こんにちは、キタゴエ・ライターの木村綾です。前回に引き続き、札幌デジタルイノベーション2019のレポートです。今回は「インバウンド/観光」テーマのセミナーについてお届けします。
札幌デジタルイノベーション2019についてはこちらの記事も合わせてご覧ください。
取材・撮影・構成:木村綾 取材日: 2019年7月19日(金)
伸びしろだらけ、地方の観光産業
私キムラは、2018年11月〜2019年3月の間、信州大学の100年企業創出プログラムに参加し、長野県の山奥の旅館で経営支援をしていました。宿泊・飲食サービス業に分類される旅館やホテルは、離職率30%強と、宿泊・飲食サービス業の中で最も離職率が高くなっています。生産性・収益性の低さ、賃金の安さ、長時間労働、キャリア形成の難しさなどが理由で、私が支援していた旅館でも、若い社員の離職が続いていました。
働き手にとっては不人気業界である一方、北海道・札幌含め、観光産業は成長が期待されています。ただ、当たり前ですが、働き手の人数や時間は有限。外国人労働者を受け入れたとしても、特に宿泊業は、働き方、働かせ方含め、従来のビジネスモデルの見直しは必要に迫られています。
札幌デジタルイノベーション2019では、「インバウンド/観光」もテーマの1つとして掲げており、7月19日14時からAirbnb Japan 執行役員の長田英知さんの講演「Airbnbの取り組みと今後の展望」が行われました。
Airbnbが宿泊のほかに売っているもの
もはや説明不要、民泊の代名詞的な存在となったAirbnbは、宿泊施設・部屋を貸し出すウェブサイトです。最近では、宿泊場所だけでなく、料理講座や観光ツアーなど、体験を掲載し販売することもできます。
民泊新法、住宅宿泊事業法改正の影響で、札幌でも民泊から撤退する方が多かったそうですが、Airbnbの各種マーケティングにより現在部屋数は回復しつつあります。
各地の特別な体験・宿泊を企画
セミナーの中で特に興味深かったのは、Airbnbが各地で進めている企画プロジェクトの話です。Airbnbの企画チームが世界中の様々な特別な人と協力し、そこでしか経験できない宿泊・体験を企画しているのだそう。
すでに実施された代表的な企画としては、2019年4月30日「ルーブル美術館で過ごす夜」の紹介がありました。抽選で当たった1組2名が、ルーブル美術館の敷地内に設置されたミニ・ピラミッドに宿泊し、美術史家による館内ツアーや、ミロのビーナスのそばでディナーを楽しむ内容は世界中で話題になりましたね。
Care to dine with Mona Lisa? https://t.co/SLmucgZE4q #Louvre #Airbnb pic.twitter.com/gnMiwodH4z
— Vogue.fr (@VogueParis) April 4, 2019
これは、1日だけの広報イベント的なものですが、Airbnb企画チームが日本各地のDMOと連携し、継続的な観光ビジネスを作るプロジェクトも行なっているとのこと。なお、DMOとはDestination Management Organizationの略、地域にある観光資源に精通し、地域と協同して観光地域作りを行う法人のことです。
日本での1つ目の企画は、現在、奈良県の吉野町に設置されている「吉野杉の家」です。「吉野杉の家」は、建築家:長谷川豪さんとのコラボで設計・建築した作品で、東京の展覧会後、吉野町に移築されました。移築後は、地元コミュニティが運営し、コミュニティ・スペース兼民泊施設して、知名度を生かしながら吉野町での継続したビジネスとなっています。
「吉野杉」のように、素材にブランド力があっても、最初から吉野町のローカルのコミュニティ・スペース施設を建設し運営を始めてしまうと、集客、持続はとても難しかったと思います。Airbnbが先に東京で話題を作る、アートとしての建物の価値を高めてから、それからローカルに移設し運営するという段取り・役割分担で、持続的なビジネスにしようという試みです。
〈Airbnb〉初となる、地域の人と触れ合うコミュニティハウス〈吉野杉の家〉。設計は長谷川豪。宿泊用スペースは、特徴的な三角屋根を眺めながらゆったりとした時間を過ごす「朝日の間」と「夕陽の間」の2室が揃う。
— Casa BRUTUS (@CasaBRUTUS) March 18, 2017
➡️ https://t.co/1eP4nbGg9k #奈良県 pic.twitter.com/Vq5GVpRWLh
他には、徳島県の阿波池田でJR四国と提携し、元寿司屋だった空き店舗を改装し宿泊施設にしたプロジェクトや、島根県奥出雲町で地元DMOと提携し農村漁村泊企画を進めています。
実は札幌でも実践済み! 覚えてますか?巨大かまくら
過去、札幌では2015年の雪まつりで、8丁目会場に巨大かまくらを作り宿泊を受け付け、大盛況だったそうです。分類するとこちらも、ルーブル美術館同様、広報的な単発イベントですが、札幌でもAirbnbと提携し継続的なビジネスを企画しているDMOなどがあるかもしれません。もし、取材可能な方がいらっしゃいましたら、キタゴエまでご一報いただきたいです。お願いいたします。
【雪まつりレポート】ドーム型の寝室。さて、ここはどこのお部屋でしょう?実は、さっぽろ雪まつり「巨大かまくら」の中の部屋なんです!外からの写真は雪に覆われてとても寒そうだけど、中は意外とあったかいかも…!? pic.twitter.com/a5tSlJGanC
— Airbnb Japan (@Airbnb_jp) February 4, 2015
取材を終えて
このセミナーでは、Airbnbがこれまでの観光や宿泊、不動産事業の枠組みを外し、新しい価値・ビジネスを創造していることがわかりました。その取り組みは、私たちの北海道・札幌にも可能性があることを示唆し、新しい観光ビジネスの萌芽を感じました。地方の観光産業でも、IT活用し世界を顧客にすることで、働きがいのある仕事をたくさん生み出すことができるでしょう。今後もAirbnbのほか、北海道の「ICT」「観光」に着目してまいります。
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