キタゴエ道東支部のこちゆうです。2018年9月22日(土)と23日(日)に釧路で行われた「道東×IoTハッカソン!観光・防災の課題を解決する!Vol.2」についてのレポートを3部作でご紹介しています。
前編ではフィールドワークの様子を、中編ではアイデア出しの様子についてご紹介しました。
前編はこちらから
震災直後だからこそ意味がある。道東×IoTハッカソン2018 IoTで観光・防災の課題を解決する!vol.2レポート〜前編〜[フィールドワーク]
中編はこちらから
震災直後だからこそ意味がある。道東×IoTハッカソン2018 IoTで観光・防災の課題を解決する!vol.2レポート〜中編〜[ハッカソン]
今回は開発の様子と、5チームによるプレゼンタイムについてレポートいたします。
取材・撮影 : こちゆう 取材日: 2018年9月22日(土)・9月23日(日)
事前確認:ハッカソンで大切なこととは
本格的にハッカソンが始まるにあたり、司会進行役の八子知礼氏からハッカソンで大切な考え方と観点について話がありました。
八子:「IoTは技術の話と捉えられがちですが、さまざまな境目をつなげ、そこに潜む問題や課題をなくしていきましょうという活動にほかなりません。
今皆さんの机の上にはテーマが書かれた紙が置かれていますが、それを技術ベースで考えてしまうと、現場に受け入れられない技術や手段が中心の話になってしまいます。
あらゆる問題は境目にしか存在しません。まずは実際に町の中で、また現場でどう問題になっているのか、人々はどんなことに困っていて、それを解決するためにどんな境目をITでつないでいかなければならないのかという観点で考えてください」
八子:「もうひとつ注意してほしいことがあります。ITというとデジタル空間の話に偏りがちですが、アナログとデジタル、どちらも成立するようなモデルを考えてください。
今回のハッカソンは非常に難易度の高いことを要求していると思います。今あるアナログなものを完全にデジタル化しても、停電が起これば、何かを通知したり共有したりするような手段は役立たない可能性が高いからです。そういった意味で、アナログとデジタルとの共存という観点をぜひ持ってほしいと思います」
その後は八子氏のマッピングをもとに、チーム内で情報共有しながら、境目に潜む課題は何か、それを解決するためにどんな技術や手段が必要なのかについて議論が行われ、一日目が終了しました。
白熱のハッカソン&プレゼンタイムスタート!
翌日はハッカソンからスタート。昨日の議論をもとに、各チーム試行錯誤しながら時間いっぱいまで実装する様子が見られました。
こうしてハッカソンタイムが終了。いよいよプレゼンタイムの開始です。ここからは発表順にその内容をご紹介します。
バスを防災拠点に 交通機関利用型高度情報拠点システム「TRAIB」
チーム4「KATAKUNA Engineering(カタクナ エンジニアリング)」は、有事の際に路線バスを防災拠点として活用するシステムを提案しました。これは北海道胆振東部地震の際に運行不能になった路線バスと、フィールドワークで得た「119番通報が問い合わせばかりだった」という情報に着想を得たもの。
路線バスからGPS情報を発信し、各配置場所のライフライン状況などをkintoneに集約し、それを各バスに配信することで、バスに集まった情報難民にも発信できるという仕組みです。
またHEVシステムのあるバスを採用することから、スマホの充電基地としても利用できるほか、地域のコミュニティ拠点としての活用も考えられるとのこと。残念ながら実装には至りませんでしたが、参加者の防災経験とフィールドワークの情報が生きたアイデアが盛り込まれていました。
避難所管理をらくらくに!避難所管理システムSMS
チーム3「sms実行委員会」は熊本地震や新潟中越地震など、過去に起こった大災害の際に避難所管理が十分なされておらず、支援物資の供給や利用可能数の把握などに課題があった点に着目。SMS(避難所管理システム)を考案しました。
これは超音波センサーによって訪れた人数をカウントし、その情報をkintoneに集約して行政や支援機関などに共有するというものです。各避難所の避難者数を自動集計することができるため、行政は各拠点の人数把握や本当に必要な数の支援物資を用意することができます。
また今回は実装できなかったものの、あと何人で避難所の収容可能人数に達するのかなどを避難所の外に設置したディスプレイで確認できる実装も検討していたそうです。
新聞販売所を防災情報ハブとして活用
新聞販売所が持つ以下の強みを生かし、新聞店を高齢者などスマホを使えない人たちに紙で情報を届ける「災害情報ハブ」にしようと考えたのは、「がんばれ!吉田新聞店」チームです。
- 停電が起こっても発電機があること
- 紙に情報を印刷できる印刷機があること
- 情報を届ける使命感に溢れた配達員がいること
このサービスでは「販売員のために、災害時に必要な地図を作る」仕組みと、「高齢者のために災害時に必要な情報を書き出す」仕組みの2軸を実装します。
前者では平時から販売員にセンサーを付け、各ルート上で防災に役立つような情報を収集。さらに手書きで道路情報などをマッピッグすることで、災害時に活用できる地図を用意しておきます。後者では事前に行政など信頼できるSNSアカウントをマークしておき、災害時にはその情報がチラシとして自動印刷できるようにシステム化し、販売員がその情報を新聞のように配るという仕組みです。
災害に関する情報以外にもさまざまなものをデータ収集することで、収益化も図れるのではという観点も盛り込まれていました。
有事の際に地域情報を届ける観光/防災サイト
