昨年2017年10月に行われ、キタゴエでもイベント当日の様子をご紹介した北海道IT企業合同技術交流会「Kita-Tech 2017」。
本記事では、Kita-Tech 2017で登壇したチームの中でも、来場された方全員の印象に残ったであろうKidsVentureチーム発表の紹介と、その後に行ったインタビューについてご紹介いたします! 過去のKita-Techの記事はこちらをご覧ください。
構成・ライティング : 広中裕士 取材日 : 2017年11月22日(水)
良心に訴えろ!エスカレーター歩行防止システム
今回KidsVentureチームとして技術発表を行ったのは、小学校4年生の森下知秋さん、小学校6年生の佐々木ハナさん、中学校1年生の原田崇志さんの3人です。3人は発表テーマを決めるにあたって「身の周りであったら便利になるものや、解決できる問題」がないかを最初に考えました。その時、たまたま新聞に掲載されていた「エスカレーターの歩行の問題」の記事が目に留まり、今回の発表を思いついたのだそうです。
最初に「エスカレーターの歩行」に関する問題調査の結果と、市場の意見を発表します。北海道新聞(2017年9月4日時点調査)によると、多くの人がエスカレーターでの歩行禁止については賛成意見を唱えているとのこと。その他にも
- 駅などで歩行禁止の表示をよく見かける
- 駆け上がる(下りる)人がいるとぶつかって危険である
- 片側を空けるために渋滞が起き、輸送効率が低下する
- エスカレーターは片側を空けて乗ったり、歩行することを想定して設計されていない
などの複数の理由から「エスカレーターの歩行」の問題は解決すべき問題であることを説明しました。会場にいたエスカレーターで歩いた経験のある参加者からは「ごめんなさい!」と声が聞こえてきます。
エスカレーターの歩行を防止する斬新なアイディア
では実際に、目的である「歩行を防止」するにはどうすればいいのか? 3人はエスカレーターで歩行した人に対して「その人にだけ直接的なペナルティ」があるよりも「日本人が持っている”できるだけ他人に迷惑をかけないようにする”という美徳・良心」に訴えかける施策の方が、より効果的なのではないかと考えました。
そこで「誰かがエスカレーター上で歩くと、エスカレーター『全体』が止まる」というシステムを考案します。これは、「エスカレーターを歩いた人によって、歩いていない人に到着が遅くなるなどの迷惑」がかかり「それを気にしてエスカレーターで歩行する人も減少する」というのが狙いです。
実際にミニチュアを作成して行った実験
具体的な機能は以下を想定。
- エスカレーターを歩いている人を検知する。
- 歩行者を検知すると、エスカレーターを停止する。
- 通常時は青だが、歩行者を検知すると赤になる信号機。
- 歩行者を検知すると音が鳴る。
- 歩行者を検知すると、モニター上に”キケンデス アルカナイデクダサイ !”という文字を表示する。
「今回は実際にエスカレーターを作ることが難しかったので、プロトタイプとしてベルトコンベアを作ることにしました」と佐々木さんが話すと、会場には笑いと、驚きの声が上がります。
KidsVentureチームの発表に、参加者全員真剣に耳を傾けます。
作成したプロトタイプのベルトコンベアの下には、実際に圧力センサーが3つ搭載されており、ベルトの上で歩行の動きをする(写真のブーツのミニチュアをベルト状で動かす)とセンサーが反応します。センサーが反応すると、危険であることを知らせるLEDライトが点灯し音も鳴ります。さらに、ベルトコンベアのモーターが停止して備え付けのモニターには注意を促すテキストが表示される仕組みです。
発表の最後には、今回のKita-Tech×KidsVentureを通しての感想をひとりひとり話しました。
森下:自分の力だけではなく、3人で作ることができました。できないところもありましたが、アイディアを出し合って作れたのが嬉しかったです。これからもっと上手くなっていこうと思います。
原田:今回はプロトタイプの制作に時間がかかったので、もっとプレゼンのほうに時間をかけれるように計画的に物事を進めていきたいです。
佐々木:今回、私はこの企画に参加することで、同じ興味を持つ仲間と出会うことができました。今までは電子工作に関して話せる仲間がいなかったので、とてもうれしく思います。この企画に参加して本当に良かったです。
発表後の審査結果では、特別賞を受賞!
