道東支部のこちゆうです。小学校におけるプログラミング教育が、2020年から必修化されることを受け、全国の教育現場は今まさに対応に追われています。
「一般社団法人 学校地域協働センター ラポールくしろ」は、地域の教育現場と企業、その地で活躍するさまざまな人とを結びつけることで、子どもたちに「今後本当に必要とされる生きる力や考え方」を養ってもらう環境づくりのお手伝いをしています。
活動の柱のひとつに「教育ICT(プログラミング教育)の推進」を掲げており、すでにさまざまな活動を行っているということで、今回はキックオフイベント「Rapportフォーラム2019」を取材させていただきました。
インタビュアー・ 撮影 : こちゆう 取材日 : 2019 年5月18日
託児スペースでプログラミング体験も!フォーラム会場
フォーラムの会場となったのは、釧路川沿いに建つ「釧路センチュリーキャッスルホテル」です。
釧路センチュリーキャッスルホテル
〒085-0837 北海道釧路市大川町2−5
受付の横には「プログラミング体験会 会場」と書かれた部屋が。こちらではSONYが開発したIoTブロック「MESH」を使ったプログラミング体験会が行われていました。
当日この場所にいた北海道教育大学釧路校の学生と小学生は、どちらもプログラミングの知識がないそうです。しかし、たった小一時間で「人が通ったのを感知して撮影するアプリ」と「センサーの前を通った人数をカウントするアプリ」を作っていました。
また今回のイベントでは、会場隅にてグラフィックレコーディングが行われ、現役教師の方が今回の講座の内容を”板書”するとのこと。こちらも楽しみです。
会場には教育関係者や一般企業、子どもを持つ親などさまざまな境遇の方が集まっていました。
釧路の子どもたちの未来を見据えて ラポールくしろの重要性
まずはラポールくしろ代表の幸村 仁氏から、開催に際する挨拶および団体の説明がありました。
幸村:「いま子どもたちに求められているのは、『なぜ働くのか』『どう生きるのか』を自問自答し、自らで解決する力です。そのためには社会や地域を知ること、社会の課題を解決すること、その課題を解決する学びをたくさん経験することが必要ではないでしょうか。
しかし、これらは学校の中ではできません。だからこそ学校と地域が協働することが必要なのです。
そのためには、地域と学校の懸け橋となるコーディネーターが必要です。ラポールくしろには、それぞれ背景も業種も違う運営メンバーが集まり、コーディネーターの役割を果たしていきます」
ラポールくしろの活動の柱
ラポールくしろでは以下3つを柱にして活動を行うとのこと。
- キャリア教育の推進
- 教育ICT(プログラミング教育)の推進
- コーディネーターの育成
そのためにはコーディネーターだけでなく、参画してくれる企業の存在が不可欠です。学校との協働は、一見学校側だけにメリットがありそうですが、子どもたちと一緒に企業や地域の課題を考えることは人材育成にも効果があるそうです。
教育ICTの推進という点では、「プログラミング教育を中心とした学びの充実」を目標に、各学校および地域単位で「ICTクラブ」を設置するとのこと。子どもたちは学校単位のクラブでプログラミングを学びつつ、地域のICTクラブでは指導者(メンター)の育成を目指します。
実際に5月末からはNPO法人みんなのコード協力のもと、教師を対象にしたプログラミング教育指導教員養成塾も行われるとのこと。今後の活動に期待したいですね。
キャリア教育って何?複業のプロが考える教育のあり方
続いてサイボウズ株式会社社長室室長を務めながら、複数の会社に勤務するという「複業」スタイルを実践している中村 龍太氏が登壇。「チームワーク教育の新たな可能性」と題したキャリア教育に関する講演を行いました。
冒頭にはセミナーでリアルタイムアンケートや質問を集めるのに活用できる「SLi.do」というサービスを利用し、「キャリア教育と聞いて何を連想しますか?」とアンケートを実施。
さまざまな回答が出る中、中村さんは「一人一人の社会的・職業的自立」だと考えているというお話がありました。
その後、近代社会におけるビジネスの変遷や、地域と学校が連動した学習活動事例、さまざまなチームワークの形が紹介され、子どもたち一人ひとりが社会的・職業的に自立するためには以下3つの要素が必要だというまとめで締めくくられました。
ちなみにグラフィックレコーディングにはこのようにまとめられていました。素晴らしい内容に中村氏も写真をパシャリ。
プログラミング教育の本質とは?
続いて、 NPO法人みんなのコードで指導者養成主任講師として活躍されている福田 晴一氏から「プログラミング教育がもたらすもの」というタイトルでお話がありました。
ご自身も教員経験を持つ福田氏は、これからの学校に求められるものとして、「テクロジー・多様性・地域連携」の3つの項目をあげています。
その後は世界の時価総額ランキングが、平成元年と30年で大きく様変わりしており、後者の上位業種の大半がIT企業であること、また日本の人口が今後減少に転じる中で、科学技術の力が必要になるにもかかわらず、深刻なIT人材不足に陥ること、今後外国人労働者などの増加やAIとの共生など、多様性の享受が求められることなどが紹介されました。
これらの解決のために必要なのが、まさに教育改革であり、学校は変わらなければならないと語ります。
その後もさまざまなお話がありましたが、特に印象的だったのは、「プログラミング教育=コードを書けるように教えること」ではないという点です。
小学校におけるプログラミング教育の目的は、単なる技術の習得ではなく、論理的・創造的思想を養うためのものであるということ。またプログラミングについて学ぶことのリテラシーとなるのではないかと語ります。
どれだけツールがあったとしても、それを使えなければ意味がありません。また、新たな発想を生み出せる「社会が求める能力や資質を持つ人間」になるためには、論理的・創造的思想は不可欠と言えます。
そういった意味で、今後コンピュータやネットワークに囲まれた生活を送る子どもたちに必要なのは、プログラミング教育によって養われるべき考え方やリテラシーなのかもしれません。
福田氏も、講演の中で「プログラミング教育が目指すもの」として「自分が想定する結論・姿・動きを正確に見通せる力」と紹介しており、デジタルの消費者から価値の想像者になることが、子どもたちの豊かな生活のためには必要だと語っていました。
またプログラミング必修化に際して、内容が決まっていないところ半数以上を占めるというアンケートがあったことを受け、「プログル」や「プロカリ」など実際に授業で使えるプログラミング教材の紹介がありました。
気になる方は一度使ってみると良いかもしれません。
その後は中村氏がモデレーターとなり、福田氏と釧路市長の蝦名 大也氏、釧路商工会議所の副会頭である濱屋 宏隆氏、ネイパル厚岸所長の森 敏隆氏を迎えたトークセッション「釧路の子供の未来を創造する」が開催されました。
途中、「SLi.do」を使った参加者からの質問に答えるなどする場面もあり、活発な意見が交わされました。
取材を終えて
今回のイベントでは、小学校でプログラミングについて学ぶことの意味について、多くの方が納得感を持って会場を後にしたのではないかと思います。
現場ではまだまだ課題が山積している状況ですので、今後のラポールくしろの活動に大いに期待したいと感じた人も多いでしょう。
会場の隣で行われていたプログラミング体験会で、知識のない子どもが楽しんでアプリを作り上げている様子を見ると、少し今後が楽しみになりました。
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