北見市在住のライター、高橋です。2019年3月8日(金)、サテライトオフィス北見にて行われた「HACK DAY Okhotsk(ハックデイオホーツク) in KITAMI」の様子をお届けします。
サテライトオフィス北見
〒090-0042 北見市北2条西2丁目8番地
新規ビジネス創出のためのワークショップから始まり、RPAによるバックオフィス業務の省力化について、北見工業大学と企業の連携によって生まれた新たなシステムの発表、ITを活用したオホーツクの観光活性化会議、プログラミング教育実施事例の紹介と、5つのセクションでイベントが進行。
オホーツク地方におけるITの必要性を強く感じられるイベントとなりました。
取材・撮影 :高橋みゆき 取材日 : 2018年3月8日
「startup」 ―なぜ自分なのか。あらためてアイデアと向き合う
第1セクション「startup」では、インキュベーションプラットフォーム「Open Network Lab HOKKAIDO( 株式会社D2ガレージ )」によるワークショップが行われました。
自身が持つ起業アイデアのブラッシュアップ方法、起業のリスク軽減方法などを、2時間のワークショップを通じて学びます。限られた時間の中に、起業の第一段階であるアイデアの創出に関するヒントが詰め込まれていました。
まずは4~5人で1グループを作り、一人ひとりが持つ起業アイデアを文字に起こしていく作業を行います。次に、2分という限られた時間の中、自身のアイデアをグループ内で発表します。アイデアを聞いているグループのメンバーは、さらにそれを文字に起こしていきます。
短時間でアイデアをまとめて発表していくのはなかなか難しい作業です。発表したアイデアがほかの参加者に伝わったかどうか確認する作業では、「自分の考えは意外と人に伝わりにくい」ことを体感できました。
あえて金銭的リスクを取ることで、加速度的にビジネスを成長させるのがスタートアップ型起業の特徴です。「投資家(支援者)の興味をひくアイデアと、”自分がこのビジネスから逃げない理由”、つまり、あなたがこのビジネスをやる意味が大切だ」、というお話を伺うことができました。
「Business」 ―人的リソース不足をRPAで解消 できるのか
第2セクションの「Business」では、中小企業がRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)をどのようにして導入していくのか、導入による効果を北見市の事例を交えつつ、株式会社アイエンターの丹羽陽一氏が紹介。
人口減少と高齢化によって労働力が減少していく中で、RPAを活用しながら業務の効率化を進めていくことが大切であると丹羽氏は語ります。
RPAの導入を検討している企業にとっては、どのような作業をオートメーション化できるのか気になるところです。丹羽氏によると、PC上で実施している作業ならほとんどRPAで動かせるとのこと。
人員が足りずバックオフィス業務が負担となっている企業では、ルーチン化されたバックオフィス業務をRPAに転換していくことで、導入コスト以上の効果が見込めるかもしれません。
RPAはヒューマンエラーの解消にも役立ちます。また、RPAはヒトが稼働できない休日や夜間も稼働できます。働き方改革による有給義務化が差し迫る中、社員の休日確保・残業解消にも一役買ってくれるのではないでしょうか。
アイエンターが北見市で行った、RPAツール「WinActor®」の導入支援事例も紹介。
市役所窓口で提出された届出書や申請書は、職員がシステムに手入力しています。RPAツールの導入実験により、これらが自動化できる可能性があることがわかりました。
また、住民票など各種証明書の出力を自動化することで、職員の業務が軽減できることも確認されています。これは窓口に訪れる市民の負担軽減にもつながる可能性があるとのことです。
「Technology」―IT業界の未来を担う大学生と企業のコラボレーション
第3セクションの「Technology」では、オホーツクITシーズ発表会として、北見工業大学が企業と連携して研究開発を行った3つのシステムが発表されました。
アイエンターと北見工業大学が共同で研究開発したのは、プロジェクションマッピングを用いた体験型の教材で、子どもが楽しみながら物理学を学べるよう工夫されています。
ボールの色をセンサーが読み取り、ボールが見事ゴールに入ると、ピンポンの音とともに「GOAL」の文字と計算式が浮かび上がります。ボールが外れるとブーという音が鳴ります。
プロジェクションマッピングといえば、建物や壁などに映し出された映像を楽しむ鑑賞目的のものが主流です。今回の研究によって、プロジェクションマッピングの新たな可能性を感じた参加者も多かったのではないでしょうか。
