オホーツク在住のライター高橋です。
今回は北見近郊を中心に、全国の行政や企業・大学などのニーズに合わせてさまざまなシステムを開発・販売する北見情報技術株式会社の代表取締役・安部 彰人さんにお話を伺いました。
安部さんは1987年に東京からUターンで北見に戻り、有限会社アベニューを設立。2001年に法人変更を行い、北見情報技術株式会社が誕生しました。
北見で約30年、地域におけるITのトップランナーとして走り続ける安部さんのこれまでの道のりや、今後の展望に迫ります。
取材・撮影・構成:高橋みゆき 取材日: 2019年8月13日(火)
大手企業からITベンチャーの設立まで…豊富な経験をもとに地域で活躍
――これまでの経歴について教えてください。
大学卒業後、はじめは東京の大手企業に就職して企画や営業、技術に関する業務を行いました。その後メカトロニクス会社やゲーム会社を経て、自分でITベンチャーを興して……と、17年間を東京で過ごしました。
もともと、大学卒業後はすぐに北見に戻って就職するつもりだったのですが、その当時、このあたりにあった求人が市役所や金融機関の電算室などしかなく、「創る」よりも「運用」が主だったのです。
「クリエイティブな仕事がしたい」という希望があったので、北見での就職はあきらめて東京で経験を積みました。
――東京から北見に戻られたきっかけは何だったのでしょうか。
30代も半ばになると自分の親も高齢になってきて、そろそろ地元に戻ろうか、という話になりました。
Uターンをしてすぐに、北見情報技術の前身にあたる「有限会社アベニュー」を設立しました。こちらで初めて請け負った仕事は、とあるホテルの財務管理・販売管理などを行うためのパソコン用のシステム作りでした。
その当時はパソコン1台で50万円もしていたのですが、主流だったミニコンの運用費はさらに莫大で、「運用に何百万円もかかるからパソコンでの管理に切り替えたい」という依頼だったことを覚えています。
中小企業用のソリューションから大学・大手企業とのオープンイノベーションまで。手掛けたシステムは数知れず
――これまで手掛けてきた事業について教えてください。
ホームページやECサイトの構築、ソフトウェア開発など幅広く手掛けています。近年では、クラウドを活用したシステムづくりに力を入れていて、スマートフォンやタブレットで簡単に入力できる顧客管理システムや在庫管理システムを作り、販売しています。
「顧客のニーズに合わせたシステム作り」を行うのが弊社の強みで、北見市を中心に近隣の企業などから「こんなシステムが欲しい」と要望を受けて、それに応える形で開発を行っています。
企業だけでなく、行政や大学、団体向けのシステムも数多く手掛けてきました。企業のバックオフィス業務支援から行政向けのソリューションまでさまざまです。
また北見工業大学との共創や、IT導入支援事業者として補助事業を活用したシステム開発も行っています。
行政向けでは防災情報システム、不審者防犯システム、上下水道システムなど。一次産業が盛んな地域ですから、畜牛生産管理システム、農機具販売システムなども開発してきました。
ここ10年ほどは、こういったシステム開発の傍らで、感染症の原因となる菌を短時間で特定する「感染症起因菌同定システム」の開発を、三井化学株式会社と富山大学と共同で行っています。これは2020年4月にリリースの予定です。
感染症起因菌同定システムが実用化されれば、多くの人の命を救えるかもしれません。というのも、これまで院内感染やO-157などの感染症の原因菌を特定するためには菌を培養する必要があり、最低でも2~3日かかりました。
しかしこのシステムを利用すれば、おおよそ5時間で原因菌を特定できます。このプロジェクトに関する論文はネイチャーにも掲載されました。
――企業の課題解決から医療分野まで幅広く活躍されているのですね。現在はどのような体制で業務を行っているのでしょうか。
従業員は5名程度と会社自体は小規模です。当社では出社を義務化しておらず、北見市在住でもリモートワークの社員もいます。
マンションの一室を事務所として借りて、「サテライトオフィス」にしました。オフィスで働きたい人は出社して、リモートで働きたい人はリモートで、必要があれば出社するという形です。家庭の事情などで出社が難しい人でも働けるスタイルにしています。
