2018年8月2日(木)19時から、読売北海道ビル3Fにある札幌ACU-Yで行われた『さくらの大納涼会2018 at 北海道』に行ってきました!
会場となった札幌ACU-Yは地下直結の読売北海道ビルの3F。読売北海道ビルの1Fには以前、キタゴエで紹介したボンサルーテ・カフェがあります。
〒060-0004 札幌市中央区北4条西4丁目読売北海道ビル3F ACU-Y
ライター : つつみみつぎ・赤沼俊幸 編集 : 赤沼俊幸 撮影 : つつみみつぎ 取材日 : 2018年8月2日
受付を済ませ、会場に入ろうとすると行われていたのは「さくらインターネットが開設したデータセンターは石狩? 函館?」というクイズ。この仕掛けをきっかけに来場者とスタッフとの談笑が始まることもあり、イベントの工夫を感じます。
『さくらの大納涼会2018 at 北海道』は三部構成。第一部は「技術が実現するイノベーションと〇〇」として、各社を代表するエンジニアがエンジニアリングの今や未来、ビジネスに価値を生み出す技術について語りました。
第三部では「さくらの中の人が皆さんの想いを受け止めます!」として、さくらインターネットのユーザーがさくらインターネットに対してのLTを行い、熱い想いや要望などを伝えました。第三部は懇親会と同時に開催。
キタゴエでは第二部の「北海道で活躍するエンジニアによるパネルディスカッション」を詳しくお届けします!
北海道で活躍する会社の代表によるパネルディスカッション
さくらインターネットの田中さんをモデレーターとして、北海道を代表する会社の代表によるパネルディスカッションが開催。
(左から)
- さくらインターネット株式会社 代表取締役社長 田中邦裕さん(モデレータ)
- BULB株式会社 代表取締役 阿部友暁さん
- クリプトン・フューチャー・メディア株式会社代表取締役、No Maps実行委員会委員長 伊藤博之さん
- 株式会社インフィニットループ 代表取締役、株式会社バーチャルキャスト 代表取締役 札幌移住計画代表 松井健太郎さん
- 株式会社未来シェア代表取締役、株式会社アットウェア取締役、株式会社函館ラボラトリ 代表取締役 松舘渉さん
先ず最初に各パネラーの自己紹介から始まります。
現在3社の会社の代表を務めている松舘さんは、室蘭出身。
松舘さんは移動格差のない社会を目指し、AIやクラウドを使った街全体の交通の最適化(需要に応じたバス・タクシーの自動迎車)を目指して取り組んでいるベンチャー起業家。平成28年の起業家万博というイベントで、NTTドコモ・ベンチャーズ賞を受賞。
松井さんは株式会社インフィニットループの経営者。システム・ゲーム開発を行い、本社は札幌ファクトリーにあります。2年前からVRシステムの開発に取り組んで、2018年7月に株式会社ドワンゴとジョイントベンチャー「株式会社バーチャルキャスト」を立ち上げました。
札幌移住計画では札幌へのUターン、Iターンのサポートを行っています。
伊藤さんはクリプトン・フューチャー・メディア株式会社の経営者。現在は代表を務めており、過去はエンジニアという経歴。
NoMaps実行委員会の委員長も務めています。NoMapsはサウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)という海外イベントに似たような日本版のイベント。
会社を設立した当初(1995年)はインターネットという言葉が世の中に認識された頃で、初めて立てたのはMicrosoft製のASPを利用したサーバー。常時接続がまだまだ一般的ではなく、OCNが初めて北海道にやってきた際に、バーチャルテープカットを行ったことがあります。
実は本日講演をした公立はこだて未来大学の鈴木恵二さんと同じ研究室。
阿部さんはBULB株式会社の経営者。室蘭出身でキャリアのスタートは東京。個人宅にUSENの100MByteの光ファイバーが引けるようになった際に、ヤフオクでサンマイクロシステムズのコバルトサーバのラックを購入し、「ねとらじ」というサイトを作り始めます。2、3年運営した後、ライブドアに売却し、ライブドアに入社。
ライブドアでの経験を活かして、会社を数社立ち上げます。立ち上げた会社ではクラウド系のSIerや、技術継承やマネジメント的を行ってきました。
2014年に北海道に帰り、リモートでメンバーを集めて、現在30人ほどの社員と共にさまざまなプロジェクトを進めています。
田中:ちなみに30人のうちどれくらいがリモートワークなんですか?
