道東支部のこちゆうです。皆さんは「ITコーディネータ」という資格をご存知ですか。
経済産業省が推進するIT関連資格ですが、実際にどんなことができるのか、また資格保有者がどのように活躍しているのか、よくわからない方が多いのも実情です。
2018年10月24日に行われた「北海道IT経営カンファレンス2018 in くしろ」は、そんなITコーディネータがどんな活動をされているのかについて、広く知っていただくための講演です。
また釧路IoT推進ラボがキーワードとしている「観光」と「ビッグデータ」について、観光地でのIT活用事例などについてもお話がありましたので、合わせてご紹介します。
取材・撮影:こちゆう 取材日 : 2018年10月24日
IT×観光に高い関心!
今回の会場は釧路プリンスホテル。当日はあいにくの雨で外観は撮影できませんでしたが、ウェディングやイベントにも利用される大きなホテルです。
釧路プリンスホテル
〒085-8581 北海道釧路市幸町7-1
入場手続きをしていると、今回の講演者のひとりである「バスガイドもできるボールペン画家」原田 香苗氏に遭遇!
イベントサインの前で一枚撮影させていただきました。
原田氏は20年以上におよぶバスガイド経験の中で感じた観光とITの親和性や重要性について講談されますが、その内容は記事の後半でご紹介します。
ITコーディネータとは?その役割と事例紹介
まず登壇されたのは、特定非営利活動法人 ITコーディネータ協会で会長を務める澁谷 裕以(ひろゆき)氏。「ITを経営の力とするということ〜そのなかでのITコーディネータの役割について〜」というタイトルで、ITコーディネータが企業にどう役立てるかなどについて、事例を交えて講演されました。
ITコーディネータとして長く活動されている澁谷氏ですが、その中でいつも痛感することがあるそうです。それは「ITを経営の力にすることの難しさ」だといいます。
近年、中小企業と大企業との生産性格差は拡大の一途をたどっています。その対策としてITの力が必要なことは、実は経営者たちも分かっているそうです。
それでもシステム開発や導入を決断できないのは、かつて味わった失敗が尾を引いているからだと語ります。
主な失敗の理由は、開発する会社と発注した会社のコミュニケーションのミスマッチや、なんとなく流されるがままシステムを導入してしまったこと。実際、日経コンピュータの調査によると、システム開発に失敗したと答えた企業は2003年で約7割、2008年でも6割強にのぼります。こうした負の記憶が、中小企業のシステム開発や導入を遅らせているのだそう。
その本質は「それぞれの企業の状況や課題に応じたシステムを提案、導入できなかったことにある」といえます。しかし、自社の強みだけでなく、課題について客観的に把握することは、なかなか難しいものですよね。
こうした課題を解決するために生まれたのがITコーディネータです。ITコーディネータは経営者と対話を繰り返し、会社の経営課題に合ったシステムの開発または導入を行えるよう支援する役割を担います。まさにITの専門家です。
具体的には経営者との対話によって、会社が大切にしてきたことや強み、お客様に商品やサービスを届けるまでのプロセスや課題などを見える化します。さらにこれらを整理することで、経営者自身の言葉に置き換え、今後どうすべきかを一緒に考えていくというものです。
現在はITコーディネータがこの役割を担っていますが、今後は「ITを経営の力とする入門講座」を開催し、経営者に広く認識してもらうことにも挑戦されるとのこと。
現在ITに苦手意識を持っている企業だけでなく、自社の強みや課題が見える化できていない企業にとっても、ITコーディネータは強い味方になってくれそうです。
訪日外国人に即座に対応できる「チャットボット」の力
続いて株式会社ビースポークの長野 資正氏が登壇され、「変わる訪日外国人とのコミュニケーション〜チャットボットでガイドブックを超える観光体験を実現〜」をテーマにお話されました。
実は今回、初めて阿寒に泊まったという長野氏。講演ではその時の経験や思いなどを交えた講談となりました。
長野氏が所属されている株式会社ビースポークは、2016年に世界で初めて訪日外国人対応に特化したAIチャットボット「Bebot」を開発した企業です。
こちらは訪日外国人向けコンシェルジュ業務を、AI(人工知能)によって対応可能にしたスマートフォン用チャットボットサービスです。訪日外国人は年々増加傾向にありますが、外国語が話せなかったり、多言語スタッフが確保できなかったりして、対応に苦慮しているところが少なくありません。
