「小型機航空機に市民権を」
こんにちは、ビットスターの石田です。
今回は、「株式会社エアシェア」代表の進藤さんにインタビュー取材をしました!
株式会社エアシェアでは、小型航空機のシェアリングという革新的なサービスを展開しています。
今回は、航空産業の常識を変えるこの事業について、詳しくお話を伺いたいと思います!
エアシェアが提供する次世代の移動手段とは?
石田:まず、エアシェアさんが取り組んでいる小型航空機のシェアリングサービスについて教えていただけますか?
進藤:飛行機を所有しているオーナーとパイロット、利用者をマッチングさせるサービス「エアシェア」を展開しています。
石田:ちょっとまだイメージが湧かないのですが、航空機を所有しているオーナーさんとはどういう方なんでしょうか?
進藤:例えば、プライベートジェットを所有している社長さんですね。年に何回かしか動かさないから別の人に貸し出して、日銭を稼いで欲しいなと考えているような人です。
石田:パイロットはどのような方なんですか?
進藤:エアラインを退職された方や、自衛隊を退官された方など、パイロットライセンスを持っているけど航空会社には所属していないような方々です。
石田:なるほど、フリーのパイロットって、なんだろう?って思ってたんですよね。
進藤:航空会社のパイロットは狭き門なので、フルライセンス揃えるのに大体2,000万円くらいかかるのですが、それでもなかなか就職することが出来ない方がたくさんいるんです。
エアシェアは、そんなパイロットが定期的に飛行し、技量を維持できるような機会を提供しています。エアシェアに登録していたパイロットで、実際に航空会社に就職した人も3名ほどいるんですよ。
石田:すごいですね!では、飛行機のオーナーと、パイロットがエアシェアに登録していて、そこに利用者さんが「こんなプランで飛びたいです」という話を持ち込んで3者をマッチングさせるようなイメージですね。
多様なニーズに応える小型機の魅力
石田:実際どのような方が利用されるのですか?
進藤:観光やビジネスでの移動に利用される方はもちろん、遊覧飛行も多いですね。遊覧飛行でも、3分で終わる遊覧飛行もあれば、90分の遊覧飛行もあります。
石田:3分で終わる遊覧飛行ってどんな感じなんですか?
進藤:上昇してぐるっと一周回って降りるだけです。とりあえず小型機に乗ってみたい!という方がよくオーダーします。
石田:あーでも乗ってみたい気持ちわかるな。ちなみに、小型機って乗り心地はいいんですか?
進藤:……。
石田:え!?なんで黙るんですか!??
進藤:乗り心地は決して良いとは言えないです(笑)。
小型機って低いところを飛ぶので、空気のうねりが大きいんですよね。
なので、よく晴れた日などは乗り心地が良くないです。晴れてると上昇気流が生まれるので。
エアラインくらいの高さになると、あまり影響受けにくいので、やっぱり比較対象がエアラインになると当然揺れますよ。
ただ、パイロットによっては揺れる空域を事前に避けたり、速度を調整して揺れを抑えるといったことも出来るので、そこはパイロットの腕の見せ所です。
石田:そんなことも出来るんですね。
進藤:直近で、名古屋から三重の方まで行かないといけないが時間がない、とのことで利用された方がいます。ヘリだと20分かからないくらいですね。
石田:少し贅沢な使い方な気がするんですけど……。
進藤:むしろ正しい使い方ですよね。
マニアな方でヘリや小型機に乗ってみたいんだ!という方もいるのですが、それだとアクティビティとして一回経験したら「もういいや」となってしまうんですよね。あくまで数ある交通手段の中の1つでしかない。タクシーや飛行機で足りないから、そこに価値を見出してくれる人が使ってくれています。
進藤:もっと変わったオーダーとしては、エアラインが飛んでいる区間で小型機を使いたいというお話もありました。最初は「いやいや、エアライン使いましょうよ。もったいないです」って僕たちから言ったんです。わざわざ高いお金を払って、定時性が保証されていない上に、旅客機に比べたら狭いわけですから。でも「なんでですか?」と聞いたら、「猫ちゃんを安全に移動させたいんだ」とおっしゃったんです。
石田:猫ちゃんですか?
