北海道にベンチャーエコシステムをつくる!『Spark! Innovation vol.4』– NoMaps2019ビジネスカンファレンスレポート

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北海道にベンチャーエコシステムをつくる!『Spark! Innovation vol.4』– NoMaps2019ビジネスカンファレンスレポート

ビジネスカンファレンス『NoMaps Spark! Innovation vol.4 北海道にベンチャーエコシステムをつくる!』が、2019年10月18日(金)15:30-18:00よりアスティ45(札幌市中央区北4条西5丁目)の16階「NoMapsBUSINESS CONFERENCE 2019」会場にて開催されました!

NoMapsTOP画面

『NoMaps Spark! Innovation vol.4 北海道にベンチャーエコシステムをつくる!』は、2019年10月16日から20日までの5日間にわたり札幌市内で開催されたクリエイティブコンベンション、NoMaps2019内のセッションです。

都市・地域コミュニティによるベンチャーエコシステム構築活動が増えている中、エコシステム構築に挑む挑戦者たちが集結し、それぞれの経験・実績からエコシステム構築の鍵について、熱く笑いに満ちた議論を繰り広げました。その全貌をレポートします!

スパーク!イノベーション画面
 

FC自己紹介とテーマ「ベンチャーエコシステム」について振り返り

軽快な音楽と共にセッションスタート!まずは3年連続進行役(ファシリテーター)を務める、NoMaps公式アンバサダーの二人の自己紹介から。

 

NHKや伊藤園など数多くの企業コラボイベントをプロデュースし、現在渋谷イベントハウス「東京カルチャーカルチャー」プロデューサーの河原 あず氏。

河原 あず氏写真画像

グラフィックレコーディングを担当する、富士通デザインで落書き講師として、グラフィックカタリストという活動を行っているタムラカイ氏。グラフィックレコーディングとは、議論や会議をグラフィックで可視化して記録することで、伝わりやすくすることだそうです。

タムラ カイ氏顔写真

まずは過去の振り返りから。2017年の議論では、ただ名刺交換するだけではない、その先の関係が必要との視点で残されていた、グラフィックレコーディングがこちらです。

2017年グラフィックレコーディング

続いて2018年。サッポロビール協賛で、登壇者はビールを片手に行ったそう。それ故に言ってはいけない事をポロリと言う人が多かった印象だったと、会場内を笑いで温めるタムラ氏。

2018年グラフィックレコーディング


「今年2019年9月に、高校生から起業家を育てていこうという「START UP CITY SAPPORO」を市長が宣言し、行政からもこういった動きが生まれてきた。今回はより議論を具体的に、エコシステム構築の鍵を探るテーマで6名に討論してもらいます」(河原氏)

ベンチャーエコシステム
 
 

登壇者紹介がてらスタートアップ支援について探る

登壇者紹介1
登壇者紹介2

集結したイノベーターメンバーは次の6名。まずは、DMM.com 経営企画室長・執行役員/ビジネスプランニング本部長 市村 昭宏氏。

 
 市村 昭宏氏顔写真


「慶應義塾大学卒業後、起業しスマートフォンのチケットサービス「tixee」を提供するLive Styles株式会社を設立。オーナーの亀山からいきなり「会社を買わせて貰っても宜しいですか」のメッセージが届き、2015年に同社をDMM.comに売却し入社。新規事業や買収案件の他、若い起業家にマネーの虎DMM版をしている」


さくらインターネット株式会社 代表取締役社長 田中 邦裕氏。自ら起業し大企業へと成長させたこともあり、ベンチャーへの投資の有無を問いかけます。

田中 邦裕氏顔写真

「会社としてもそうだけど、個人的に来た人にも100~200万出資するときがある。サーバー代が払えないスタートアップ企業が多いので、人件費とサーバー代を出す。お金をあげるより、使っている経費を下げる方が長期的に見て良い」


東急株式会社 フューチャー・デザイン・ラボ イノベーション推進担当 課長補佐 加藤 由将氏。

加藤 由将氏顔写真

「220社8法人の東急グループの会社とスタートアップとのブリッジをするプログラムを手がけている。良いベンチャーと、合いそうな東急グループのお見合い婚のような仲人の役割」


北海道余市町 町長 齊藤 啓輔氏。行政とイノベーションということで、余市町での取り組みについて問いかける河原氏。

齊藤 啓輔氏顔写真

「企業連携から、地方が抱える課題解決に取り組んでいる。詳細は話せないが、登壇の市村さんとも今後プロジェクトをやる予定。新たな起業が生まれる素地は、困りごとがある。それを解決してビジネスにする。困りごとをリサーチして企業に声をかける」


