無線を五感で学ぼう!工場向けワイヤレスIoT講習会 in 釧路

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無線を五感で学ぼう!工場向けワイヤレスIoT講習会 in 釧路

道東支部のこちゆうです。今回は2020年1月16日(木)に釧路市で開催された「工場向けワイヤレスIoT講習会」の様子をご紹介します。

総務省 北海道総合通信局が主催する今回の講習は、昨年行われた入門編IoTセミナーの反響を受けて開催が決定したとのこと。今年の参加者は30名ほどとなっており、工場向けの講習会は北海道では釧路が初めての開催となっています。

業務の効率化や付加価値の創出が期待できるものの、難しそうなイメージが先行しがちなIoT。さらに、機器など適正な使い方を理解しなければならないこともあり、導入に二の足を踏む企業も少なくありません。

今回の講習会はこうした不安を払拭するために、座学だけでなくハンズオンも含めた内容となっています。

取材・撮影 : こちゆう 取材日 : 2020 年1月16日

工場向けワイヤレスIoT講習会の会場はこちら!

前回と同じく、会場は釧路市街地から車で10分程度の場所にある「釧路市工業技術センター」です。

〒084-0905 北海道釧路市鳥取南7-2-23

〒084-0905 北海道釧路市鳥取南7-2-23

開催にあたり、総務省 北海道総合通信局の田中 智大氏より「製造業はIoTを導入することで大きな効果が得られやすい業種とされています。皆さんにとってワイヤレスIoTを知り、導入のきっかけとしていただければ」との挨拶がありました。

総務省 北海道総合通信局の田中 智大氏

また釧路市 産業振興部長の秋里 喜久治氏からは「地域で産業を継続していくことは、中央とは違う課題があると思います。釧路のインフラも今後どんどん向上していく中で、ワイヤレスIoTを取り込みながら新しい事業のために取り入れていただければ。また地域では人材不足が深刻化しているため、こうした課題解決の一助になれば幸いです」と、開会についての思いを語りました。

釧路市 産業振興部長の秋里 喜久治氏

無線の基本を学ぶ座学講習

今回の講座は、大きく「座学」と「体験型講習(ハンズオン)」の2セクションで構成されています。まず最初に、無線の基本を理解するための講習が行われました。

講師を担当されたのは、日本電気株式会社の小林 宰氏です。

日本電気株式会社の小林 宰氏

ご自身もこれまで、事業者側からの相談を受けて、実際に稼働している工場に入り、無線の入り方の調査や導入支援などを行ってこられたそうです。

小林氏からは無線に関する基礎知識や、工場内での無線の入り方、また運用管理について、分かりやすい事例を交えながらお話がありました。

工場がIoTを取り入れる理由

工場におけるIoT化の目的というと、一昔前はデータ収集による生産性や効率の改善が多かったそうです。しかし近年はさらに、これまでの売り切り型のビジネスから、ネットワークを通して予知保全や運用管理を行う、ストック型ビジネスへシフトするために導入するところが多いとのこと。

その他のよくある導入理由についても、漫画で8パターン紹介されており、参加者はニーズの高まりを強く感じていました。

小林氏曰く、昔は「無線は切れるから困る」という理由で導入しない工場事業者が多かったそうです。しかし、そもそも有線でも切れることがある他、修理の際には無線以上に修理に時間がかかるという声も多いとのことでした。

続いて電波やその伝わり方、また電波法や無線の周波数の割当方法など、基本的な内容について紹介がありました。

小林氏「無線は有線と違って、空間の中で共有的に使う、有限希少な資源です。無計画に使うとお互いが干渉してしまい、通信が不安定になり、速度低下や切れるなど、通信の品質低下につながってしまいます。だからこそ無線は基本的な内容を正しく理解し、正しく使用する必要があります」

実際に工場内では、他の建物から出る電波と干渉してしまったり、溶接の際に飛び散る火花がノイズとして通信を妨害したりすることがあるそうです。こうした注意点を知らずに導入してしまうと、後々大きな問題になることも。

続いて、工場における無線の特徴として、以下3つを挙げられました。

  • ダイナミックな無線環境の変化
  • 多様な無線環境
  • 異種システムの混在

工場はオフィスとは違い、ラインの変更などによってレイアウトが大きく変わることがあります。その場合、無線機の位置を変えなくても通信品質が落ちてしまうことがあるそうです。

また隣接する建物や住宅などから入ってくる無線など、無線の環境が工場によって全く異なるというのも、工場における特徴の一つとなっています。

また、ラインごとに異なるシステムが導入されている工場なども少なくないそうです。こうした多様なシステムの混在があることも特徴となっています。

上記から、工場では実地で事前に無線の使用状況を調査する必要があるとのこと。その方法や、画面から入手できる情報などについても紹介がありました。

工場向けワイヤレスIoT講習会 釧路会場の様子

そのほか、無線の管理や運用のほか、無線のトラブル、またLPWAやローカル5Gといった最新の動向についてもお話があるなど、基礎から現状まで把握できる内容となっていました。

SONYのLPWA ELTRES(エルトレス)の説明も

座学による講習後は、釧路ITクラスター推進協会の中島 秀幸会長より、昨年のハッカソンでも使用されたSONYのLPWA「ELTRES」についての説明がありました。

最大100km先まで電波が飛ばせるという「ELTRES」。2019年には釧路市内に基地局が置かれており、実証実験が行なわれていることや、地域のインフラのひとつとなりつつあることなどが報告されました。

電波を感じる体験型講習(ハンズオン)

続いてサンリツオートメイション株式会社の青木 信也氏が講師となり、「電波を見る」「電波を飛ばす」「電波でセンサーを集めてみる」の3つを目的としたハンズオンが実施されました。

工場向けワイヤレスIoT講習会の様子

チームごとの席には、PCスクリーンとスペクトラムアナライザー、無線送受信試験ツールが設置され、無線の入り方や干渉した際の様子などをグループごとに確認していきます。

工場向けワイヤレスIoT講習会 ハンズオンの様子

前半の座学の中で学んできたことを参考に、有線と無線の場合の違いや全員で一斉に通信した場合、またチャネルをさまざまな形で設定した時の、それぞれの通信状態などについて検証を行います。

工場向けワイヤレスIoT講習会 ハンズオンの様子

こちらはアンテナの間に障害物を置いた場合に、どんな影響が出るかという実験中です。こうした穴の空いた金網でも、実は品質が下がってしまうのだとか。

こうした機器を実際に使用する機会はなかなかないものです。また、使ってみて始めて理解できることも少なくないようで、参加者からは「実際にやってみるとわかるね」といった声が聞かれました。

取材を終えて

多業種に比べてIoTニーズが高く、実際に事業の可能性を広げるツールになることもあるものの、導入や管理にはさまざまな点を理解しておかなくてはならないワイヤレス。難しく感じることも多いですが、実際に話を聞き、手を動かしてみることでハードルが下がることも少なくありません。

こうした取り組みが継続的に行われることで、釧路におけるIoT導入率が高まり、より産業が活性化することを願います。

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私が書きました!

合同会社Hokkaido Design Code執行社員。 奈良県出身、釧路市在住。本職はフリーライター。 釧路・十勝の魅力を発信するWEBサイト「くしろはてな」編集長。女性だけのライティング集団「ことのは」副代表。 釧路や道東、北海道に関する取材記事のほか、ビジネスノウハウや保育に関する記事やシナリオ作成などを行う。

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