ITで宿泊施設不足を解消!増殖する「無人ホテル」とは?

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ITで宿泊施設不足を解消!増殖する「無人ホテル」とは?

2019年に入って、札幌市内に「無人ホテル」が続々と誕生しているのをご存じでしょうか。ITでチェックイン・アウトの手続きや入退室セキュリティを遠隔管理し、文字通り常駐スタッフなしで運営するのが特徴です。仕掛けているのは、不動産関連事業を幅広く手がける株式会社MASSIVE SAPPORO(マッシブサッポロ)。今回は開業目前の無人ホテル「UCHI Living stay odori」(ウチリビングステイ大通)にお邪魔しました。

取材・撮影:吉村慎司 取材日:2019年1月21日

遠隔管理でチェックイン

 目の前に札幌市電の西8丁目駅。UCHI Living stay odori は、大通の商業地区からすぐのオフィスビル「SITYビル」(南1条西8丁目6)の2階にあります。1月26日に最初の宿泊客を受け入れており、キタゴエはその5日前に伺いました。

札幌市中央区南1条西8丁目6-2

 

施設が入るSITYビル(札幌市中央区)

宿泊施設の看板はありませんが、ビル名が大きく出ていますから建物を間違えることはないでしょう。事前に宿泊予約サイトで申し込んでもらうのが前提で、飛び込み客は狙っていませんから、そもそも看板はいらないかもしれませんね。

さっそくエレベーターで2階に上がります。

UCHI Living stay odoriの入口

エレベーターを降りてすぐ右の黒いドアに、施設名を発見。「UCHI」というのはMASSIVE SAPPOROが管理運営する無人ホテルのブランド名で、「旅人にとっての家」という意味と、「Unmanned(無人)Check In」の頭文字をかけたそうです。

実はここからIT管理が始まります。ドアノブに手をかけると意外なものが。

テンキー付きのドアノブ

テンキー付きドアノブとは、あまり見かけないアイテムです。ネットで予約したときにキー番号を知らされる仕組みになっていて、番号を知らない人はドアも開けられません。

 中に入ってスリッパに履き替えます。でも、まだそこは客室ではありません。小さなエントランススペースになっていて、奧にタブレット端末が置いてあります。これこそ、無人のフロントデスクです。

タブレットが置かれた「無人フロントデスク」

まずは予約時に通知された番号を入力します。

タブレットに宿泊予約名が表示される

すると宿泊者名など登録情報が出てくるので、確認ボタンを押していく。

この日はメディア向けのデモ運用でしたが、実際には別の場所にいるオペレーターとテレビ電話でつながり、顔を見ながらの本人確認があります。それから、外国人客の場合は端末のカメラにパスポートを向けるステップもあるそうです。

客室に入るためのキー番号が表示される

本人確認が無事に終わるとチェックイン完了となり、客室に入るためのキー番号がその場で表示されます。物理的な鍵は存在しません。キー番号はメモするか、スマホで撮影するなどして忘れないようにしましょう。宿泊料はネット予約時にクレジットカードなどで支払い手続きをするため、ここではお金のやりとりもありません。

なお今回の写真は画面が英語表記になっていますが、日本語はもちろん中国語(繁体字・簡体字)、ハングルにも対応しています。MASSIVE SAPPOROの運営する施設では、オペレーターが日本語と英語で対応します。

知ったばかりの番号を入れて解錠

客室につながるドアに、先ほど端末に表示された数字を入れると、カチャッと音がして開きます。このとき、MASSIVE SAPPOROのオペレーターが入室を確認します。

