前回はオフィス紹介記事をお送りした株式会社ステージハンド。今回は株式会社ステージハンド代表取締役の重泉正紀さんに事業内容を詳しくお伺いしたインタビューをお届けします!
インタビュアー・構成 : 赤沼俊幸 撮影・取材 : 広中裕士 取材日 : 2017年7月25日
ステージハンド代表取締役重泉さんインタビュー
――社名のステージハンドはどのような名前の由来なのでしょうか。
重泉 : ステージハンドは演劇用語で「黒子」という意味です。直訳すると、ステージの手(ハンド)ということですね。舞台袖で仕事している人のことを言います。本当は平仮名で「くろこ」にしたかったんですけど、ダサいと言われてしまったので(笑)、ステージハンドとしました。
――なるほど。ステージハンドのロゴの背景色が黒いのは黒子からきているのでしょうか?
重泉 : そのとおりです。ステージハンドのイメージカラーが黒なのはそのような理由からです。私たちはデザイン事務所ですので、カラーがあってはいけない。味があってもいけないと考えています。ですので、ロゴに使っているフォントはどのPCにも入っているHelveticaを使用しています。
もちろん、デザインは本業ですから、カッコ良くは並べましたよ(笑)。ベタな文字を使って一切オリジナルは使っていません。オリジナリティがあるものはお客様が使うものであって、私たちはオリジナルである必要がありません。私たちは作家でもありませんので、ポスターに作者名が載ることはなく、表部分に出ることは一切ないことから、ステージハンドとしています。
私たちは広告制作などを行うデザイン事務所として、企業がお客様に発信するツール作り、企業とお客様が繋がる部分を作っています。
Webの工場を作りたい
――ステージハンド設立のきっかけについて教えてください。
重泉 : 会社員時代に考えていた複数のビジネスプランを実践したくなったのがきっかけです。社員だと、どうしても限界がありました。そのとき所属していた会社の枠を飛び越え、頭の中にあることを実践したくなりました。
――頭にあるビジネスプランとはどのようなものでしょうか?
重泉 : いくつものビジネスプランがあったのですが、ひとつ紹介すると「Webの工場」を作るプランです。
――「Webの工場」とはどのようなものでしょうか?
重泉 : デザイナーがデザインしたものを印刷屋に入稿すると印刷物という成果物ができますよね。それをWeb版でやりたかったのです。
デザイナーが入らないケースもありますよね。Excelで作った原稿を印刷屋に渡して、印刷してもらう時などです。印刷屋が「これだとひどいから直しますよ」と必要最低限、綺麗にした上で、印刷物ができあがります。
この印刷屋が受け持っている役割のWeb版として、Webの工場をやりたいと思いました。
例えば、グラフィック専門のデザイン事務所は絵を描けたり、デザインは作れるけど、Webサイトは作れないですよね。Webサイトを作るにはコーディングが必要です。絵はあるけど、形にすることはできない。
そういった会社のお手伝いをし、Webの仕事ができる環境を提供したいと考えました。グラフィック専門のデザイン事務所に絵を描いてもらい、私たちはコーディングを任せてもらいます。
私たちは一歩ひいた黒子として、デザイン事務所から入稿してもらった原稿をコーディングする、ということを行っています。
ゆるくて自由・副業OK職場です
――会社はどのような雰囲気でしょうか?
重泉 : うるさい雰囲気ですね(笑) みんなキャッキャしてますよ。議論推奨、喧嘩は禁止。言いたいことは言っていい。そんな雰囲気です。社員には自由にやらせています。ゆるい職場です。
――他の会社とは違う特徴はありますか?
重泉 : 珍しいと思いますが、ステージハンドは「副業OK」としてます。職場での作業も可能です。
――え!? 職場で副業をしてもいいのですか?
重泉 : そうです。隠れて副業をされて、話がおかしくなるぐらいだったら、「今から副業します」と宣言をして、副業してもらったほうがいいですよ。社員も気を遣ってくれてるので、副業ばかりをしているわけではありませんが、就業中でも副業の電話に出ますよ。完全にオープンです。
――会社に内緒で副業をしている社員がいる話や、見て見ぬ振りをする話はよく聞きますが…社員と会社間で副業について、オープンなのはすごいですね。どうしてそうされているのでしょうか?
重泉 : 効率至上主義なんです。副業の仕事で「今、電話に出れば10分で話が済む」という状況があれば、電話に出て話してしまったほうが良いと思っています。例えば、電話に出なかった時のことを考えてください。
家に帰って、何の用件か思いだして、電話を掛けなおして「電話に出られなくて申し訳ありませんでした」と話して……と、30分ロスするのだったら、今、電話に出て、10分で用件を終わらせたほうが効率的じゃないですか。
無理に家で副業するのも効率が悪い。夜まで引っ張って、話がおかしくなって、リテイクが入り、訳がわからなくなって、挙句の果てに夜なべして、次の日が使い物にならないほうが弊社としてはロスなんです。「15分で副業の仕事が済むなら、今やってしまってください」ということですね。
もし、副業で手に負えない規模になってきたらステージハンドで仕事を受けるケースももちろんあります。そのときは自分自身のお客様として、担当してもらいます。
副業で会社のプリンターを使っても良いです。使おうとする度に「使っていいですか?」と聞いて、「いいよ」と答える時間ももったいないと思っています。
――副業で会社の備品も使えるのですね!驚きです。副業は把握されているのでしょうか?
