイブリット車(PHV)があります
EVスタンドとは、電気自動車やプラグインハイブリッドの電気を充電できる場所や設備のこと。通常のガソリンで走る自動車におけるガソリンスタンドのようなところ。
(以降はEVである電気自動車、PHVであるハイブリット車を総称して『EV等』と表記します
現在、EV等はどれくらい普及しているのでしょうか。自動車新時代戦略会議中間整理(※1)によると、2017年の普及率は電気自動車とプラグインハイブリット車を合わせて、全体のわずか約1.2%ほど。100台に1台がEV等と、今のところはとても少ないのが現状です。2030年には20~30%の普及目標があるようです。
電気自動車に関する疑問 : 燃料代
電気自動車は「燃料代が高い」というイメージがありますが、その点はどうなのでしょうか。
一般社団法人次世代自動車振興センターによると、電気自動車のリーフでは100km走行時の燃料代はガソリン車と比べて、500円安いという試算が出ているようです。
電気自動車に関する疑問 : 北海道ならではのデメリット?
メリットが多い電気自動車。デメリットはないのでしょうか。
定居さんによると、北海道で電気自動車が普及していない要因の一つに「寒冷地においては、暖房等での電力消費が増えるため、EVバッテリー消費が早くなるという点があります」とのこと。
日本にあるガソリンスタンドは約3万箇所(※2)。一方、EVスタンドの普及は急速に進み、現在は約3万8千箇所(※3)。一見すると、EVスタンドが充実しているように思います。
しかし、北海道に至っては、可住地面積100平方キロメートルあたりのEVスタンド数は全国平均30台に対して、北海道は5台。北海道のEVスタンド普及状況は全国より遅れているといえます。
電気自動車に関する疑問 : 走行距離とEVスタンド
走行距離についてはどうなのでしょうか。日産自動車によると、日産のリーフでは、満充電後は62kWhバッテリー搭載車で458km〜570km、40kWhバッテリー搭載車では322km〜400km走れるとの試算が出ています(※4)。充電が切れてしまったとしても、急速充電器を用いると、40〜60分で満充電が可能です。
(ただし、家庭用の100V電圧による充電器では、フル充電までに25時間かかります)
満充電後、約400kmを走ることができれば、通常に使う分には問題ないと思われますが、広い北海道を走るにはそれでも不安なもの。北海道の隅々までEVスタンドが普及してこそ、安心して電気自動車に乗れるのかもしれません。
・EVスタンドが少ないから、電気自動車が普及しない。
・電気自動車が少ないから、EVスタンドが普及しない。
そこで私たちと北海道電力さんで進めているのがブロックチェーン技術を用いたEVスタンドのプラットフォーム構築に関する共同研究です。
EVスタンドのプラットフォームとは?
2009年11月に開始した住宅用太陽光発電の余剰電力買取制度をきっかけに、屋上に太陽光発電パネルを設置している風景を見ます。
しかしこの余剰電力買取制度、2019年11月には施行から10年を迎え、電力の買い取り開始時期に合わせて順次、国が定めた価格での買い取りが終了します。買取期間が終了した住宅用太陽光発電の使い方には大きく2つの選択肢があります。
ひとつは、北海道電力をはじめ、各電力会社が新たな買取プランを公表していますので、それぞれの家庭で電力会社と契約を結び、余剰電力を売電する方法。
もうひとつは、EVや蓄電池などと組み合わせて、自宅などの電力として使う方法、つまり自家消費です。
さらにこのプラットフォームでは、自家消費の拡大版として、自分だけで消費しきれない自宅の太陽光発電の余剰電力を電源としたEVスタンドビジネスを個人でも容易に展開できることを目指しています。
EVスタンドのオーナーになるには、初期に行うEVスタンド機器の購入・設置や、自動決済処理システムの導入の他にも、稼働状況の確認から料金設定といった運用も行う必要があります。現状、これらを個人で行うのは大変かもしれません。
EVスタンドのオーナー様には自動決済処理、稼働状況の確認、柔軟な料金設定といった各種サービスを提供し、オーナー様の利便性向上を行い、EVスタンドの導入や運用の手間をできるだけ省きます。
このプラットフォームによって、個人でもEVスタンドのオーナーになることが可能になります。
現在、EVスタンドが設置してあるのは高速道路や、道の駅、スーパマーケット、コンビニなどのごく一部。坪井社長によると、プラットフォームが普及していくと、個人でもEVスタンドのオーナーになることが容易にできるそう。
ブロックチェーン技術はどこに使う?
ブロックチェーン技術はどのように使われているのでしょうか?
電気自動車ユーザーの視点から説明します。数あるEVスタンドの中でどのスタンドを選ぶのか。料金の安さと、よく使用されていて評価の高いEVスタンドを選びたいですよね。
ブロックチェーンを利用すると、積み上がった決済情報をユーザーに対して可視化できます。過去の決済情報から、ユーザーが良いEVスタンドを選ぶことが可能です。
オーナー側の視点から説明します。オーナーは利用時にトラブルを起こす電気自動車ユーザーにEVスタンドを使ってほしくないですよね。
決済情報にトラブルを多く持っているユーザーがスタンドを予約しようとした場合、予約を拒否することによって、トラブルを防ぐことができるでしょう。
エコに貢献する
最後に、気になっていることを聞きました。
また、このプラットフォームでは、自宅で消費しきれない太陽光発電の余剰電力をEVスタンドの電源とすることも目指しており、電気自動車がそうした電力を使うことができれば、CO2排出量が限りなくゼロになる自動車の走行が可能になると考えています。
本プラットフォームが進むと、北海道は電気自動車先進地域として、CO2が限りなく少ない北海道の自動車環境となるかもしれません。坪井大輔さん、定居美徳さん、ありがとうございました。
取材を終えて
本研究はすでに、INDETAILと北海道電力共同で2019年6月に特許出願済み。動き始めています。
では、電気自動車ユーザー、オーナー、地球環境にもメリットが多い本プラットフォームはいつからスタートするのでしょうか。今年度はINDETAILと北海道電力でプラットフォームのシステム設計、オンライン上の仮想シミュレーションを行い、2020年度以降に実証実験を行うようです。実用化は実証実験の結果を見て判断をするので、それ以降の提供になるようです。
INDETAILの調べによると、本システムは日本初とのこと。北海道でいち早く実用化が進めば、INDETAILと北海道電力が進めている北海道モデルが全国に適用されるかもしれません。一北海道在住者として、実用化に向けて、とても楽しみに待っていたいと考えています。
※1 自動車新時代戦略会議より
※2 経済産業省の平成29年度の発表より
※3 都道府県別補助金交付状況 充電設備_調査・統計_EV・PHV用充電設備の補助金交付を行う次世代自動車振興センター
※4 WLTCモードとJC08モードを記載
この記事をシェアする
同じカテゴリの新着記事
北海道ITまとめ
-
IT企業まとめ
-
スペースまとめ
ジョブボード
- 社名
- 募集職種
- 内容
- 給与・待遇
- 詳細
- 掲載終了日
ジョブボードに掲載したい企業募集中!詳しくはこちらより