ターゲットは海外グループ客

客室はこんな様子です。館内にスタッフはいません。本当に宿泊客だけとなります。

客室内の共同スペース。ソファセットが並ぶ

共同スペースには大画面テレビや、南国テイストなソファセットなどが配置されています。テーブルにはWi-Fiルーターも置いてありました。

テレビ横のドアを開けると、ベッドスペースが奥に伸びています。

二段ベッド式で14人分の宿泊スペース

14人分です。男女別トイレもここにあります。これなら合宿などもできそうですね。

ベッドの様子

ベッドはこんな様子です。広いカプセルホテルのようなイメージです。それぞれの枕元に蛍光灯があります。

共同スペースに電子レンジや冷蔵庫も

冷蔵庫や電子レンジも使えます。

炊事用シンクと洗面台

炊事用シンクと洗面台。

食器もあります

食器類も揃っています。

シャワー室です

シャワーボックスは1つでした。

分別式のゴミ箱

ゴミは不燃・可燃で分別します。

4カ国語で注意書き

4カ国語で、騒がないように注意書きがありました。

音に関して面白いのがこれ。共同スペースのテレビの裏に、白い小さな機具が見えます。

テレビの裏にセンサーが

これは騒音センサーで、宿泊客が騒音を出すとオペレーターに通知が行きます。60dB(デシベル)、80dBの2段階で感知。センサーが作動するとスタッフが宿泊客に直接電話して、静かにするようお願いすることになります。

チェックインは15時以降、チェックアウトは10時までです。チェックアウトもフロント端末で数回ボタンを押すだけです。

宿泊料は1人1泊2,000~6,000円(税抜き、時期により変動)。予約はAirbnb、Asia Yo、Expediaなどの旅行サイトから可能です。MASSIVE SAPPOROの広報担当、清水聖子さんによればターゲットは外国からのグループ客で、特にアジアからの家族客などの利用を見込んでいるとのことです。

規制緩和でビジネスチャンス

ところで、どうしてこのような無人施設ができたのでしょうか。きっかけは2018年6月の、改正旅館業法の施行です。この改正は直接的には、訪日外国人が増えて宿泊施設が足りなくなってきたことに応じた規制緩和です。

それまで宿泊施設は、フロントデスクを設けてスタッフと客が直接チェックインのやりとりとする必要がありました。でもUCHI Living stayのように二段ベッドなどで部屋を多人数で使うタイプの施設については、「ITで客の本人確認やセキュリティ管理ができるならフロントデスクがなくてもOK」となったのです。

これによって、施設にスタッフが常駐する必要がなくなりました。もちろん離れた場所から電話・ネットで客対応をする人、何かあったとき駆けつける人は確保しなければなりません。それでも施設運営側から見ると、これまでより柔軟な運営ができ、コストダウンにつなげられそうです。

清水聖子さん(左)と嶋崎孝平さん(右)

取材に応じてくれた清水聖子さん(左)と嶋崎孝平さん(右)

また同じ法改正で、別の規制緩和も進みました。かつて宿泊施設には部屋数の下限があり、ホテルなら10室以上、旅館なら5室以上ないと営業できませんでしたが、この規制がなくなりました。さらに、寝具の種類や採光・照明の要件といった細かな項目も撤廃されました。

MASSIVE SAPPOROはここにビジネスチャンスを見いだしました。スマートキーなどのITツールは楽天グループが提供する「あんしんステイIoT」を採用。そして、宿泊施設に活用できそうな道内不動産物件のオーナーにビジネスを提案し始めました。

ちなみに今回のUCHI Living stay odoriの事業主体は、ビルのオーナーであるSITYビル株式会社です。MASSIVE SAPPOROは施設の設計や工事管理をして、SITYから施設運営の業務委託を受けています。

規制緩和で施設設計・運営の自由度が高まったことで、今後宿泊ビジネスに興味を持つ不動産オーナーは増えそうです。実際、MASSIVE SAPPOROでは無人ホテルに関して現在数十件の商談が進んでいるのだとか。

近い将来、小型ホテルは無人が当たり前、という世の中が来るのかもしれませんね。


※「無人ホテル」は通称で、旅館業法上は「簡易宿所」にあたります。

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