IoTで釧路の交通課題解決を。「道東×IoT・クラウドハッカソン2019〜地域交通を考えよう~」レポート前編【アイデアソン】

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IoTで釧路の交通課題解決を。「道東×IoT・クラウドハッカソン2019〜地域交通を考えよう~」レポート前編【アイデアソン】

キタゴエ道東支部のオダギリです。

去る2019年8月31日(土)と9月1日(日)、釧路では釧路ITクラスター推進協会(東北海道IoTハッカソン実行委員会)主催のイベント「道東×IoT・クラウドハッカソン2019!令和元年秋の陣~地域交通を考えよう~」が行われました。

今回で第3回目となる「道東×IoTハッカソン」は、今回から「道東×IoT・クラウドハッカソン」としてプチリニューアル。2019年9月11日に釧路で開催される「NoMaps釧路・根室」との連動イベントとなっています。

また今回は、SONY独自の新しい通信規格「ELTRES(エルトレス)」を利用して行われる、世界初のELTRESハッカソンにもなりました。

SONY独自の新しい通信規格「ELTRES(エルトレス)」

令和元年の今回は「道東地域における公共交通を考える!」をテーマに、地域の観光、地元の足としての交通について、MaaS時代の新しい視点で課題を捉え、IoTで解決する方法を探ります。

事前に行われた地域交通に関するヒアリングやアンケートに加え、参加者たちが実際に地域の交通機関を利用して感じたフィールドワークでの課題を議論してアイデアを出し合い、解決策を生み出す有意義な2日間となりました。

取材・撮影:オダギリ(himorin・こちゆう) 取材日:2019年8月31日(土)

地域の公共交通を使って参加者が会場の釧路工業技術センターに集結!

釧路駅の電車の様子

これまでの道東×IoTハッカソンでは、課題を把握するため、1日目のフィールドワークにバスツアーが組まれていました。

しかし今回は、参加者により身近に課題を感じていただくため、各自で釧路市内の公共交通を利用して街歩きをしながら、課題のインプットをしてハッカソンに備えるという構成に。会場となる釧路工業技術センターへの集合手段も、各々バスやタクシーなどを使っての集合となりました。

釧路工業技術センター

釧路工業技術センター

〒084-0905 北海道釧路市鳥取南7-2-23

北海道釧路市鳥取南7-2-23
道東×IoTクラウドハッカソンの会場に集まる参加者

参加者が続々と決戦の場となる2階会議室に集結し、午後からはいよいよハッカソンのスタート。

道東×IoTクラウドハッカソン 令和元年秋の陣 地域交通を考えように集まる参加者

腹が減っては戦はできぬと、おやつの準備も整っています。

道東×IoTクラウドハッカソン 令和元年秋の陣 地域交通を考えようの会場の様子

道東×IoT・クラウドハッカソン いよいよスタート!

テーマ発表と主催者の思い

司会進行は、前回同様に株式会社ウフルIoTイノベーションセンター所長を務める八子 知礼氏。挨拶と共に、今回のテーマ「道東地域における公共交通を考える」が発表されました。

株式会社ウフル IoTイノベーションセンター所長 八子 知礼氏

その後、イベント主催者の一人である 釧路ITクラスター推進協会会長の中島 秀幸氏が登壇。公共交通においてIoTがまだまだ地域に実装できていない現状を踏まえ、今回の開催を機に導入していきたいという思いを語りました。

釧路ITクラスター推進協会会長の中島 秀幸氏

続いて、共同主催者である株式会社ジョイゾーおよび合同会社Hokkaido Design Code四宮 琴絵氏から意気込みについてお話が。今回は自ら参加者の一人としてテーマに臨み、釧路での体験談を交えた情報提供や意気込みを話して挨拶を終えました。

株式会社ジョイゾーおよび合同会社Hokkaido Design Code四宮 琴絵氏

5つの審査基準を4段階で評価

八子氏からの「はじまりました!」という掛け声を合図に、今回のスケジュールや釧路の地域性に関する紹介、そして審査基準についての説明がありました。

道東×IoTクラウドハッカソン2019 5つの審査基準

審査には5つの基準が設けられています。

  • 革新性とユニーク(今までにないデザインか)
  • 実現性と実装性(開発可能か、ここで動作するか)
  • デザイン性(洗練されたデザインか、訴求力があるか、わかりやすいかなど)
  • 事業性(開発・運用資金の捻出方法)
  • テーマ性(テーマとの合致度)

