データサイエンスでヒトはもっと楽しく生きていく!?– NoMaps2019ビジネスカンファレンスレポート

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データサイエンスでヒトはもっと楽しく生きていく!?– NoMaps2019ビジネスカンファレンスレポート

20191016日から20日までの5日間にわたり札幌市内で開催されたクリエイティブコンベンション、NoMaps2019

東京の株式会社データフォーシーズによる「北海道におけるデータサイエンスのミライ」を取材してきました。

取材・構成 : 木村綾、撮影:赤沼俊幸 取材日 : 2019年10月16日(水)

改めて、データサイエンスって何?

そもそも、サイエンス・テクノロジー・エンジニアリングの機能と関係性を図示すると、下記の図のようになります。テクノロジーやエンジニアリングは人が何かを作り出す行為であることに対し、サイエンスは、自然を理解することです。

科学/テクノロジー/エンジニアリングの関係
北海道大学 イノベーション・マネジメント論講座より

データサイエンスとは、存在するデータ用いて、有益な知見を引き出そうとするアプローチのことです。

日本はこれまで、テクノロジーやエンジニアリング領域を強みとしてきましたが、これからはデータの整備やアーキテクチャ、分析がなければ、イノベーティブな新ビジネスを創造することができません。データ・サイエンスを担う人材は、地方都市だけでなく、グローバルでニーズの高い人材といえます。

データフォーシーズはどんな会社?

今回登壇した、和田陽一郎さんは東京の株式会社データフォーシーズの執行役員です。データフォーシーズのメイン事業は、データ分析を用いてビジネス上の知見や戦略を企業に提供することです。今日のように、データサイエンスが注目を集める前から、10年以上にわたりデータサイエンス・コンサルティングの知見をため、データサイエンティスト人材の育成ノウハウを形成してきました。

メインスピーカーの和田さんご自身もデータサイエンティストであり、同社のデータ・サイエンティスト養成事業の代表も務めています。昨年は札幌にもデータ・サイエンス・アカデミーを開講し、人材を育成しています。北海道大学の客員教授にも任命され、学生を指導するほか、ローカルの産学連携プロジェクトも企画推進中とのこと。ここからは、当日の基調講演内容を抜粋して参ります。

「データサイエンスの未来」

和田さん:データサイエンスのビジネスにおける効能の1つは、見積書の作成など、事務作業での人間の判断を学習させ、自動化・効率化できること。この話をすると「AIに仕事を取られるということなのか?」と心配する方もいますが、空いた人手は、より付加価値の高い仕事のために使うと考えると良いでしょう。データサイエンスの実用化などは、内閣府が提唱しているSociety5.0の実現につながります。

データサイエンスの効能について説明中

参考までに、Society5.0とは、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)を目指すビジョンです。

ビックデータやデータサイエンスが実用化されれば、人の働き方が変わり、ビジネスや社会が変わります。人間がより楽しく働き、生きていく未来がイメージできますよね?

データサイエンスにおいてホットな場所、札幌・福岡

和田さん:当社は東京のほか、大阪、名古屋、北海道、福岡など地方中核都市でもデータサイエンティストを養成する事業を行っています。人手不足が進む中、自社の社員となる人材を育成する面もあります。ただ、それだけが目的ではありません。地方でデータサイエンティストを育てることで、地元の企業が主体的にデータを活用できるようになり、ビジネスを拡大させ、ひいては地方経済の力になるからです。

福岡ではすでに、複数の企業と当社でデータサイエンス・プロジェクトを推進しています。また、北海道大学や九州大学では、客員教授・准教授を拝命しており、大学生を対象とした研究だけでなく実務もわかるデータサイエンティストを育成しています。産学連携ビジネス・プロジェクトも企画・推進していく予定です。

北海道は、首都圏、名阪神についで、人口の多いエリアです。この場所でデータをビジネスに利活用する好事例を作ることができれば、全国の他の地域のモデルになるでしょう。まさに北海道は、データサイエンスの重点エリア、日本を牽引する責任がある場所だと考えています。

「他利」的な札幌、地域性のモンダイ

和田さん:昨年から、札幌でデータサイエンティスト育成事業を始め、地元の企業や地方自治体と意見交換をする機会が増えました。その中で気がついたことがあります。例えば東京で、企業がデータサイエンスを導入する一番の目的は、自社の利益につながるからです。多くの企業がどんどんデータサイエンスを導入し、自動化・効率化を進め、コスト削減や売上利益を拡大させています。導入した会社も恩恵を受け、会社が拠点をおく東京も地域として発展している事は、いうまでもありません。