阿部:全員ですね。東京のオフィスは僕しかいないし、札幌に来れるメンバーは数人いますが、距離的な事情もあり、札幌に集まることがあるのは3人か4人です。仕事で来るよりも、打ち上げや懇親会等で事務所に来ることのほうが多いです。
田中:ちなみにさくらインターネットも大阪の会社なんですが、東京の会社だと思われることが多く、結局会社はどこにあっても良いですね。社員はどこにいても良い時代、全員がリモートワークであるBULBさんの体制に感心しました。
パネラーのみなさんが、どういう分野に注目しているのか
自己紹介後は注目分野についての話に。
田中さんの注目している分野
田中:個人としてはシェアリングエコノミーに注目しています。
田中:ここ1、2年でシェア前提社会が来ている気がします。もともとは余ったところを効率よくシェアしようという発想だったけれど、これからはシェアすることを前提としたサービス・ビジネスが増えてきている。
シェア前提社会というものがやってきた際に、どのようにビジネスが広がるか、またどのような問題が出てくるのかに興味があります。
最近だと民泊禁止をするマンションが増えていて、シェア前提社会に対して抗う動きがあったりします。もちろん私も自分が住むマンションの管理組合では反対しました(会場:笑)。
「パラレルワーク」という言葉も出てきているが、5時間ずつ、いろいろな会社の業務を行うということが本当に良いことなのか?と考えたりします。
今までは一部をシェアしていたのに、全部シェアすることを前提とする社会が出たときどのようになるのか?ということに注目しています。
松舘さんの注目している分野
松舘:会社名が未来シェアというところでも、シェアに注目しています。
松舘:シェアの中でも、ライドシェアというところに注目しており、1台のタクシーを複数の人で乗合すると安くなることだったり、バスという乗合車両をいかに効率よく乗せていくかということに注目しています。
実は世の中にある路線バスの約8割は赤字路線で、行政の補助金で赤字補填され運営している路線バスがほとんどです。
高齢化、免許返納社会という中で、運ばなければいけない人やモノをいかにして解決するのかというところに注目して取り組んでいます。
例えばタクシーとバスがうまく連携すると良くなる例。バス停まで歩けない人がバス停まで送る乗合タクシーを使うことで、外に出れない高齢者さんが外に出れるようになります。
バス・タクシーの利用者も増えるので、モビリティを利用するユーザ、サービス提供者側のお互いがハッピーになれるのです。
フィンランドのヘルシンキというところではかなり先進的なサービスが登場していて、月に数万円支払うことで、どの交通機関でも利用し放題というサービスがあります。もちろんタクシーは乗り放題ではなく、月何回までという回数が決められていますが、先進的です。
そういった先進的なサービスが海外で出てくる中で、日本ではどのようなモビリティが利用されていくのか。というところに注目しています。
松井さんの注目している分野
松井:バーチャルユーチューバーにはまっています。バーチャルユーチューバーはすごい面白いというかカオスな分野で、私と副社長が3Dスキャンされていて、両方ともネットにフリー素材として提供されているんですが、たまたまバーチャルユーチューバーを見てみると、私と副社長がハグしたりキスしたりしてるんですね。ネットって怖いと思って、そーっとパソコンを閉じたんですが(会場:笑)
松井:私が興味深く見ているものはボイスチェンジャーです。ボイスチェンジャーを使って、男でも女の子の声が出せるんですね。ネットで番組がやっていて、女子会といって集まるんですが、全員男なんですよ。ネット上で男だけの女子会が開かれていて(会場:笑)。
アナログのボイスチェンジャーはすごく良いのですが、ものすごく大きかったり、15万円や20万円くらいしたりするのですが、なんとかソフトウェアで代替して、自宅のPCで可愛い女の子の声になるということに研究していて、そのうちバズるんじゃないかと思っています。
田中:バーチャルユーチューバーが単なるエンターテイメントだと思っている方多いと思うんですが、もしかすると、バーチャルユーチューバーが億単位でお金を稼ぐかも時代になっているかもしれません。UUUMさんがユーチューバーのキャスティングの会社をされてて、上場したように、バーチャルユーチューバーも同様に会社ができて上場するかもしれません。ちなみにバーチャルユーチューバーは日本だけなんですか?