それぞれの審査基準について、各審査員が4段階で評価し、結果を合計して順位を決めます。今回の賞金は、1位のチームに10万円の商品券が送られる他、特別賞やkintone賞も用意されています。

道東×IoTクラウドハッカソン2019 賞品

また優勝チームは、今回技術協賛企業として参加しているウイングアーク1st株式会社が開催しているDatalympic 2019(データリンピック)にも招待されるとのこと。こちらはなんと、優勝賞金100万円!こちらも注目です。

ウイングアーク1st株式会社が開催しているDatalympic 2019(データリンピック)

なによりも「2日間楽しんでもらいたい!」という八子氏の言葉を締めに説明が終了しました。

さらに、釧路市の蛯名 大也市長が駆け付け、海外視察に行った話を交えて「都会、地方ではなく、ここだから世界モデルになれるという考え方で進めてほしい!」という激励の言葉がありました。

釧路市の蛯名大也市長

北海道で先陣を切る室蘭市の取り組みをインプット

今回は他地域の取り組みを参考にするため、室蘭市役所 経済部の観光課長であり、総務省地域情報化アドバイザーなども務める丸田 之人氏に登壇。室蘭市をはじめとする全国自治体のオープンデータの取り組みについてのお話がありました。

室蘭市役所 丸田 之人氏

丸田氏は室蘭市役所の情報部門を長年担当し、現在は観光課でICTを組み合わせた観光施策を行いながら、総務省地域情報化アドバイザーとして全国の自治体へオープンデータ等のアドバイスを行っています。

オープンデータは、国や自治体のデータを無償で利用・掲載等ができるもので、室蘭市は北海道で初めてオープンデータを始めました。総務省では地方自治体のオープンデータの推進を行い、2020年までに全国オープンデータ化を目指しているそうです。

室蘭市はGIS(地理情報システム)の導入も全国市町村で一番早く、GTFS(標準的なバス情報フォーマット)等のオープンデータも公開しています。

室蘭市役所 丸田 之人氏によるオープンデータ自治体の取り組み

また丸田氏からは、Code for Sapporoの「さっぽろ保育園マップ」や金沢市から始まったゴミ収集に関する「5374(ゴミナシ)」など、オープンデータを活用したサービス事例についても紹介が。室蘭市では家計簿アプリ「Zaim」と一緒に、みんなの給付金を抽出するサービスを行っています。企業側では集めきれないデータを自治体が提供して、win-winの関係を築いているそうです。

室蘭市役所 丸田 之人氏

そのコンテストの一環で、昨年から室蘭市では参加費などが無料のフェリー内のハッカソンも開催されているそうです。2019年は10月4日から6日の二日間開催されるとのこと。気になる方はチェックしてみては。

丸田氏は今回2日間のスケジュールを一緒に過ごし、「私のような総務省の地域情報アドバイザーをこれからも活用してほしい」という言葉を参加者に送りました。

最先端の技術をインプット

続いて、今回のハッカソンに技術提供を行っている3社から技術説明が行われました。

まずは、今回のメンターを務める株式会社RHEMS Japanの西田氏から、公開情報URLや各種センサーなどが紹介されました。

株式会社RHEMS Japanの西田 龍斗氏

冒頭でご紹介したSONY独自の新しい通信規格「ELTRES(エルトレス)」に加え、AWSバウチャー、TTN(The Things Network)アカウント、くしろバスのGTFSデータも提供されました。

株式会社サイボウズの大竹氏

続いて株式会社サイボウズの大竹氏よりkintoneの説明が。ドラッグ&ドロップで簡単にデータベースが作れ、コミュニケーションが取れるサクサク感が伝わります。kintoneの使いやすさが役立ちそうです。

最後にウイングアーク1st株式会社の北出氏よりMotionBoardの説明がありました。

MotionBoardはさまざまなデータをリアルタイムに可視化して集積するツールで、農業IoTや製造工場、エリアマーケティング、売上分析などに使われています。

MaaS時代を見据えての課題と解決策

ここから、今回のテーマである道東の交通課題と解決策について、進行役の八子氏から話が進みます。

株式会社ウフル IoTイノベーションセンター所長 八子 知礼氏

釧路と道東の交通に関する現状を把握するため、阿寒バス、くしろバス、トヨタレンタリースから課題のヒアリングを行った資料を事前に用意。釧路管内の交通網に関する一般からの事前アンケートも用意されていました。

