2017年7月31日(月)、厚別区新札幌にある札幌市青少年科学館(以下、青少年科学館)で開催されたKidsVentureプログラミング教室に行ってきました。
札幌市青少年科学館は地下鉄東西線新さっぽろ駅1番出口正面、またはJR千歳線新札幌駅からサンピアザ経由で徒歩5分の場所にあります。
インタビュアー・構成・撮影 : 赤沼俊幸 取材日 : 2017年7月31日
KidsVentureプログラミング教室とは?
通常のKidsVentureはオフィスの会議室などで開催(※下記記事を参考)していますが、この日はKidsVentureプログラミング教室は夏休み向けの特別教室。
※参考記事 楽しみながらプログラムを学ぶ!注目の子供向けプログラミングスクールイベント、Kids Ventureに行ってきた!
青少年科学館での1階会議室で開催。1階会議室は青少年科学館のエントランスの奥にあります。早速会場に入ってみましょう!
会場に入ると、学生服の方々がいます。彼らは琴似工業高校情報技術科の高校生です。
この日はKidsVentureのスタッフ以外にも琴似工業高校情報技術科の高校2年生と3年生の生徒、12名がサポート。この日の約2週間後、8月11日に琴似工業高校でもKidsVentureが開催が予定され、その予習も兼ねてのサポートです。
KidsVentureでは、どのような道具を使うのでしょうか。机を見てみます。
KidsVentureで使用するのはIchigoJamです。IchigoJamとは「初心者向けプログラミング言語BASICを現代風に復活させたこども用プログラミング専用パソコンです」(Kids Ventureサイトより引用)。
写真右上の袋の中には、IchigoJamの基板が入っています。
KidsVentureでは基板のはんだづけから行います。はんだづけをするために、はんだごてを利用します。はんだづけのテキストも用意。
受付開始時間となると、続々と参加者と参加者の保護者が来場します。
今回、定員20名のところ、93名の応募があり、抽選で選ばれた小中学生、18名が参加(2名は欠席)。今回参加した18名は小学3年生から中学2年生までの男子16名、女子2名です。
ホワイトボードには本日のスケジュールが記載。休憩をはさみ、5時間の長丁場です。参加者は休憩以外、制作に没頭しますが、保護者の方は出入り自由。青少年科学館の近くにはショッピングなどができる場所もあります。出かける保護者の方もいれば、席にいてじっと子供の様子を見ている方などさまざまでした。
参加者が集まり、12時、KidsVentureプログラミング教室がいよいよ開始です。
札幌市青少年科学館の埀石さんより、KidsVentureプログラミング教室についての注意事項などの説明があり、KidsVentureの副委員長であるビットスター取締役の若狹さんから今日一日の流れの説明があります。
「今日はゲームのプログラミングを行います。この小さなコンピュータと、Basicというプログラミング言語を使い、ゲームを作っていきます」と話した後に、掲げたのはIchigoJamの基板です。
「実はこのコンピュータ。いろんなものと繋げることができます。温度や湿度のセンサー、ロボットにも繋げられます。簡単にプログラミングが書けます。今日、みんなはゲームを作ることができます」
簡単にプログラミングが書ける、ゲームが作れると聞き、子供たちの期待が高まります。
「お父さん、お母さんにお願いがあります。今日、たぶん失敗することがいろいろ出てくると思います。ただ、今日は学校の授業ではありません。何か競うものでもないので、できるだけ子供たちに失敗しながら作ってほしいと思っています。暖かく見守ってあげてください」
と最後に保護者の方へのお願いを話し、続いて、今日の先生であるビットスターの戎屋さんから、はんだづけの説明があります。
戎屋先生より、今回使う道具の説明と、はんだごての説明があります。はんだづけの方法は動画でも詳しく説明された後、実際のはんだづけがスタートです。
すでに、はんだづけの経験がある参加者は、説明を聞いてすぐに取り掛かり、未経験者はスタッフのサポートがあり、はんだづけが行われました。
基板へのはんだづけが終わった参加者は、はんだがしっかり基板についているかのチェックを行います。チェックする机へ並びます。
基板に映像端子、USB端子などを接続。はんだづけが上手くいっていると、モニタの画面にBASICの画面が映し出されます。
はんだづけに成功すると、参加者にキーボード、モニターが渡されます。そこからプログラミングに入っていきます。
最初のプログラミングは基板についているLEDライトを点灯させたり、消灯させるプログラム。LEDライトをチカチカさせることから、通称、Lチカとも呼ばれています。
LED1 と書くと、LEDが光ります。LED0 と書くと、LEDが消えます。
次に行うのはコンピュータに待ってもらうことです。BASICではWAITと記述します。WAIT 60と記述すると、だいたい1秒待ちます。
LED1(点ける)と、WAIT60、LED0(消す)を組み合わせて、点滅ができます。
GOTO(指定した列に戻る)を使ったプログラミングも説明。GOTOを使うことによって、点滅を繰り返すことができます。
そして参加者にはかわくだりゲームのプログラムを紹介。まずはこのとおりに打ち込んで、手元のIchigoJamでかわくだりゲームを動かすことを目指します。
かわくだりゲームを手元のIchigoJamで動かすことができた後は、ゲームをカスタマイズする方法を紹介。プログラムを変更することにより、ゲームのカスタマイズが可能です。カスタマイズすることによって、どのプログラムがどの命令になっているかを学びます。
まとめと発表
IchigoJamによるプログラミングを一通り終えると、最後は参加者に、
・楽しかったこと
・難しかったこと
・工夫したかったこと
・次やりたいこと
を画用紙に書いてもらい、発表。
発表後、参加者には修了証書が手渡されました。
笑顔、満足した顔、真剣な顔・・・子供たちの多くの顔が入り交じるイベントでした。参加者の皆さん、お疲れ様でした!