また、同じような質問に何度も対応したり、口コミにつながらなかったりすることも多いようです。こうした状況を解決できるのが、「Bebot」の大きな強みとなっています。
実はチャットアプリは日本よりも早くアメリカで人気に火がついており、月間ユーザー数はSNSよりも多いそうです。
また訪日外国人向けのチャットボットは「サブ型コト消費」との相性も良いという利点もあります。
サブ型コト消費とは、旅先でたまたま知ったコンテンツを利用するという動きのことです。従来言われている「コト消費」とは違い、観光客が事前に十分な情報をもっていないことが多いという特徴があります。そのためインターネットなどの情報を充実させることや、現地のスタッフがしっかり対応することが重要になります。
実際に長野氏が阿寒に宿泊した際も、現地に到着してからさまざまなアクティビティの存在を知ったそうです。受付は宿泊先のホテルでできるようでしたが、スタッフから特に案内はなく、たまたま目にしたポスターからの情報だけが頼りだったとか。
実際にあるアクティビティを体験したそうで、その際には阿寒摩周国立公園の素晴らしさを体感したとのこと。
これらが事前に理解できていれば、もしくは現地でしっかり知識を得られる体制を整えていれば、利用者はもっと増えるかもしれないと感じたそうです。
実際に訪日外国人のアクティビティ需要は高まっています。また個人旅行が増えているため、今後はより、事前の情報提供が重要になるといえます。そこでチャットボットが大きな力になるとのお話でした。
釧路IoTラボの取り組みを紹介
続いては、以前キタゴエでも取材させていただいたITクラスター推進協会の中島 秀幸会長から、釧路市IoT推進ラボの取り組みについてご紹介がありました。
IoT推進ラボとは、地域でのIoT推進のために経済産業省が発足した事業で、全国に90箇所以上設置されています。
釧路ではビッグデータの観光活用をキーワードに2年間活動。
主な取り組みとして、電波が届かない場所でも地域の情報を手に入れることができる「おもてなしナビアプリ」の開発や、訪日外国人の飲食店での注文をサポートする「スマホ多言語メニュー」などに取り組んだ釧路市ストレスフリーサポート事業、LPWAを利用した観光実証実験などが紹介されました。
こうして集めたビッグデータを活用して、今後どのような事ができるのかを模索、研究することが今後の課題となるというお話で締めくくられました。
釧路市IoT推進ラボの取り組みについては、中島氏を取材させていただいた記事の中でも詳しくご紹介しておりますので、こちらもぜひご覧ください。
すべては釧路のITビジネス活性化のために!釧路ITクラスター推進協会 中島秀幸さんの思い
バスガイドこそ「ビッグデータ」!活用で地域の観光に力を
最後に登壇したのは、冒頭でもご紹介した「バスガイドもできるボールペン画家」原田 香苗氏です。
20数年に渡り、釧路でバスガイドとして活躍されてきた原田氏。その経験から、バスガイドを含む観光事業とITはとても相性が良いと、肌で感じていらっしゃるそうです。
実際に原田氏はITの方と関わることが増えているそう。ITを利用した後に必要になるのが自分たちのような観光事業だとも語っていました。
原田氏はさまざまな経歴を持っており、一度バスガイドになったあとJRの乗務員となり、その後観光案内所で働いた後、再びバスガイドとして働いていらっしゃいます。これはすべて、バスガイドを極めるための転職だったそうです。
最初にバスガイドとして働いていたころの原田氏は、釧路という場所に関する情報や、それを紹介する言葉が自分の中に圧倒的に足りないことを痛感していたとのこと。観光に関するさまざまな職を体験したのは、これらを補うためだったそうです。
今ではインターネットでさまざまな情報が手に入る時代ですが、バスガイドとして得られる情報はそこにしかないもので、本当に膨大だと語ります。それを蓄積してきた私自身がビッグデータであり、皆さんに活用してほしいとお話しいただきました。
取材を終えて
これまでキタゴエ道東支部では、ITと観光に関するさまざまな取り組みをご紹介してまいりましたが、今回のカンファレンスでは改めて「観光×ITの重要性」を感じることができました。
現在、訪日外国人だけでなく、国内の夏の観光地としても需要の高い釧路。リピーターを増やすためには、今後さらなるITの導入が必要かもしれません。
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