札幌新陽高校 校長/ 東明館中学校・高校 理事長 荒井 優氏。

荒井 優氏顔写真


「元々はソフトバンク株式会社社長室に8年勤務後、2016年に破綻寸前の札幌新陽高校校長に就任し、2年で経営再建果たし、新しい学校運営を実現。2019年7月より佐賀の東明館中学・高校の理事長も兼務している」


株式会社デジタルガレージ 執行役員 社長室長 インキュベーション担当 オープンネットワークラボ推進部長 佐々木 智也氏。現在、北海道にD2 Garageという会社と、Open Network Lab Hokkaidoという会社を立ち上げ、その代表もしているそう。

佐々木 智也氏顔写真


「わらじは何足もだが、やっていることは一緒。ベンチャー支援を一貫して行っている。その他、アイデアの段階で事業相談を受け、設立前から準備している。田中さんにもメンタリングしてもらったりしている。高校生から育成しようという取り組みも」

 
 
壇上8名
左から北海道外チーム・市村氏/田中氏/加藤氏、パネルを挟んで道内チーム・齊藤氏/荒井氏/佐々木氏

「共創プロジェクトが円滑に進まない事の課題点」を登壇者の実体験から回答

Q1
最初の議題はこちら!
Q1の答え
登壇者の回答

「旗を振るリーダーが不在である事が原因では」と回答する市村氏。その間にグラフィックレコーディングがみるみる出来上がって行きます。「今日は記録と言うより落書きで突っ込んでみようと思っています」とタムラ氏。

グラフィックレコーディング開始


「加藤さんは、大企業は受発注マインドに陥ってしまい目的欠落してしまうと書いていたのですが、何か痛い経験でもあるのか」と河原氏が振ると「痛い経験しかないですね」と回答。「合理的な意思決定をせよ、という課題を当てられるので、その瞬間で判断しちゃうとベンチャーは中小企業に負けてしまう」

加糖氏マイク他4名


続いて佐々木氏の回答も「事業会社と行政は経験からでしか意思決定ができない。新しいことをやろうとするのに「実績がないから」というのは身も蓋もない」と賛同しました。

佐々木氏アップ


田中氏に走り出しの頃にそういった事があったのではないか、と言う問いかけに「大企業からの受注がなかった。18歳の時に起業したから、大企業は話なんて聞いてくれなかった。マスで探すようにしました。やりたい人を探すようにした。スタートアップって「起業するべき」で起業する人はいない。大企業はやるべきことをやっているが、それをスタートアップで要求してしまう。かなりの溝がある」と回答しました。

田中氏アップ



荒井氏「ビジョンが大事。大企業側で見てきたが、ベンチャーは人生をかけているが、大企業は会社をかけている。出向ベースで親会社のために仕事すると、失敗する。片道切符で行くほど成功する」

 

それに対し田中氏の「ソフトバンクで合弁会社を作ってしまった。出向でいらっしゃるんですけど、どうしたら?」との突っ込みに「じゃあ僕をコンサルで雇ってくれたらうまく収めます」と笑いを呼びました。

新井氏爆笑
田中氏爆笑

「佐々木さんはtwitterを持ってくるとき出向で?」という問いに「Twitterは投資家として、資本業務提携で。やりたいから、と集まった事が勝因。渋谷でガス爆発があったとき、ツイートがあって、いけると思った。匿名というのが日本の国民性に合っている」

「無関係に口出ししてくる人たちの忖度、これが障壁であると回答した齊藤さん。何かあったんですか?」と河原氏。再び笑いが起こります。齊藤氏は「行政とスタートアップについての話。街にとって重要である、と判断してもうるさい人たちに気を使いすぎてスピードが遅い」

大企業でもそう言った側面がある? とバトンは加藤氏に。「NDAの雛形を作って渡し「いつまでに何しますか?」というプロジェクトマネジメントを行うと結構速い」

 

市村氏の会社は意思決定がスピーディーでは? と言う問いに「自治体よりも忖度があるのではないか」

 

それに対し、田中氏は「僕は判断力ないから、判断を取るのがストレスで、忖度させている上が悪いと思った。責任は取る」と言う回答に、グラフィックレコーディングが愉快に描かれて行きます。

 
 

解決方法は?

議題は解決方法に移ります。

Q2


市村氏「役割をしっかり決めましょうよ、というのが全て。準備が全て。合衆国スタイルで、各事業部が権限と責任を負い自分たちで判断することでDMMは成長してきた。課題を分析・設計することを教えて、新規事業を作って行く」


加藤氏「僕がやっているのは通訳のようなもの。ベンチャーと大企業はコミュニケーションプロトコルが違うので、うまく行かないと情報の提示をお互いがしなくなる。それをうまく行くように仲をとり持つと、ベンチャーの提案の質が上がる」優れた仲人!とうまい例えで笑いを巻き起こす河原氏。

 
 


齊藤氏「承認プロセスが時間かかる場合、高速でやっちゃって、結果が良くなったと提示して乗り切るのもアイデア」共感して頷きまくる加藤氏。

荒井氏「本音と建前がある中で、本音ベースで話せる芋煮会の場所を作る。オンとオフなら、オフじゃないと話せないことがある。本音を言えると、新しいイノベーションが生まれる」

田中氏マイク他2名


田中氏「プロジェクトの成功因子として、フォロワーシップが重要。リーダーシップが成功要因なのは2割で、フォロワーシップが8割。チームにコミットしている人を認めて、フラットに話せる環境作りが必要」

 


深い議論になってきました!