しかし、北海道では、「データサイエンスを普及させよう」と企業や行政が互いに掛け声をかけるものの、どの企業・団体も、自企業ではなく他を優先してしまうあまり推進力が極めて弱い。どの企業も最初の一歩を踏み出すことができない。実際に、データサイエンスを導入した事例も少ないです。

どんなにデータサイエンスが有効だと分かっていても、主体的に取り組む企業・団体がなければ、自社のビジネス・売上利益、地域の経済活性化につなげる事はできません。

地域性について説明し自社のために主体的にデータサイエンスを導入すべき、と説明する図

データサイエンスをテーマにしたエコシステム作り

和田さん:企業が主体的にデータサイエンスを導入できないのは、地域性のほか、規模も関係があるでしょう。規模の小さい企業にとって、新たな取り組みのコストはハードルになり得ます。地元の企業が1社で、データサイエンスを導入しようとすると、データサイエンティストの雇用やコンサルティングの依頼だけで、数百万円〜数千万円のコストを負担しなければなりません。そこで、地方中核都市におけるデータサイエンス導入の初期コストを抑えるべく、Data Analytics Competency Center(DACC)というモデルを構想しています。

DACC構想イメージ図

データサイエンティストとして育成するのは、地元の企業や大学から受け入れた人材です。彼らは育成プログラムの一環として、地元の企業のデータサイエンス導入プロジェクトを担います。地元の企業は、もともと負担していた人件費の範囲内でデータサイエンスを導入できます。人材はデータサイエンティストとして、実際のプロジェクトの経験を積み、さらに人材価値を高めます。DACCには、データサイエンスを導入の知見が蓄積されます。

このような枠組みで、北海道に主体的なデータサイエンス導入事例を増やしていきたいと考えています。北海道をSociety5.0の先駆けの場所にしましょう!

パネルディスカッション

北海道IT推進協議会・理事を勤める林さんと、フュージョン株式会社の藤本さんが登壇しました。主な論点は、札幌の企業におけるデータ利活用のケース、人材育成・採用、データ取得の課題の3点で、特に人材の採用について話が盛り上がりました。

左:北海道IT推進協議会・理事 林さん
右:フュージョン株式会社 藤本さん

林さん:クリプトン・フューチャー・メディア株式会社で採用も担当している。データサイエンティストのような特殊人材の採用はもちろん、エンジニア採用には苦戦している。北海道にも、良い会社があることを周知していきたい。データサイエンスの導入や、ケースの増加は、訴求力になるので、推進していきたい。

藤本さん:当社では、営業、分析、マーケティング実務など、役割分担がありそれぞれに人を割り当てている。マーケティング・ツールを動かす実務を行う人材も重要だが、今後は、データサイエンスを理解しビジネスプランニングができる人材を増やしていきたいと考えている。それができないと、顧客に価値を提供できない。札幌におけるデータサイエンティスト育成事業や、DACC構想には、主体的に協力していきたい。

取材を終えて

メインスピーチの中で、北海道の地域性、企業の特徴が手厳しく指摘されたことがとても印象的でした。指摘された通り、北海道は、個人も組織も「自利<他利」の傾向があると思います。

自と他は二者択一ではありません。データサイエンスの導入など、新しい取り組みにおいては、まずは自分たちのメリットが出るように一歩踏み出し、DACCとして構想されたように全体にメリットが出るように取り組むこともできるのです。

北海道は、社会課題の先進地とも言われ、高齢化、過疎化、公共交通機関弱体化など、様々な変化が進んでいます。和田さんの「北海道は日本を牽引する責任がある」というメッセージは、昨年から北海道で事業を行う中で感じた強い危機感の現れだと感じました。

私自身も無意識のうちに、世界のどこかで、誰かが、北海道にも使えようなユースケースを作ってくれるのを受け身で待っていたところがあります。変化のスピードは早く待っていても間に合わない、自分たちの故郷を住み良い社会として維持するには、主体的にビジネスを創造し、進化させる必要があると感じました。

今回の講演からは、データサイエンス導入の効用、人材の育成と地域への定着の仕組み案など、具体的な話を伺うことができました。データサイエンスのビジネス活用を切り口に、人間らしい働き方、Society5.0につながるエコシステムを北海道で形成できるなんて、とてもワクワクします。

今後も、北海道や札幌のデータサイエンスのビジネス活用、人材育成に注目していきたいと思います。

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私が書きました!

北海道出身、札幌育ち。 札幌と東京で二拠点生活をしています。 自分らしくびのびと働く人が増えたら、札幌がもっとステキな街になるなと思い、キタゴエに参画しました。取材活動で、街や仕事に愛着を持つ人とたくさん出会い、多様な働き方を模索していきたいです。

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