松井:今のところ日本だけじゃないでしょうか。
田中:いつのまにか世界を席巻しているかもしれませんね。実は私、IPAの未踏ソフトウェア創造事業で、プロジェクトマネージャとしてメンタリングとかしてるんですが、声を変える系のテーマが今年は多くて、実際1つ採択されているんですね。
伊藤:音声合成はもともとテキスト to スピーチっていうTTSという研究分野でしたが、最近はスピーチ to スピーチというSTSになって、イカツイ男性の声を女性の声に変えるような研究に変わってますね。
伊藤さんの注目している分野
伊藤:NoMapsというイベントを去年から始めました。米国テキサス州オースティンで去年で30回目の開催を迎えた、サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)のようなイベントです。TwitterやFoursquareといったテック系企業がサービスを発表する場。オースティンは結構ロックな街で、もともとは音楽が最初に始まっているんですね。
伊藤:「カッコいいから札幌でもやろうよ」と西暦2000年頃に「ミックス」というイベントをやったんですが、少し早すぎた。インターネットもまだ浸透していないときでした。満を持して去年から名前を変えて開催したんですね。
すすきののライブハウスをワンチケットで複数のお店に入れたり、国際映画祭にイベント会場を併設したり、テック系のカンファレンスもACU-Aで開催しました。その時は公立はこだて未来大学の松原仁先生や、NIANTICの川島優志さん、Rhizomatiksの真鍋大度さんなど、そうそうたるメンバーをお招きしました。
宇宙に関するカンファレンスもやって、堀江貴文さんのインターステラさんや、宇宙にロボットを送り込むGoogleのプロジェクトにも参加した、HAKUTOプロジェクトの中村貴裕さんや、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の方にも来ていただきました。
技術をつかって北海道でどんなことができる?というような切り口でホクレンさんなどの地場産業の方々にもセッションしていただいたり、北海道を盛り上げていこうという趣旨があります。
また、単に一方的に話を聞いて終わるのではなくて、毎晩ミートアップというイベントをやっていて、登壇者と一緒にビールを飲んで、話をする機会や、何かを一緒に始める機会になればと考えております。
阿部さんの注目している分野
阿部:無人レストランというテーマに注目しています。わかりやすい例で海外のAmazon Goのようなサービスがあります。Amazon Goはレストランではなく、無人スーパーみたいな感じです。
阿部:小売店は無人が広まってきているんですが、無人レストランはまだプレイヤーがほぼいない状態。eatsaというサービスが世界的に見て一番進んでいるプレイヤーなんじゃないでしょうか。eatsaはサラダ屋なんですが、大きな自販機に対して事前に携帯でオーダーすると指定した箱にサラダがセットされるようになってます。
メリットとしては対人コストがなくなるのと、事前に予約するので、待ち時間が無くなることです。
以前は5、6店舗やっていたんですが、今は仕組みをパッケージ化して販売していくという方針に切り替えてやっていて、同様の取り組みを自社でもやろうとしています。
この手の取り組みをやるとすると飲食店を巻き込んでやる必要があって、はまりやすい食材、はまりにくい食材が出てきます。
箱に入れやすい、持ち帰りやすい、パックにしやすいものははまりやすいんですが、スープだったりラーメンだったりと運びにくいものは、はまりずらかったりします。
最終的には店舗全部を無人化にしたい、調理、受け渡し、決済、流通、配送まで自動化したいと思っています。サラダだと自動栽培の野菜を自動で摘んで、自動で調理してお客様に提供します。
2020年までにマクドナルドが全店舗にセルフレジを導入するというニュースがあって、これは事前にオーダーして並ばずに商品を受け取れる仕組みです。
アメリカのスターバックスではすでに導入されて、オーダーの12%は事前にモバイルでオーダーされているそうです。
店舗丸ごと自動化はハードルが高いので、まずはモバイルオーダー&ペイの部分(事前に決済を行ってから商品をオーダーして、すぐ商品を受け取れるという部分を始めようとしています。
今は都心の会社と組んでいますが、過疎地域等でも広げていけたらと考えています。
松舘さんのビジネスと北海道について
松舘:昨年、函館ラボラトリという会社をアットウェアから分社した形で始めたんですが、そこにコワーキングスペースを作りました。未来大の学生が集まったり、社会人が準備していたり、プログラミング教室を行ったり、自由に集まっています。