進藤:そうなんです。旅客機だと貨物室に預けられるので、熱中症が心配だという理由でした。そこで、移動中に降りられる空港をちゃんと用意して、常に動物病院が近隣にあって15分以内に着陸できる空港を確保するプランを提案をしました。
石田:なるほど。そういう細かい要望にも対応できるのが強みなんですね。僕の中では、海外の富裕層のような方がリゾートに移動するのに使うイメージがあったのですが(笑)。
進藤:もちろん、富裕層の方々にも使ってもらいたいですが、もっと良い選択肢があるのであれば、それを先に提案します。
例えばその猫ちゃんのお客様にも、最初は「船ならペットと一緒に移動できる部屋がありますよ」とか「旅客機でも十分じゃないですか?」と提案しました。でも、「そうじゃないんだ」とおっしゃったんです。
結局、最終的には小型機を提案することになったんですけど、それもお客様にとって猫ちゃんの安全が第一だったからです。僕自身にはない価値観でしたが、それに応えるのが僕たちの仕事です。
石田:愛を感じるエピソードですね。
進藤:そうですね。小型機はさまざまな用途に使えるんですが、その「さまざま」というのがあまりに広すぎて、逆にお客様にとっては「さまざまって何だろう?」ってなってしまうことがあります。たとえば、「宇宙遊泳したらいろんなことができますよ」って言われても、何をどうしたらいいかわからないじゃないですか。だから、僕たちもお客様に対して「さまざまな使い方」をもっと具体的に提案しないといけないと思っています。
石田: 僕も実際、小型機に乗ったことがないので、どれくらい費用がかかるのかとか、普通の飛行機とどう違うのか、あまり想像がつきません。そういうところを具体的に提案していただけるのは、とてもありがたいと思います。
石田:この飛行機のシェアリング事業では、どういった需要に応えようと考えていますか?
進藤:小型航空機の長所は、インフラが必要ないというところです。
「いや、空港必要だろ」って思われるかもしれないですが、実はそんなことないんです。いわゆる小型機と呼ばれるものは、舗装路面じゃなくても、例えば芝生から芝生へ離着陸できるような性能も持っているんですね。
なので、インフラが設備されていないんだけども、早く移動しなきゃいけない時、なんかは最適だと思います。例えば東京から伊勢志摩に行くのには何が1番早いかって考えた時に、 エアラインは飛んでないので、結局ヘリが1番速くなっちゃったりするんですよね。日本は島国で、半島もいっぱいあるので、そういったところに行くのに小型機は非常に有利です。
石田:では移動の小回りみたいなところが強みになるのですかね。
進藤:そうですね。なので私は1.5次交通っていう風によく表現します。エアラインが飛んでるところはエアラインで移動して、そこからもうちょっと足を伸ばしたい時は小型機使って、その先はタクシー使えば良い、みたいな。1次にはなり得ないけども、2次をさらに快適に使うための1.5次交通ですね。
「市民権」を得るための挑戦
石田: どうしてこのような事業を始めようと思ったのでしょうか?
進藤:エアシェアは「小型航空機に市民権を」という思いから始まりました。先進国で航空がこれほど発展していない国は日本くらいなんです。アメリカやヨーロッパは世界の航空法を作る航空大国ですが、日本では小型機の飛行があまり歓迎されていません。航空局は「飛ばなければ事故は起こらない」というスタンスなんです。官が動かないなら民から変えていくしかない、ということでこの事業を始めました。
石田:なるほど、確かに僕も小型飛行機の実物を見たことはないのですが、他国と比べるとやっぱり少ないんですね。
進藤:海外では現役の小型機が何万機もありますが、日本では現在飛べる機体は約250機程度です。
石田:比較するとすごく少なく感じます。実際のところ、小型航空機の事故率は高いのでしょうか?