続いて発表されたのが、株式会社Zooops Japanと共同研究開発されたドローンによる撮影システムです。ドローンと操作端末をWi-Fiで接続し撮影を行うと、自動で人物を検知しさらに人物が画面の中央になるよう調整します。
このシステムをビジネスに発展させるために、鳥獣害対策のソリューションとしてドローンを活用できないか模索中とのこと。ドローンで監視を行い、動物が検知されるとアラームを発報するようなシステムの開発も視野に入れているそうです。
最後に発表されたのが、株式会社 要との共同研究開発で生まれた路面凹凸可視化アプリです。
維持管理に必要なコストを削減できるこのアプリ。道路ストックの老朽化、技術者の高齢化、維持管理費の減少という課題を解決するソリューションとして開発されました。
こちらは同アプリの管理画面です。マップをクリックすると、その地点の道路情報を数値および動画で確認することができます。
簡単に路面状況を把握できるこのシステムによって、修繕の必要性が高い道路が可視化され、より効率的に維持管理を行えるようになります。
面積が広く、移動には車が欠かせないオホーツク圏の住民の生活に寄り添ったソリューションであると感じました。
「Tourism」―オホーツクの広域観光における課題とその解決策は
続いて、ファシリテーターに北見工業大学教授・桝井文人氏、ゲストに株式会社Zooops Japanの代表・渡部佳朗氏を迎え、今イベント事務局の西野寛明氏とともに、オホーツクの観光とITについて語り合う第4セクションの「Tourism」が開始されました。
市町村の枠を超え、広域観光に取り組むオホーツク地方。その面積は京阪神とほぼ同等ですが、人口密度には圧倒的な差があります。一般の参加者からは、「北海道独特の距離感が分からない観光客が多い」という指摘もありました。
また観光客からは、「インターネットで検索してもほしい情報が見つからない」という声もあがっているそう。近年増加しているインバウンドは、ほかの外国人観光客が書いた旅行ブログなどから情報を得ているのではないか、という意見もありました。
喫緊の課題として、国内外問わず多くの観光客をオホーツク全体に惹きつけるフックとなるような情報源が必要であることが分かりました。
この「ほしい情報が見つからない」という課題の解決に取り組んでいるのがZooops Japanです。Zooops Japan が開発した、観光情報をアプリで簡単に閲覧できる観光マーケティングソリューション「365 CITY WALK」。
すでに浅草で運用が開始されているこのソリューションを、まずは知床(斜里町)で導入し、その後はオホーツク全体に広めていく予定であると渡部代表が発表されました。
「Education」―IT関連の人材を北見市で育成する試み
北見市では、ICT人材育成事業として、IT関連の人材を創出し育成する試みを行っています。その一つに、小学生を対象としたmicro:bit(マイクロビット)によるプログラミング学習があります。
micro:bitとは、ゲーム感覚でプログラミングを学べるマイクロコンピューターです。パソコン上でオリジナルのゲームやおもちゃを楽しみながら開発できます。
子どもたちが持つ豊かな想像力とmicro:bitの創造力が組み合わさることで、大人では思いつかないようなゲームやおもちゃを作ることができるのだとか。
プログラミングに興味を持つための導入として、教育の現場でも十分に活用できそうです。価格も2,000円~3,000円とお手頃ですので、教材の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。
おわりに
HACK DAY Okhotskの様子をお伝えしました。IT関連企業創出への取り組みや人材育成への取り組み、産学連携による研究開発などでは、ITで広がるオホーツクの未来を感じ取ることができました。
広域観光への課題では、オホーツク地方全体が一丸となって情報発信を行うことの重要性にも気づくことができました。
高齢化、人口減少が進む地方において、今後ますます課題となるのが労働力の確保です。RPAツールを用いた業務の効率化、北見工業大学が研究開発を行った路面凹凸可視化アプリなどは、その一助となるに違いありません。「地方にこそITが必要だ」と強く感じた一日でした。
この記事をシェアする
同じカテゴリの新着記事
北海道ITまとめ
-
IT企業まとめ
-
スペースまとめ
ジョブボード
- 社名
- 募集職種
- 内容
- 給与・待遇
- 詳細
- 掲載終了日
ジョブボードに掲載したい企業募集中!詳しくはこちらより