重泉 : 詳細まで内容を把握しているわけではありませんが、だいたいは把握しています。みんなちゃんと自己申告してくれます。
デザイナーが絶対断れない「頼まれ仕事」
――お話を聞いていると、信頼関係のある職場と感じます。
重泉 : デザイナーというのはそもそも、副業をするものなんですよ。フリーランスや社員に関わらず、絶対に副業が発生します。絶対回避できない。例えば、所属しているサークルで「ちょっと名刺作ってくれよ」という話があって、自分だけがデザインできる立場だったら断りづらいですよね。
他にも親の友達がやっているお店などから「年賀状を作ってほしい」という依頼があったら、断れないじゃないですか。友達であれば断れるけど、親戚だったら断りづらいですよね。いわゆる絶対断れない「頼まれ仕事」というのは発生してしまうんです。
デザイナーとして、デザインというスキルを身に着けた以上、「頼まれ仕事」はやるしかないんです。会社の見えないところでやられて、キャパシティオーバーになって、挙句の果てには体調不良になってしまうというのが嫌なんです。だったら、「見えるところで副業してほしい」ということですね。
――確かに言われてみればそうですね。
デザイン・LINEスタンプ・ドローン。できることはなんでもやりますよ
――ステージハンドはどのような事業を行っていますか?
重泉 : デザインできるものは何でもやります。媒体として、多いのはWebです。その次にはポスターなどの印刷物が多いですね。あとはもうバラバラです。
イベント企画・運営に携わることもあります。多いのは「いかに来場者を増やすか」という仕事ですね。そこで私たちはWebにこだわらず、お客様によって最適なツールを提案しています。
――Webサイトを見てLINEスタンプ制作も気になりました。
重泉 : LINEスタンプは最近、依頼が多いですね。季節の変わり目にはLINEスタンプを作っています。依頼はたくさんありますが、予算と折り合いがつくのが季節に一度ぐらいです(笑)
紹介でも仕事がきますし、「札幌 LINEスタンプ 制作」をGoogleで検索すると、いつも高い順位(※取材時2位)にいますので、Webサイトから問い合わせが来ることもよくあります。
――他にはドローン事業が特に目を引きました。デザイン事務所から始まった会社がドローン事業をしているのは意外ですが、どういうきっかけで始まったのでしょうか?
重泉 : 2年前にドローン事業を始めました。きっかけとしては、ドローンで空撮をやってみたいけど、費用感がわからない。準備に何が必要かわからない。といった敷居の高さに困っている方が多かったことが理由です。
「やってみたい」という気持ちだけでドローンを買うには高いですし、許可なども必要ですので簡単にはできません。それであればもっと手軽にドローンを使った空撮を提供できればと思い、このドローン事業を始めました。もちろんですが、国土交通省の許可・承認も得ていますし、撮影の度に申請も行っています。
おそらく全国で1番安いドローンサービスでしょう
――他社と違う特徴はなんでしょうか?
重泉 : 一般的なドローンサービスは、リハーサルを行い、空撮して、撮った動画を編集するまでがワンセットで、安くても数十万円はかかります。ドローンはよく話題にもなりますので、興味を持たれる方は多いのですが、どのような結果が出るかわからない空撮に中小企業様が数十万を払うのは難しいかと思います。
ステージハンドのドローンは空撮だけの値段で提供しています。「ダメ元でもちょっとやってみたい」という試せるレベルまで価格を下げました。ですので、ステージハンドのドローンサービスは撮りっぱなしです。リハーサルはなく一発本番です。
(※DRONE PROJECT sapporoによると、1回あたり54,000円〜)
その代わり、バッテリーが切れるまで何カット、何時間撮影しても、一律料金で構いません。でも、料金からわかるとおり「ダメだったとしても我慢してね」というスタンスでサービスを提供しています。素材として使える、使えないは残念ながら、担保できません。
ただもちろん、撮りっぱなしではお客様が困ってしまいますので、別料金で追加作業も可能です。Webサイトに掲載したい場合はステージハンドで制作しますし、ポスターや映像編集が希望の場合は提携している他の会社と一緒に取り組みます。
撮影するだけでしたら、おそらく全国で1番安いでしょう。お手軽にごく安価にお試しでできる。そんな状況を作りたいと思っています。
――ちなみに1回の飛行はどれくらいの時間を撮影できるものでしょうか?