進藤:いえ、決して高くはないと思います。自動車事故なんかに比べて珍しくてニュースバリューがあるから取り上げられやすい。というだけの話だと思います。
ただやっぱり、「進藤さん、この飛行機落ちないんですか?」とよく言われます。
それに対する回答は、「落ちないわけないじゃないですか」です。
事故は必ず起こるものとして、じゃあどうやったら事故率を 0に近づけられるのか、もし起こってしまった時にはどうするのかということを事前に考えておく。落ちないわけがないという思想じゃないと安全は確保できません。なので、パイロットの方との面談や、保険の整備など、安全に対する仕組みづくりは徹底しています。
石田:今後この事業をこうしていきたい、みたいな構想はありますか?
進藤:この事業は爆発的に跳ねることはないと思ってます。とはいえ、参加者が増えてきてるのは確かです。従来、エアシェアみたいに小型航空機でお金を稼ぐっていうのは、みんながやりたいと考えていた、けど実現できないことだと思われていたんです。
航空機を貸し出すのはもちろん個人の資産としてできますし、プロのパイロットもこの条件だったらお金もらっていいよっていうのがちゃんと航空法に明記されています。ただ、それを知らずに違法な行為をしてしまう人も少なくありません。だからこそエアシェアに登録してもらえればダメな部分は全部システム的に排除して、誰でも安心して利用できるようにしています。
今後は、フライト件数や登録数をどんどん増やしていって、最終ゴールは市民権を得るといったところですね。
石田:ありがとうございます!御社では、航空機だけでなく自動車のマッチングサービスもこれからローンチされるそうですね。そちらのお話もお伺い出来ますでしょうか。
進藤:はい、来年の1,2月から「DRIVA」というサービスを開始する予定です。
陸上でも交通の新たな選択肢を提供
進藤:「エアシェア」で航空機のマッチングを実現したときに、同じ建付けでどんな乗り物でもビジネスが出来るということには気づいていたのですが、私はあまり車に興味がなかったので正直乗り気じゃなかったんです。でもコロナ禍で航空機の需要が下がって「やばい、死にそうだ」となりコンテンツを増やしました(笑)。
石田:事業の内容としてはエアシェアと同じように、車のオーナーと運転手、利用者の3者をマッチングさせるということですよね。僕が所有している車でも登録できるのでしょうか?
進藤:システム的にはできるんですけど、サービスローンチ時点では、それは 1回排除しておく想定です。やっぱり走り出しは安心感が大切なので、レンタカー会社として法人登録している業者さん等に登録していただく予定です。
また、ドライバーを取りまとめる法人さんにも、間に入っていただきます。そうすると、ドライバーが「お腹痛いので休みます」ってなってもバックアップ体制が取れますしね。
石田:ニセコで実証実験を行ったそうですが、結果はいかがでしたか?
進藤:ニセコは極端に車の数が足りてない地域なので、タクシーの 2.5倍ぐらいの料金設定で始めたんですよ。それでもすぐに予約が埋まりました。そして、やっぱりいろんな課題も見つかったので、実証実験としてもビジネスとしても満足な結果を得られました。
石田:それだけ需要があるってことですもんね。1,2月以降は、ニセコエリアに限定してやっていくのでしょうか?
進藤:エリアを固定するつもりはありません。僕らのサービスは、車のオーナーと運転手の間で自由に料金を決められる仕組みになっています。つまり、儲かるところでは高めに値付けしていいし、逆に利益を求めずにボランティアでやりたいという人がいれば、それも自由です。
石田:ライドシェアだと、儲からないエリアからすぐにドライバーが撤退してしまいインフラとして機能しなくなる問題があるかと思いますが、この点についてはどうお考えですか?