また釧路周辺のタクシー事情についても説明があり、市内には15のタクシー会社があり、400台という数ながら、運転手不足、代行運転から撤退する方向で進んでいるなどの情報提供が。また釧路市の地域公共交通網形成計画についても紹介されました。

これらのバスやタクシーなどの公共機関とMaaSを組み合わせて、IoTで人、物、環境の可視化をしてデータ化し、クラウドに上げて分析する。さらに現実世界に導入して、フィードバックまで考えるのが今回の解決策となります。用意された様々なセンサーを使いながら、現実世界への導入・フィードバックまでを目指します。

MaaSとはMobility as a serviceの略で「移動する手段のサービス」を意味します。

八子氏はゴールデンウィークに訪れたパリのeスクーターやシェアバイシクルが世界のトレンドになりつつあることを例に挙げ、これらを含む様々な移動手段から最適なものを選択できる移動するサービスであることを紹介。もともとはフィンランドのヘルシンキが発祥で、グーグルカレンダーの予定から移動手段を選択するものなども始まっているそうです。

MaaSはグローバルではまだ都市単位であるものの、行政が赤字の場所ほど導入が進みやすく、8月には全国で初めて、ひがし北海道と京都丹後鉄道沿線地域を対象にした、WILLERによる観光MaaSアプリ「WILLERSアプリ」がリリースされています。いずれは「Uber」などの飲食も含むトータルサービス、空間を利用するビジネスへと発展することを示唆しました。

また、自動運転+MaaSの次世代モビリティとして注目されているトヨタの「e-Palette」についても紹介。こうしたMaaSや自動運転時代を見据えた観点でも解決策を考えてほしいと激励しました。

課題は物事の境目で起こっている〜課題解決のヒント〜

道東×IoTクラウドハッカソン2019

また八子氏は、あらゆる課題は物事の境界線で起きていると話し、「つながっていない境目をつなぐことで社会課題を解決していく」アプローチで進めてほしいと続けます。

そのための検討ステップとして、横方向にルート、仕事の流れ、時系列などをマッピング、縦方向に人、物、プロセス、システムなどをリストアップすることを提案。その境目に必ず課題が存在し、その課題を解決したときにどんな喜びがあるのかを考えて、解決していく方向を決め、そのデータを一元化して分析・管理ができるようにしていきます。

もうひとつ、例えば紙の時刻表のようなアナログ空間をどうやってデジタル化し、シンクロ化させていくかもポイントになります。

6つのチームに分かれてアイデア出し

ここからは、いよいよチーム編成の作業です。アイデア出しは、個人で考えてチームで共有するということを繰り返していきます。

道東×IoTクラウドハッカソン2019の様子

参加者は若き高専生からキャリアのあるプログラマーまで、5~6人の6つのチームに分かれます。自己紹介のあと、チーム内でのこれまでの共有、発散のプロセス。午前中のフィールドワークより釧路や道東の交通機関に感じたことを自由に話します。

道東×IoTクラウドハッカソン2019の様子

その後、各自もくもくとシンキングタイム。それぞれが思う課題を付せんに書き出していき、「バス停がわかりづらい」など、各自が書き出した課題をチームで共有します。

道東×IoTクラウドハッカソン2019の様子

課題の整理は、それらの課題を解決できるものとできないものに分けて模造紙に貼っていきます。チーム内の議論が白熱して、全員立ちながら作業を進めているところもありました。

道東×IoTクラウドハッカソン2019の様子

課題の解決策は「わからないを、わかるように変える」ための仕組み作り。まずは5分間1人で考え、15分間でチーム内の共有。釧路の人の視点と外からの視点を交差させます。解決策を考えたチームが、早くも使用するセンサーを取りに来る場面も見られました。

道東×IoTクラウドハッカソン2019の様子

アイデア出しの締めくくりとして、IoT・クラウドサービスを考えていきます。クラウド型サービスの実装3パターンとして、ユーザー、バス会社などの企業、マッチング(サーバーやクラウド上)があることを八子氏が提案。この時点ではまだ解決策が決まらず、アイデアスケッチまでに至らないチームがほとんどのようでした。

その後のハッカソンタイムでもまとまっていない議論を進め、アイデアをぐっと絞り込み、時間と共に使用するセンサーを決めるなど、IoTとクラウドの実装へ各チームの動きが見られました。

果たしてどのような解決策が生み出されるのか、その様子は後編でご紹介します。

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