チーム六億円は道内外からの観光客をターゲットに、通常は観光情報を届け、有事の際には周辺の施設情報や停電復旧情報を発信するサイトの仕組みを発表しました。道民に対して行った事前のアンケートで、電気の復旧状況に関する情報を欲する人が85%を超えていたことに着目すると共に、旅行客の大半が旅先の病院や避難場所について知らないであろうと考え、これらの情報を提供することにしたそうです。
停電状態の感知にはArduinoを利用。集約した情報をGoogleMapアプリ上に表示します。また病院や避難場所などの施設についてもわかりやすいアイコンで表示し、今いる場所からの経路も表示できるようになっています。
実際に会場ではサイトのQRコードが配られ、停電を感知すると観光モードから防災モードに切り替わる様子が再現されていました。
旅先で避難ルートとマッチング情報を共有するワンタイムアプリ
災害発生から停電などで電波が切れるまでを3時間と想定し、その間に滞在先のホテルや避難所に帰るためのルートを提供するアプリ「帰ROUTE」を開発した、チーム「みんなで帰るーと」。該当施設にGPS機器を設置し、各施設の位置情報を収集します。
アプリはいくつかのホテルで用意されている貸し出しスマホにダウンロードすることを想定。これで普段はスマホを持たない人も利用できます。
このアプリにはもうひとつ、周辺にいる同じような状況の観光客と合流するための仕組みも実装されています。海外客の多くは一人旅のため、心細い思いをしている人が多いのではないかという観点から生まれたもので、スマホから位置情報を取得し、マッピングすることで合流をサポートします。
119番通報がパンクしたというフィールドワークでの情報をもとに、あえて情報を双方向にはせず、ワンタイムで情報をアプリに送信します。
これで全5チームの発表が終了。結果までのしばしの時間にチームそれぞれ写真を撮らせていただきましたが、いずれもやりきったというスッキリとした表情をしていたのが印象的でした。
1位のチームはどこ?運命の結果発表と総評
発表が終わり、いよいよ結果が発表。各受賞チームは以下の通りとなりました!
残念賞 避難所管理をらくらくに!避難所管理システムSMS(sms実行委員会)
特別賞 交通機関利用型高度情報拠点システム「TRAIB」(KATAKUNA Engineeringチーム)
第3位 防災情報ハブ・吉田新聞店(がんばれ!吉田新聞店チーム)
第2位 有事の際に地域情報を届ける観光/防災サイト(チーム六億円)
第1位 帰ROUTE(みんなで帰るーとチーム)
表彰のあとは、審査員およびスタッフから総評とコメントがありました。その内容を一部ご紹介します。
多くのアイデアが出た面白いハッカソン(八子知礼氏)
八子:「他の地域の防災ハッカソンにもいえることですが、このテーマで実装しようとすると、どうしてもハードルが高くなります。公共性が高く、そして民間ができることが限られるからです。その中で、ここまで多くのアイデアが出たのは本当に面白いなと思いました」
震災で実感した行政におけるIoTの重要性(釧路市産業振興部次長 風呂谷文雄氏)
風呂谷:「先日の震災で、釧路は場所によって3日間の停電に見舞われました。その中で行政に求められたのは、正しい情報をいかに早く市民の皆様に届けられるかという点と、情報が錯綜しないよう、随時更新していくという点です。
そういった意味でも、今後IoTの技術を、いかに行政の中で採用・活用していくのかが重要なテーマですので、今回活発なテーマをしていただけたことについて大変感謝しております」
優勝の決め手は知らない人同士のつながり(中島秀幸氏)
中島:「いずれも素晴らしいアイデアでしたが、優勝チームの決め手は災害時に知らない人同士でつながることができ、仲間として一緒に避難できるところだったと思います。
また2位のチームは今回の震災にかなりターゲットを絞ったのではないでしょうか。そういった意味で、とてもシンプルなアイデアで、かつリアルタイムで分かるところが高評価につながっています」
防災システムはターゲットの絞り込みが重要(四宮靖隆氏)
四宮:「前回も審査員として参加させていただきましたが、今回は新しいサービスや技術に関わった人が多かったのではという印象を受けました。それがデモまで行けなかった理由ではないかと思います。
防災システムはいろいろカバーしようとすると、広すぎて役に立たないものができてしまう危険があります。しかし今回はどのチームもしっかりターゲットを絞っていたので、全く使えないというシステムはありませんでした。今後さらにブラッシュアップすれば役立つシステムになるのではと思います」
新しい刺激を次回は自分のものに(遠藤五月男氏)
遠藤:「(実装まで至らなかった点について)エンジニアとしては、新しいものが入ってきて慌てて時間が足りなくなってというところも見えました。今日触れて刺激になったものがあれば、ぜひスキルアップしていただき、これからのハッカソンなどで利用してほしいと思います」
取材を終えて
今回は奇しくも北海道胆振東部地震の直後に開催ということもあり、自分事として捉えながらハッカソンに臨んだ方が多かった印象がありました。
2018年12月現在、釧路は直近30年の間に大きな地震が来る可能性が高い地域となっています。今回のハッカソンの内容が将来の釧路をサポートする手段になればと願わずにいられません。
2019年以降も釧路ではハッカソンを予定しています。次回も素晴らしいハッカソンとなることを期待しています!
前回の様子はこちら!
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