札幌市青少年科学館インタビュー
札幌市青少年科学館の学芸課展示係長の埀石寛史(たるいしのりふみ)さんにお話をお伺いしました。
ーー実際にKidsVenture見て、どういう感想を持たれましたか?
埀石 : とても面白いイベントのプログラムだなと思いました。KidsVentureはプログラミングだけではなく、電子工作の時間もあります。子供たちにとっては、よりリアルに、自分が作ったプログラムが自分の電子工作によって動くことを体験することができるので、一石二鳥の教室だと思いました。
ーー青少年科学館では他にもプログラミング教室を開催していると思うのですが、KidsVentureは他のプログラミング教室とはどのような違いがありますか?
埀石 : やはり、プログラミングと電子工作を2つ同時にやっているというのが珍しいと思っています。片方だけというのはあります。プログラミングだけの教室や、電子工作だけの教室です。電子工作に関してはロボットを作ったり、手間暇かかるようなものも運営しているのですが、KidsVentureは両者のいいとこ取りですね。
例えば、電子工作とプログラミングで、車みたいなものを動かす場合、車が動かなかった時、プログラムが原因なのか、マシンが原因なのか、または両方が原因なのか、原因究明が大変です。
今回は実際、プログラミングをする前にIchigoJamのはんだづけの作業があります。その次にプログラミングををするという二段階に設定されています。ですので、ゲームが動かない場合はプログラムに問題がある、ということがすぐわかって、振り返られるのがいいなと思って見ていました。
ーーKidsVentureが開催された経緯についてお話を聞かせてください。
埀石 : 札幌市にIT、ものづくりを担当している部署がありまして、担当者から「KidsVentureというプログラムがありますが、いかがでしょうか」と薦めていただいたのがきっかけです。
プログラミング教育が今後、学校教育に入っていきます。当館としてもいろいろなパターンのものをいろいろな形で子供たちに提供したいと思っていました。そのときに薦めていただいたので、いいタイミングでお話をいただけたと思っています。
ーー今後の予定は決まっていますか?
埀石 : 今回、定員20名を大幅に上回るお申込みをいただきました。それだけ子供たちに興味があるということがわかりましたので、当館としてもそのようなニーズに答えていきたい。今後、KidsVentureさんとまた話しまして、いろいろな形でまたできればいいかと思います。
今回のような初心者向けのものがいいのか、IchigoJamを持っているような方向けがいいのか、はたまた違うものがいいのか、いろいろ意見交換できればいいと思っています。
埀石さん、ありがとうございました!
取材した感想
KidsVentureではイベントに使用したIchigoJamや教本を販売しています。目に留まったのは、イベント終了後、これらを追加購入する方の多さです。中には夢中に取り組む子供の姿に感動したようで、スタッフへ熱心にIchigoJamについて聞く父母の方もいました。
2020年には小学校でプログラミング教育が必修化されます。それに伴って賑わいを見せているのはプログラミング教室のイベントです。
筆者は子供の時にプログラミングに触れる機会がありませんでした。もし、このようなプログラミング教室のイベントがあり、プログラミングに触れることができれば、プログラムの面白さに気づき、プログラマを目指していたかもしれません。(もちろん、触れたことにより、才能のなさに気づくこともあるかもしれませんが…)
今回参加した子供の中の一部はプログラミングの面白さを感じ、将来の夢にプログラマの選択肢を加えたかもしれません。このような機会が多く提供されることにより、子供が新たな才能や興味に気づくきっかけになります。子供には夢や目標、楽しみが増え、日本全体には将来的にプログラマが増えるでしょう。それらを生み出すことのできる素晴らしい取り組みだと改めて感じました。
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