進藤:ドライバではフランチャイジーが自分たちで料金設定をするので、そのような問題は起きにくいです。もともと儲からないエリアでやる人は、そのリスクを理解した上でやっているので、ライドシェアとは違います。ライドシェアだと「ちょっとこの街に行ってみよう」と気軽に参入することが多いですが、ドライバではそうはならないはずです。
また、僕らはタクシーと競合するわけではなく、むしろ反対側に位置するサービスです。タクシーがいる場所でやってもメリットはありませんし、むしろ、タクシーが足りない場所であれば、ニセコのように多少高額でも利用者は絶えないと思います。タクシーが最初に埋まってしまって、残ったお客さんがドライバを使う、そういう形で良いと思います。
石田:今後、ニセコ以外のどのエリアで展開していくかは決まってるんですか?
進藤:ニセコの他には、新潟エリア、十勝管内でも話が進んでいます。あと富良野は、第2のニセコを目指して町おこしが進んでいるので、ここもいいかなと。あとは、箱根や日光もタクシーが足りていないので、ぜひ導入を進めたいですね。
石田:いきなり全国で展開していくのですか?
進藤:そうですね。今年の1,2月から全国でやれるようにします。ただ、地域パートナーさんがいないと進められない地域もあります。なので「地域パートナーさんを募集しています。」と強く記事に書いていただけると。
石田:わかりました!
全国展開を加速する、地域パートナー大募集!!
石田:では、地域パートナーについてもう少し詳しく教えてもらえますか?
進藤:地域パートナーは、どんな仕事をしている人でも構いません。例えば、駄菓子屋さんでも全然大丈夫。ただ、その地域をよく知っている方に、サービス運営をお手伝いしていただきたいです。地元のレンタカー会社を知っているとか、ドライバーをどう確保・統括するか検討がつく人が理想です。新聞の販売店さんなんかいいんじゃないかなと考えています。
それと、地域ごとの広報活動も担当していただきたいです。マクロ的な広報は我々がやりますが、例えば役場に行ってチラシを配ってもらうとか、地元での細かい動きは地域パートナーにお任せしたいですね。
そういう形で、地域のドライバーやレンタカー会社をまとめる役割を担ってくれるパートナーさんを大募集しています。
石田:この記事を読んでいる方で、地域パートナーに興味がある方はぜひ進藤さんにご連絡をお願いします!
石田:最後に、あえて雑なフリをしますが、何か言いたいことはありますか?
進藤:そうですね、どのサービスにしても、「安全」という切り口で考えると、僕は「絶対安全」と言えるものは何一つないと思っています。だからこそ、いろいろ開発を進めているわけです。
「エアシェア」も「ドライバ」もまだまだこれからのサービスですから、僕らも想定していなかった質問が飛んでくることがよくあります。このサービスに関して、この記事を読んでもわからないことがたくさんあると思います。もしこの記事を読んで「100%わかった」と言われたら、もうそれをマニュアルにして配ろうと思うくらいです(笑)。
なので、もしわからないことがあれば、どんな小さなことでも気軽に質問してもらいたいです。僕らにとっては、それが非常に重要な質問だったりするので。
僕らも、まだ日本でほぼ初めてのサービスを提供しているので、日々勉強中です。安全について考えると、心理的な安全性もあれば、物理的な安全性もあります。いろいろな側面から、安全を追求していきたいですね。
石田:進藤さん、ありがとうございました!
株式会社AIR SHARE 会社情報
- 代表者:進藤 寛也
- 所在地:〒802-2462 北海道帯広市西22条北1丁目5番5号
- 設立:2016年12月21日
- 事業内容:小型航空機のシェアリングサービス「エアシェア」
自動車のシェアリングサービス「DRIVA」 - 公式ウェブサイト:https://airshare.co.jp/
- X(旧:Twitter):https://x.com/airshare_inc
- Facebook :https://www.facebook.com/airshare.jp/
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