松舘:たまたま昨日、学生が「暑いねー、もう31度だって函館」って言っていました。私は仕事柄全国飛び回っているのですが、広島県で7月に起きた集中豪雨の時にちょうど現地にいたり、岐阜県の40度越えの暑い日にもその場にいたりとか、そんな生活をしていると北海道のように幸せな場所は他にはないだろうと思うんですね。環境的にも素晴らしいし、この地で何かやっていけたらなと考えています。
松井さんのビジネスと北海道について
松井:弊社には「最先端の最後尾を独走する」という社是があるんですが、その他に3つのポリシーがあります。ポリシーの中の一つに「地域の会社であること、地域社会に根を張り、地域の一員として認められる会社であること。地方都市においても何ら諦めることのない、外を見た前向きな地方企業であること」というのがあります。
松井:一般的には札幌である程度成功すると、東京に進出して本社を移したり、東京に支社を作りますが、弊社では地方都市である仙台に進出しようと事業所を作りました。
今後もあくまで地方の企業であると、そうやっていきたいなと思っています。
そもそも我々は創立11年目の会社でグループで200人ほどいるのですが、地方都市でないと成長しなかったのではないのかな?と考えることがありまして、東京だと競争率が高くて埋もれてしまっていたのではと思います。
札幌の人、北海道の人は、地元が好きな人が多い。優秀な方が北海道に帰ってきて働いてもらうことが原動力になり、ビジネスが成功してきた部分があります。インフィニットループは今後も地方の企業であることをキーワードにしたいと思っております。
伊藤さんのビジネスと北海道について
伊藤:僕は生まれてこの方北海道以外に住民票を移したことがない完全なるネイティブ北海道人です(笑) 僕がなぜ北海道に居続けるのかというと、僕が北海道にいて、どこまでできるかというチャレンジでもあるんです。
会社を立ち上げたのが、1995年。その当時はインターネットが出始めたときで、その時僕は大学にいました。大学に一番最初にインターネットが引かれたのですが、何か凄い、凄いのが来ると、ひしひしと感じるわけなんです。
伊藤:当時僕は、趣味で音楽を作り、知り合いのスイス人が居てコラボレーションするんですが、フロッピーディスクをエアメールで送って、でも片道2カ月くらいかかるんですよね。そうすると忘れちゃうんです。音楽の着想が。全然楽しくなくって……(笑)
でもそれがネットを使うと一瞬でできるようになる。これはすごい。あれもできる、これもできると妄想が膨らんで、いてもたってもいられなくなって会社作ろうと思い、公務員を辞めるんですが、その時に東京に行こうとは考えなかったんですね。北海道にいてもネットを使うといろんなことができる。
ただそれが良かったと思ってます。東京に行くと営業マンを雇って、みんなで頑張って仕事をとるやり方になってたかもしれません。北海道にいたので、営業力は技術力だと思ってやってきました。それが良かったと思っています。
地方にこそチャンスがあると思います。スティーブケースというAOLの創業者のファンドで、ライズ・オブ・ザ・レストというファンドがあります。レストというのは「あまりもの」っていう意味。シリコンバレーじゃない地方で、そこからライズ(立ち上がる)するということをしていて、彼は地方の問題を解決してるスタートアップにお金を出している。
まさに日本でも、地方に課題があり、先ほどの鈴木先生の「マリンIT」も東京では出来なくて、漁港があるから出来ることとして、北海道でチャレンジして大丈夫だと思います。
阿部さんのビジネスと北海道について
阿部:僕は東京にもいたので、北海道浮気組という立場にいますが(笑)。
阿部:北海道に来た理由は人材採用です。北海道のほうがトータルで見ると採用効率が良いのではないかと思った観点で北海道に来ました。結果的にはどうだったか分からないんですが、採用は上手くいっていて、優秀な人が集まっています。
ただ、もともとは札幌の優秀な人材に会えると思っていたのですが、そうではなく札幌に来たい優秀な人の受け皿になりえているのだと思いました。
北海道で働きたい、地方で働きたいけども受け皿がなくて困っているという人がいて、その受け皿になりうることで、採用活動がうまくいったと思います。
パネルディスカッションの終わりに
田中:みなさん、地元が大好き。そして北海道にはブランドがありますよね。Uターン、Iターンするにしてもすごく良い受け皿になっていると思います。そこにいい会社があることで、街の発展になり、経営者が地元でやりたいと思うことで良い人と出会えるのではないかと思いました。
取材を終えて
ライドシェア、バーチャルキャスト、飲食店の自動化、NoMaps、コワーキングスペース、インターネット関連事業……パネラーの取組はさまざまですが、共通していることは、北海道に根を張り、より良い世の中になるように活動していること。そしてそれを楽しんでいること。
北海道からどんな新しいサービスが出てくるのか。どんな新しい未来が創られるのか。より一層楽しみになるパネルディスカッションとなりました。
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