すべてのチーム発表が終わり、立食などの懇親会が行われたあとに、審査結果の発表がありました。
KidsVentureチームは特別賞を受賞! プレゼンターを務めるサイレントシステム中本さんより「本来、特別賞はありません。でも、どうしても賞を上げたい、という審査員全員の意見が一致、急遽、特別賞を設けることにしました」と特別賞設置の理由についてお話がありました。
中本:心が洗われた。エンジニアって素晴らしい仕事なんだと思いましたよ。君たちは若いと思います。大人と子供って何が違うかというと、20歳過ぎれば大人かというと、そうではありません。思いやりが持てると、大人なんです。そう考えると君たちはすでに大人です。今回、圧力センサーがキャタピラに押されない位置に調整したり、信号が壁の向こうから見えるようにポールを立てて調整してる。それは僕らの世界でもすごく重要です。お客さんからどういうふうに見えるか、というのを意識して、あのシステムを作っている。そして、プレゼンテーションをしっかり練習した。正直、今日発表した中で、1、2を争う素晴らしいプレゼンテーションでした。今後もこの世界でもっと勉強して、またここでいろんなものを見せてもらいたいと思います。
KidsVentureチームが発表に使ったスライドはこちら! 大人に負けない素晴らしい発表を行った小さな3人のエンジニアに、会場からは再び大きな拍手が沸き上がりました。
Kita-Tech×KidsVenture!大人に負けない発表を行った3名の小さなエンジニアたち
それでは、Kita-Techの後日に行ったインタビューについてご紹介いたします。
KidsVentureに参加していた3人は、今回の発表の話を2017年7月にもらい、そこから10月27日に開催されるKita-Techのため、何度も企画会議を行ったり、デモ機の作成や実験・検証を繰り返してきました。
9月の終わり頃にデモ機がようやく出来上がり、その後発表用のプレゼン資料をビットスター株式会社の社員にサポートをしてもらいながら作成、発表練習も行ったのだそうです。
「楽しかった!」登壇した3名にインタビュー!
では、実際に参加された3名にインタビューをしてみましょう!
――今回のKita-Tech、みなさんの発表は本当にスゴイものでしたが、普段から電子工作などは行っているのですか?
森下:基盤にはんだ付けするようなことは、一ヶ月に1回あるかないかくらいで、あとはLEDライトをCR2032(コイン形リチウム電池)で光らせて遊んでいるくらいです。本格的にやり始めたのはIchigoJamに出会ってからです。電子工作は北大工学祭でIchigojamに巡りあってからで、はんだごては小学生3年生からやり始めました。
佐々木:KidsVentureが新聞記事に出ていているのをみて、「面白そう!」と思い、はじめました。
原田:小学6年生中旬くらいから始めました。それから定期的にプログラミングや電子工作を行うイベントなどには参加しています。
――参加が決まった時、どう思いましたか?
佐々木:参加のお誘いを受けた時点では、具体的にどういうものを作るのかを全くイメージできなかったので、色々と想像していました。また、参加決定の連絡が来た時に、私以外に参加者が他に2人いると聞いたので、新しい友達ができるかなと期待もしました。あとは単純に面白そうと思いました。
原田:Kita-Techというもの自体は最初知りませんでした。ですが、参加するのであればやるべきことはやりたいとおもったし最善をつくしたいと思いました。
――発表前の準備期間で大変だったことは何でしょうか?
森下:大変だったところはプログラミングの部分です。モータードライバを使ってPWMで動かす方法がわからなくて、2人に任せてしまいました。覚えることも多く、ゼロからだったことが大半だったので大変でした。また作業中に、うっかりはんだごてをプラスチック板に付けて溶かしてしまうという事件が発生したので、もう二度と溶かさないようにしたいと思いました(笑)
佐々木:模型作り(デモ機)が本当に大変でした。上手く作るために四苦八苦しました。
原田:同じく模型作りが一番大変でした。模型作りは本当にゼロからスタートだったので、作業も行き当たりばったりなことが多く、モーターのスピード調整とか設計とかボロボロでした。でも、最後はうまく作ることができ丸く収まって本当に良かったと思います。
失敗を乗り越えて得た大成功
――Kita-Tech(本番)に参加してみた感想をお願いします
原田:プレゼンテーションはうまくいったと思います。質問されたときも、3人で相談して誰が答えるかを決め、実演して見せたりとか、その場で対応することができました。また、他の企業の発表を見てやっぱりすごいなと思いました。
森下:「今度はRaspberry Piでカメラを使いたいなぁ」とか「メールで送信したいなぁ」と思っていたら、ビットスターさんの「C-PRESSO」が発表されて、おぉすごい!と、とても参考になりました。
佐々木:自分たちの発表は練習不足な面もありましたが、あとで動画で観てみたらなんとかまとまっていたように見えたので良かったと思います。他の方の発表でいちばん印象に残っているのは、インフィニットループさんの発表です!
――Kita-Techを通して学んだことはありますか?
佐々木:学校の学芸会より成長したと思います。アイディア出しから、制作、プレゼンまでを一環して経験できて良かったと思います。
森下:みんなでやることができて、ひとりでやるよりいい作品が出来て、さらに楽しくやれて本当によかったと思います。
――さいごに、将来の夢があったら教えてください
佐々木:私の現在の夢は、医学系の研究者です。今回のことをきっかけに、これからもプログラミングや電子機器に関する知識を蓄えていき、いずれは医療機器の開発などにも取り組んでみたいと思うようになりました。
森下:正直まだ決まっていません!(笑)
原田:まだ決まっていないけれど、進路もあるのでもうそろそろ決めていきたいと思います。基礎知識があれば少しは有利かな、専門学校もいいかなと思っています。高専だと機械科があるのでそれも視野に入れていきたいと思っています。
――今回はお疲れ様でした、インタビューありがとうございました!
