道東支部のこちゆうです。今回は2020年1月29日に釧路市で行なわれた「釧路市IoT推進ラボ 第6回検討会・MaaS勉強会」の様子をお届けいたします。
勉強会では公立大学法人 公立はこだて未来大学の副理事長でありながら株式会社未来シェアを立ち上げ、民間としてもMaaS推進に動く松原 仁氏と、地方版IoT推進ラボのビジネス創出事業メンターとして活躍する株式会社サートプロの近森 満氏を招き、MaaSについての事例紹介も行なわれました。
取材・撮影 : こちゆう 取材日 : 2020 年1月29日
MaaSとは?
MaaSとはMobility as a Serviceの略で、マイカー以外のさまざまな交通手段をひとつのサービスと捉え、利用者がより便利に利用できることを目指すシステムです。
道東では、2019年にバス事業などを行うWILLER株式会社がMaaS事業に乗り出しており、先進的な取り組みとして全国から注目されています。
釧路市における取り組みと全国各地で行なわれている事例紹介
会場となったのは、工場向けワイヤレスIoT講習会なども行なわれている「釧路市工業技術センター」です。
〒084-0905 北海道釧路市鳥取南7-2-23
会場には多くの参加者が来場。会場は満席状態でした。
開会後には釧路市IoT推進ラボ代表の中島 秀幸氏から、ラボのこれまでの取り組みなどについて紹介がありました。
IoT推進ラボは地域の課題解決や経済発展の推進を目的とした経済産業省の取り組みです。こうしたプロジェクトを地域ごとに進めるために生まれたのが「地方版IoT推進ラボ」で、釧路は2016年7月に選定を受けています。
釧路市IoT推進ラボでは、キタゴエでも紹介させていただいたハッカソンを始め、おもてなしナビアプリの開発やソニーのLPWA「ELTRES」を活用した地域見守りサービスの実装、またビッグデータの活用など、これまでさまざまな取り組みを行っていることが紹介されました。
続いて、経済産業省北海道経済産業局の安宅 剛志氏から「次年度に向けたスマートモビリティチャレンジの方向性」として、全国各地で行われているスマートモビリティサービスの取組みについて紹介がありました。
国では国土交通省と経済産業省が連携し、2019年4月から「スマートモビリティチャレンジ」というプロジェクトを展開しています。これは新たなモビリティサービスを社会実装するために必要な課題を解決し、地域活性化を図るため、各地の企業と協働し、さまざまな取り組みを行っていこうというものです。
今年度選定された地域は28あり、道東は「ひがし北海道地域」として支援の対象となっています。
このセミナーでは、福井県永平寺町で行なわれている住民によるデマンド交通をや自動走行、また滋賀県大津市のMaaSアプリ事例などが紹介されました。
また現状の課題に対する5つのチャレンジについても紹介されています。
<5つのチャレンジ>
- 異業種との連携による収益活用・付加価値創出
- 他の移動との重ね掛けによる効率化
- モビリティでのサービス提供
- 需要側の変容を促す仕掛け
- モビリティ関連データの取得/交通・都市政策との連携
実際に大津市では、交通と不動産が連携し、ある集合住宅の住民にUberで使えるポイントを付与することで、自家用車がなくても生活できる環境を整えているそうです。
また長野県伊那市では診療サービスをモビリティ化した「モバイルクリニック実証事業」という実証実験を行っているそうです。
2020年度の社会実装に向けた研究開発および実証実験の予算案は、昨年から8億円アップの50億円となっており、今後も各地でさまざまな取組が行われることが期待されています。
全国で始まっているMaaS事例とは?
続いて株式会社未来シェアの松原 仁氏から、『「未来シェア」が取り組むSAVSで実現する未来の公共交通』と題した取り組み紹介が行われました。
ー未来シェアでは「Smart Access Vehicle Service(SAVS)」というサービスを展開しています。これはAIを活用することで、便乗できるタクシーやバスをリアルタイムで計算・配車できるサービスで、乗客とドライバーそれぞれのアプリによって配車や手配が可能となります。
リアルタイムで自動計算できるため、タクシーなら効率的に利益を出せる他、バスの場合は需要に応じて柔軟な送迎が可能となります。
また、待ち時間の軽減も期待できるそう。タクシー業界では呼ばれたら10分以内に行くのが一般的とのことですが、SAVSでは最小限の台数で最も早い対応が可能となります。
また車での通勤が必要な場所にある事業所の場合は、従業員が乗り合い乗車することで渋滞の緩和や駐車場代の節約にもつなげることができるとのこと。実際にある企業には、事前予約とオンデマンドを組み合わせた朝夕従業員送迎サービスを提供しているそうです。
すでに全国各地でSAVSの実証実験が行われており、太田市デイケアサービスでは事業として運用されています。アプリ操作で配車するということで、高齢者には難しいと思われがちですが、目的地の設定が4カ所と限られており、ボタンを押すだけで配車できるよう工夫されているとのこと。
今後人口が減少していく中で、MaaSや観光、また高齢者の足としても期待できるSAVS。取り組むべき課題解決はまだあるといいますが、今後注目したいMaaSの一つと言えそうです。
「地域で活用」で終わってはいけない IoT推進ラボ活動事例
続いて地方版IoT推進ラボの動向について、近森 満氏からMaaS×観光分野のIoT活用事例について紹介がありました。
地方版IoT推進ラボのビジネス創出事業メンターとして、さまざまな地域に関わっている近森氏。これまでの技術革新の歴史や日本のハイプ・サイクル(ある技術の成熟度や適用度などを示すグラフ)を振り返りながら、「国がどういう方向にかじを切っているのかを理解する必要がある」と語られたのが印象的でした。
今回の講演では地方版IoT推進ラボにMaaSの取り組みなどについて触れられた後、近森氏がメンターとして2年間関わった加賀市の取り組みについての紹介がありました。
約8万人の人口を抱える加賀市ですが、そのうちの約28%が高齢者となっており、担い手不足や人口の流出が大きな問題となっています。
一方加賀市は、観光客が多数訪れる町であり、今後は北陸新幹線の開通によってさらに多くの来訪が見込まれているそうです。
こうした中、加賀市は2016年に「加賀市イノベーション計画」を策定し、スマート加賀IoT推進協議会を設立。元Google Japanの社長を務めた村上氏を会長とした取り組みを実施していくことになります。
近森氏はその中でIoT講習事業を担当。地場の人材育成に資する事業の推進を任されることとなり、部門長として企業経営者や幹部に向けた講習会や、IoT/AIコースを開発し、小中学校にRaspberry Pi(ラズベリーパイ)を配布するなどの取り組みを行ってきたそうです。
加賀市長がこだわっていたのは、日本で一番のIoT地区にするということだったそうです。
これは、さまざまな取り組みの中で培った技術やノウハウを他の自治体に展開することでプラットフォーム化を進めることが、活動の評価だけでなく、地域で新しいビジネスの主導権を握ることに繋がるからだと語ります。それがひいてはデジタルトランスフォーメーションに進んでいくことから、自治体だけで終わることない成果が求められるということでした。
取材を終えて
MaaSに関する施策が進む道東ですが、これを生かせるかどうかが地域発展の大きな分岐点になるかもしれません。今後も釧路市IoT推進ラボを始め、道東のIoT事業に注目していきたいと思います。
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