重泉 : 1本のバッテリーで撮影できるのは10分です。バッテリーが5本あるので、トータルで50分です。実際にはドローンを上げて撮影、下ろしてチェックの繰り返しなので、一回の撮影は2〜3時間ぐらいですね。
――事例について伺います。DRONEPROJECT sapporoに掲載している札幌国際大学のドローン映像は秋と冬の二本の動画が公開されていますが、秋と冬を出しているのは季節感を出す目的でしょうか?
空から見た札幌国際大学 冬編
空から見た札幌国際大学 秋編
重泉 : 当初より四季編の構想はありました。4篇ではなく最初から、秋・冬・初夏の3篇です。しかし一気に一年分を発注するのは戸惑われたようで、まずはお試しとして秋編単独の発注、そして手応えを感じてもらった結果、冬、初夏編とつながりました。
先方としても、半信半疑だったんだと思います。試しに秋編をまかせてみたら、想像以上の出来栄えだったので、残りを発注いただけたんだと思います。我々が望んだドローンの使い方をしてもらえました。試してみたいに答えるためのリーズナブルな価格設定です。
空から見た札幌国際大学 初夏編
――空手の練習をドローンで空撮したものもあるんですね!空手の様子を上から撮影するということはなかなかないですよね。
重泉 : そうですね。空撮を行った道場の方は、他の空手関係者から「こんな贅沢なことをして羨ましい!」と言われたそうです(笑)。
明倫館 KARATE 〜 ドローン空撮【HD】
空撮映像をワンコインで買えるようにしたい
――Webサイトで撮影素材の販売について記載がありました。撮影素材の販売も行われるんでしょうか?
重泉 : 素材撮りがある程度終わったので、販売に向けて準備中です。ドローンサービスのコンセプトと一緒で、お客様が気軽に購入できるような仕組みにしたいと考えています。ダイナミックな映像を手軽に購入できたらいいですよね。
例えば、結婚式のオープニングムービーのバックに空撮映像とか。その素材を、できればワンコインで買えるようにしたいと思っています。
――ワンコインで!?相当、安いですよね?
重泉 : 相当安いと思います。周りからは「バカなの?」と言われています(笑) まだできるかどうかわからないのですけどね。
――普通は数万円はするものですのですよね……。
重泉 : そうですね。数万円しますね。数千円も珍しいんじゃないかな。使い勝手が良いものをお手軽に、使っていただきたいですね。
最初の敷居を低く、必要最低限の費用であるべき
――先ほども聞いていて思ったのですが、「お手軽に・敷居が低く」という事業のテーマがあるのでしょうか?
重泉 : そうですね。たとえば数百万円かかったWebサイトでどこまで費用対効果が上がるのか、という話ですね。数百万円かけたWebサイトで、どれだけ人件費が抑えられて、どれだけ残業が減ったか、と考えると、数百万円を回収するのに何年かかるかわかりません。
作る側としては数百万円もらわないと作れない。買う側としてもないと困るから買うしかない。どっちも得しない。だったら、両方折り合いつくところまで、なんとか突き詰めたいということです。Webサイトに限りませんが、いらないものがついているから高くなってしまいます。
例えば、映像素材を15分3万円で買っても使うのが15秒だとしたら、15秒で5000円で十分です。無駄なものは売りたくない。得するなら売り手も買い手も得をすれば良いという考えです。
――なるほど。
重泉 : それが地域貢献になると思っています。無駄な費用を使わなかったお客様の会社は、その分別件で設備投資をするでしょう。弊社も必要最低限の仕事を行って、利益を上げられれば、無駄な残業しなくて済みます。
無駄な残業をしないということは弊社の社員が夜にどこかに遊びに行き、お金を使う。そうして、世の中が潤えば弊社にポスター制作の依頼が来ます(笑)
わざわざ無駄なリスクを背負うような売り物をしたくないんです。気に入ったものにはどんどん投資するべきだし、ダメだと思ったらすぐに離脱するべきだと考えています。それを行うには最初の敷居を低く、必要最低限の費用であるべきなんですよ。
失礼に聞こえる方もいるかもしれませんが、私たちはお客様と対等でいたいと思っています。外注の方も含めて、全ての関わっている方々とですね。
――今後のステージハンドとしての展望について教えてください。
重泉 : 日本のデザインは東京が中心です。追いつけ追い越せで、東京並みの仕事ができるようになりたいですね。東京の仕事をもっと行い、札幌で雇用を増やしたいですね。
――重泉さん、ありがとうございました!
ライター感想
インタビューを行って感じたのは真にビジネスとして関わる相手のことを考えているということ。ビジネスの世界ではよく「win-win」や「三方良し」という言葉を聞きますが、理想論として唱えている会社が多く、本当に事業として実践できているところは少ないと感じます。
重泉さんは、お客様、外注、社員、そして地域、業界など全ての方が得できる仕組みを真に考え、実践しているのだと私は感じました。本インタビュー収録後、デザイン業界を変えるお話を聞き、高揚感でいっぱいになりました。業界変革は少しずつ行われていくそうで、これからのステージハンドの動きに目が離せません。
株式会社ステージハンド
北海道札幌市東区北6条東2丁目2-10
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