「やりたいと思ったことをやらせてみる」見守ってきた保護者の方へインタビュー
続いて、事前の準備から当日の発表まで子どもたちを見守った、3名の保護者の方にもお話を伺いました。
ーーお子さんが、Kita-Techに参加してみての感想をお願いいたします。
森下(母):最初は何をするのかわからないと思ったけれど、結局その自由度の高さが柔軟な発想に結びついていってよかったんだと思います。大人だったら「これは無理じゃないか」とか「それは難しいんじゃないか」とかいろんな事考えちゃうんですけど、子供たちの発想をまず出来るかわからないけど始めて、なんとかかんとかものになって、すごいなって思いました。
森下(母):それに途中でメンターの方が、立場もあると思いますけど、逆に「それは無理だよ」って言わないでいてくれて、そこを尊重してくれたことがすごくよかったなと思います。今回9月、10月に行いましたが、子供たちも学校があるからすごく忙しくて、これがもし夏休みだったらもう少し取り組めたかなと思いました。
家で取り組む時間がなくて、ビットスターさんにきてしか取り組めなかったので、家で出来たらもう少し詰めれたと思い、ちょっとそこは残念だったなぁと思います。ただ期間的に2ヶ月というのはちょうどよかったと思います。また子どもたち同士もすごく仲良くなって、一人ではできないことでも三人だとこんなにできるんだっていうのを感じることができました。
佐々木(母):IT企業の方々が集まる会場で子どもが技術発表をするというのは一体どんな感じなのだろう、と参加前は思ってました。本番では、難しいお話の飛び交う中で質問などもしていただき、子どもの発表をきちんと聞いていただけているんだな、と感激しました。
――今回の参加を通して、お子さんに何か変化を感じますか?
森下(母):うちの子は最後の方で、何もできなかったと泣いてたんですね。何にもできなくて、役に立たなかったと泣いていました。今まで自分に自信を持っている子だったので、今回とてもいい経験になったなと思いました。自分にできない部分がこんなにあったと気づけて、そこから「IchigoJam入門」の本も読むようになって、いままで使えなかったコマンドを自分で調べて使うようになってそこはすごい成長したなと感じました。この企画がなかったら、そんなに成長していなかったと思います。
佐々木(母):なんにもないところから考えて、アイディアを出し合って作っていくというのが、本当に良かったと思います。また大人たちしか周りにはいないあのような雰囲気の中する発表の場というのは、学生のうちになかなかできるものではないと思うので、経験出来て良かったと思っています。
原田(父):うちも成長というか、「気付き」ですね。こういう世界があるのを知らなかったので、ものを作って、自分で制御してといったような、そういう流れ自体を知れたことが良かったと思います。うちはものづくりに対する進路設計とかは何も考えていなかったんですけど、新たな局面が出てきたのかなと思いました。
――今後お子さんにはどのように育って欲しいと思いますか?
原田(父):好きなことをしているときはキラキラしているので、自分が楽しいと思える職業につけるのがいいと思います。また、そうなったらいいなぁという願望はあります。
森下(母):好きなことを趣味でも職業でもいいんですけど、小さいときに見つけられてよかったなと思います。本人がやりたいことをやって欲しいですね。
佐々木(母):うちも同じような感じですね(笑)仕事がどんなものなのかわかっていないところがあったので、ビットスターさんをみせていただいたことにより「こういうことやってるんだ」「こういうのもおもしろいな」と感じてもらって、本人がしたいことをして欲しいと思います。
――インタビューのご協力ありがとうございました!
後日譚。PCNプロコン2017冬に応募!その結果は……?
その後3人は「PCNこどもプロコン2017冬」に同発表を応募。
2018年2月17日に国立科学博物館にて行われた表彰式にて、なんと「最優秀賞(ロボット電子工作部門 中学生の部)」「PCN特別賞」「アイティプロジェクト賞」の三冠を見事に受賞しました!
Kita-Techでの特別賞、PCNプロコンでの最優秀賞に関係者からは驚きの声があがりました。
PCNプロコンでの詳しい審査結果についてはこちらの公式サイトにて掲載されておりますので、ぜひご覧ください。
まとめ
取材を通して感じたことは3人とも色々なことにとても好奇心が強く、とくに好きなものに関してはとてもアクティブで本当に楽しそうであるということです。取材中も筆者に専門的なことを色々と話してくれました(専門的なことで筆者は半分程度しか理解できませんでした)。
恐らく筆者を含め、Kita-Techに参加された方は全員、既に3人の「ファン」だと思います! これからの3人の活躍がとても楽しみですね。
取材にご協力いただきありがとうございました!
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