 
 

北海道でベンチャーエコシステムが根付くための鍵

次の議題が映し出されます。 

 


各面々の回答はこちら! 詳しく聞いて行きましょう。

Q3答え

加藤氏「何があるかを公開し発信。「使いたい」という人に北海道に住んでもらう。北海道の人口が減って行くところを、外部に頼る」

齊藤氏「移住はハードルが高いので、余市の場合は、東京に居ながら兼業で余市の戦略推進マネージャーの仕事をやってもらう人材を採用した」

齋藤氏アップ

佐々木氏「以前はビズカフェと言う、カバン持ちのようなコミュニティがあって、諸先輩に学べた。今はないので、僕たちがやらなきゃなとは思っている」

齊藤氏「昔は札幌がITの拠点だったのに、今は無くなってしまった。サラリーマンマインドから、開拓者精神のマインドを再度、鼓舞する」

市村氏「スモールスタートできるものはまずはやってみる。小さい失敗をたくさんできる環境を作る。フォロワーは人に付いてくるので、人がすごく大事」

荒井氏「北海道は官が強すぎる。皆、すぐ補助金をもらいたがる。ベンチャーエコシステムだから、リスクを取って行くもの。…と齊藤さんが言えと」と言う回答に笑いが巻き起こります。「北海道に戻ってきた理由は、官に依存しすぎだからこの先自分たちでやるモデルを作るため」同じ意見です、と齊藤氏。

佐々木氏「福岡は民間が盛り上がって、後で行政が乗る。北海道のNoMapsはどっちか分からないが、せっかく始まったので後で業態を変えて行けばいい。続けること


田中氏「やりたい人がやるとうまく行く可能性が高い。ただ、行政はやる気を出すと潰されるという学習性無力感が根深い。しかし福岡は高島市長がやる気のある職員をバックアップしている。札幌でも行政の方がやりたい、と思えばうまく行くのでは。そして、肯定ファーストでまずは受け入れる。本気の人をピックアップして、上に立つ人が守る」


リーダーシップとフォロワーシップのバランスは組織で意識するか、と言う質問に齊藤氏の回答は「現場にはやりたいことをやれ、気を使いすぎるなという環境を整えると、若手は反応しやすい」

更に、新陽高校は忖度ファーストがあったのか? という質問に荒井氏は「この30年間、会社も学校もオーバーコンプライアンスになってきていて、先生たちの許容範囲が狭い。民間校長が成功する鍵は、学校の先生をリスペクトしているかどうか。頑張らせないカルチャーが悪いので、それが変わればどの学校も素晴らしくなる」

右背後から抜き

大企業の視点から、加藤氏は「大企業は変化が小さくてゆっくり。でもそこは保守的にちょっとずつ変える。大きく変えると人が死んでしまったりするので」と回答しました。

北海道民が一歩進めるためのステップが必要か?

いよいよ終盤です。最後のクエスチョン! 回答の前に、二年前も繰り広げた<一歩踏み出せない北海道民>がキーワードで議論したグラフィックレコーディングはこちら。

2017パネルディスカッショングラフィックレコーディング

荒井氏「北海道のためだけに頑張るのではなくて、道外に出ていって気付いたら、あの人も北海道出身だったんだね、と言われることが大事」

佐々木氏マイク他2名

外で活躍して北海道に戻ってくる人達を増やすにはどうしたらいいかの質問に、佐々木氏は「移住する制度や仕事があれば、北海道に住みたい戻りたい人がたくさん居るはず。でも、仕事無いし、給与水準が低くて諦めている。仕事を作るのもあり。NoMapsで繋がって、スタートアップがどんどん生まれて行けば良い」と回答しました。

 

笑いと情熱で盛り上がった濃い90分の議論、豪華なゲストに盛大な拍手で終了しました。皆さんお疲れさまでした!

 


完成したグラフィックレコーディングはこちら!

タムラカイ氏グラフィックレコーディング
作:タムラカイ氏

作:木村あゆみ氏(@ayugraphic)
作:木村あゆみ氏(@ayugraphic)

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落語と北海道を愛する食いしん坊。造形デザインを経て、現在ライター×カメラマン。

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