ITの力で震災を乗り越えた、はやきた子ども園

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ITの力で震災を乗り越えた、はやきた子ども園

北海道胆振東部地震で、最大震度6を記録した安平町。同町にある「はやきた子ども園」では、震災のわずか2日後から、ボランティアを受け入れていました。その際、ITの力がとても役立ったそう。

一体どのようなことなのか、はやきた子ども園・園長の井内さん(兼・安平町災害ボランティアセンター副センター長)に話を伺いました!

はやきたこども園外観

インタビュアー・取材・撮影 : 中村真紀・高橋アメリ 構成:高橋アメリ 取材日: 2018年10月11日(木)

ITの力で人手不足を解消

はやきたこども園では、地震の後すぐに園を開けられていました。

園長「親は地震の後片付けで忙しく、子供たちを構う余裕がない。子供の居場所が必要だと考え、園を開けることを決意しました。

とはいえ、スタッフもほとんどが安平町に住んでおり被災してしまったので、苫小牧など近隣に住むスタッフに出勤してもらったり、SNSで呼びかけて札幌などから来てもらいました」

SNSでは、ボランティアの申し出だけではなく、紙おむつやカップラーメンなど物資の支援などもたくさんいただき、改めてネットの力の大きさを感じた出来事となったそうです。

はやきたこども園 園長

園長の井内さん

ボランティア受け入れの際、PiPit登園システムが役に立ったといいます。

園長「とにかく人手が足りない。だから機械に任せられることは全部、機械でやってしまいたかった。そのときに、いつも園児の出欠を管理しているPiPit登園システムを使えばいいと思いついたんですよね」

pipit登園システム

PiPitとは、園児の登園管理システムのことで、園に設置されているタブレット端末をタッチすることにより、登園・降園登録をスムーズに行うことができます。

園側は、児童の出欠情報を端末で確認できるので、先生同士の情報共有や出席簿管理も手間がかからず、漏れなく行うことができます。テンプレートにより、指導要領も楽に作成できるそう。

 

PiPitボランティア受付 使用中

そんなPiPit登園システムで、ボランティアの受付や管理ができれば、受付スタッフを配置する必要がなくなるのではないかと考え、すぐにPiPitの運営会社であるビットスター株式会社に連絡。システムをボランティア受付用にし、受付人数を2,000人対応に改良してもらいました。

PiPitボランティア受付

実際にPiPitを流用したことで、ボランティア受付にかかる人数を3人から1人に減らすことができたそうです。

園長「札幌の会社なので、すぐに対応してくれたのもありがたかった

運用の流れですが、まずボランティア参加者は、事前に名前などの必要事項をサイト上で登録します。当日会場では、初回のみ本人確認が必要ですが2回目以降はタブレット端末にタッチするだけで、ボランティアへの参加が確認できます。受付の手間を省くことができ、参加者はスムーズにボランティア作業に取り掛かることができます。

運営側にとっては、データとしてクラウド上に保管されていることで、紙やペンを用意せず済みますし、タブレット端末は持ち運びがしやすく、ネット回線さえあればどこでも見ることができます。

園長「今回はならなかったけど、万が一津波などの被害が起きたら、紙はふやけてしまい文字の解読が難しくなってしまう。園では出欠以外にも、連絡事項などはメールで行い、業務管理事項などはクラウドを利用しているので、そういったところでもITは便利だと実感しました」

ブラックアウトしたけれど……!?

今回の震災では、全道的に電力がブラックアウトしましたが、タブレット端末などの機械は影響を受けなかったのでしょうか。

園長「はい。実は、いざとなった時に電力をひっぱれる装置が自然と集まっていたのです。例えば……

  • モバイルバッテリー
  • パソコンからの充電(Macが10台ほどあったそうです)
  • 電気自動車を使っていた
マグネシウム水素電池

中に水のタンクが入っており、それが電気を生み出す

そして、こちらの「マグネシウム空気電池」というものをたまたま購入していたんですよね。これらに、だいぶ助けられました。

USBを直接つなげられる

USBを直接つなげることができる

震災を乗り越えた2つのワード IT×アウトドア

園長「実は、震災があった日は、上級生が園でお泊り会をしていたんですよね。敷地内にある森で火を起こして米を炊くところから始まり、ドラム缶でお風呂に入り、寝袋でみんな寝ていた。

その時にあの揺れがきました。

はやきたこども園 馬

園で育てている馬。震災の時に逃げ出してしまったが、地域の人が戻してくれた

子供たちは、地震が来たあとは怖がって、トイレにもひとりで行けないくらいだったけど、ここに来て友達とかかわっていく中で、徐々に普段通りに戻っていきました。炊き出しや、ドラム缶のお風呂も、園でのキャンプだと思って(笑)、楽しんでいてくれたと思います。

ITの力に加え、普段から自然と関わっているということも、今回を乗り越えることができた要因の一つかもしれないですね」

対極にあるように見える、ITとアウトドアですが、両方が繋がることが今回のキーポイントだったようです。


私たちの生活に便利さをもたらしたIT。

今回、既にあった登園システムをボランティアの受付に代用したように、「今ある道具を生かして何できることはないだろうか」と発想を転換することで、新たな使い道が生まれより便利になっていくと感じました。

また、インタビューの中で、「判断と決断は全く別モノ」というお話もされていました。「判断は経験なので、経験値が上がればより適切な判断ができる。けれど、決断は勇気が必要」ということです。何かに迷ったときは参考になりそうです。

園長、ありがとうございました!

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私が書きました!

合同会社EVOLbyAmeri代表。こちらではコワーキングスペースの取材やITイベントを担当。他の媒体では観光系や女性向けライフスタイルなどで執筆しています。

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