IT化で地域経済の好循環を目指す
――貴社のキャッチコピーにある「あなたの会社のIT顧問」、この言葉に込められた想いは何でしょう。
企業の財務分野の顧問として税理士や会計士が経営をバックアップするというのはよくある話です。当社は、ITの分野で企業をバックアップして、売上の向上に貢献したいと考えています。
例えば、それぞれの会社にフィットするツールを作って業務負担を大幅に軽減する、ECサイトを構築して販路を拡大する、農業や酪畜産業では、蓄積したビックデータを活用して生産品のブランド化を図ることもできるでしょう。
最近ではAIで消える仕事、なんていう話もありますがそうではなく、AIを活用して「本当にやりたい仕事」を行うための時間づくりをサポートできるのではないかと考えています。
単純かつ煩雑な業務から解放されれば、その分営業や販売に時間を割けますよね。そうすれば、売上を伸ばしていけるでしょう。
当社のサポートでこの地域にITがもっと普及して、それによって個人や企業の利益が向上していくことが理想です。
今後は人材育成も視野に
――これからの展望についてお聞かせください。
今やインターネット環境とクラウドシステムがあれば、どこでも仕事ができます。東京の仕事をこちらで行うことも簡単ですよね。「どこでも仕事ができる」のであれば、「拠点をどこに置くのか」も自分の意思で自由に決められるわけです。
私が北見で会社を続けている理由の一つに、豊かな自然環境があります。東京などの大都市は遊びに出かける場所で、毎日の生活は自然豊かな場所で、とても快適です。
労働人口の減少で、地方の労働力不足は今後ますます深刻化していくのは確かです。それをITツールで補うのはもちろん、「地方でも働ける人材」を育成する必要性も感じています。今後は、大学や専門学校などとともにIT関連の人材を育成できればと考えています。
――地方における人材不足がより深刻化していく中で、北見情報技術がこの地域で担う役割はより大きくなっていきそうですね。
人材育成と同時に、この地に仕事を創出することも大切です。北見には工業大学があり、全国からこの大学を選んで通う学生も少なくありません。しかし、卒業後は多くの学生が北見を離れてしまうのです。
それはなぜか。やはり「仕事がないから」の一言に尽きるでしょう。「仕事があればこの地域に就職したい」という声もあります。
以前、仲間とともにフィンランドへ視察に行ったことがあります。フィンランドは木材の生産を主幹産業としていましたが、一時は携帯端末事業で一躍世界のトップとなりました。その中心にあったノキアは、周辺に大きなクラスターを形成しながら規模を拡大していきました。
ノキアと、そこからブドウの房のように広がったクラスターは、フィンランドの経済に大きく貢献した過去を持ちます。
北見でも、工業大学やIT企業が中心となりクラスターを形成して、経済が発展していけたらと考えています。
今後は能力が突出した個人・企業によるソロプレーよりも、サッカーの連携プレーのように、多くの人や企業が協働・共創していくことが重要になっていくのではないでしょうか。
おわりに
北見市のとあるマンションの一室。大きな窓からは太陽光が差し込み、目の前には緑の光景が広がります。「春になるとそこに桜が咲いてね、夏は緑。静かだし、本当にここは環境がいいんですよ。」と、安部さん。
常に新しいものが生まれる業界で走り続けながら、同時に地域貢献についても深く考えている安部さんのお話を伺っていると、ともすれば暗くなってしまいがちな地域の未来に関する話題でも、なぜかワクワクするような気持ちになれました。
今後は人材育成を行ったり、異業種間で連携できるようなチームを作りを行ったりして、事業をさらに新しい展開に広げていきたいといいます。北見のITにおける第一人者である安部さん。今後も年齢を感じさせないパワフルさで活躍されるに違いありません。
北見情報技術株式会社
住所:北海道北見市三楽町195-202
TEL:0157−22−9111
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