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【連載】<第二回目>雪は再生エネルギーの時代へ!雪屋媚山商店に行ってきた!

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こんにちは、企画・編集の広中です。

美唄市の特集、第2回目は【雪】を利用した様々な事業に取り組む「株式会社 雪屋媚山商店」をご紹介します!

インタビュアー:中村真紀 / 構成・撮影:広中裕士 / 取材日:2017年8月18日

株式会社雪屋媚山商店の外観

株式会社雪屋媚山商店は、美唄市に本社があります。

前回、美唄市の「ホワイトデータセンター構想」についてお話をしましたが、その中心人物である媚山政良教授のお弟子さんが起こしたのが、日本で唯一、雪冷房を専門とした企業「株式会社 雪屋媚山商店」です。

主な事業内容は、雪冷房、イベント支援、フィルター洗浄・リユース、ホワイトデータセンター構想、雪の高付加価値化となりますが、メインで行っているのは雪冷房となります。

今回はそんな雪冷房について、代表取締役である、本間 弘達さんにお話を伺いました。

新千歳空港の雪冷房導入にも携わった本間さん

雪屋媚山商店の代表取締役である本間弘達さん

ーー雪冷房を利用するお客様はどのようなお客様が多いのでしょうか?

本間:東京本社の企業さんや官庁系が多いですね。なので、東京のお客様と雪冷房について話すと「イメージがあまり湧かない」ということが多く、なかなか話が進まないということがあります(笑)

私が担当したところで、比較的みなさんに身近な大きいところですと、新千歳空港が雪冷房を導入しています。国内線・国際線を含めたすべての空調を管理しているビル3階相当の大きさの機械室で雪を保存・管理しており、空港全体の冷熱エネルギーの1/5を雪冷房で行っています。

これを導入することとなったきっかけなのですが、元々は駐機場に「解氷剤」という飛行機の羽についた雪を解かすものをまいていたんですね。でも、この解氷剤は自然環境によくない影響が出てしまうし、そのまま垂れ流しになると、滑走路のすぐ下を流れている美々川に混入してしまう。そうするとラムサール条約で有名な「ウトナイ湖」に流れてしまうため、当時は多くの苦情がでていたんですね。

なので、「垂れ流しにもできないのであればあえて雪をとっておきましょう。」という考えから、委員会が発足し、そこから集めた雪を貯めておく2haの水槽を作りました。そして、雪を一冬分積むのであれば、どうせだったら冷房もしてしまおうということになり、ゆっくりと水質を管理しながら同時に排水を管理していくシステムを作りました。私は委員会発足の頃から参入し、基礎設計に携わりましたね。

ーー色々な方を巻き込んだ大きな計画だったのですね。では、雪冷房のメリットはなんでしょうか?

本間:1つは省エネになるというところですね。通常の電気を使った冷房に比べると電気料金は1/10~1/20になります。ただし、最初の導入コストはどうしてもかかってしまいます。

従来の雪冷房ですと、断熱した倉庫に雪を入れて取っておくのですが、この方式で保存を行うと国より補助金が出ます。雪冷房は太陽光等と横並びで「新エネルギー法」に含まれるので、年間で1/3、行政だと2/3ほど補助金がもらえ、これをもらうことにより収支がトントン、もらわないと雪冷房のほうが高いというくらいになります。

ただ、あまりにも導入コストがかかってしまうことから、最近は、外にただ雪を積んでおいて、断熱材代わりにチップやもみがらを積んでおき保存するという雪山方式という方法があります。これなら費用もすごく安いんですね。補助金もらわなくても安く済ませることができます。

雪冷房は個人宅・その他でも導入できるの?

個人宅導入について

ーー導入コストがとてもかかるとのことでしたが、個人宅でやられている方はいるのでしょうか?

本間:日本では約4軒ほどですね。でもそれは、趣味で入れてくださっている方だと思います(笑)1軒家でやるとしたら300万円くらいかかってしまいますからね。

関係のない話なのですが、雪冷房について私が売り込みをしていると、「お前の家入れてないだろ!自分で入れてないのに人に勧めるな!」と怒られてしまいます(笑)確かにそうなのですが、300万ですからやはり入れるのは悩みますよね。なので、現実的にデータセンターなど大きな電力を用いる施設がこの雪冷房のメインターゲットとなってきます。

ーー札幌の施設でも利用はされているのでしょうか?

本間:はい、動物園や斎場ですね。モエレ沼公園のガラスのピラミッドも実は雪冷房を導入しています。あとは札幌駅北口の融雪槽。あれは地下鉄の排熱を使って溶かしているのですが、実は最後の1回分は溶かさないで取っておき、JRタワーとかの冷房として利用されているんですね。

ーー意外と身近なところで利用されていました!では全国ではどうなのでしょうか?

本間:経済産業省の発表だと144箇所とされています。しかし、実際は補助金などもらわずに、自分自身で作成してしまう方も中にはいるため、300箇所を超えていると思っています。雪が降って夏が暑いところが適地なので、新潟などは最適かと思いますね。世界を見たときにこういった気候の国はほとんどないので、海外での導入は今のところほとんどありません。

ーーHPには取引先にサハリン(ロシア)とありましたがサハリン州とは取引があるのでしょうか?

本間:北海道とロシアのサハリン州は隣接しているので、政治的な問題は置いといて「経済交流しましょう」と両知事が経済協定結んだんですね。その中で「北海道の技術を使ってサハリンの農業を支援します!例えば雪冷房とかで!」という話になりました。

そういった流れでロシアからの依頼があり、ソフホーズにある国営農場に雪冷房を導入しました。そして次にデパート、今後はこれから建て替えを行うサハリン空港への導入を予定しています。

向こうの人が英語圏ではないのが難点ですね。町の看板とかを見てもロシア語なので全く読めず苦労します(笑)

気になる普段のお仕事は・・・?

ーーあちこち飛び回りハードですね・・・。日常業務ではどのようなことをされているのですか?

本間:普通に設計ですね。どこかの工場の雪冷房の設計などを行っています。設計ができる社員は自分以外に現在1人なので、結構ハードに動いています。

ーーHPの社員紹介のページに記載があった雪山職人とはなんでしょうか?

本間:平成9年から、美唄に美唄自然エネルギー研究会(会長:本間さん)という研究会があって、そこで認定証を発行しています。設立当初から媚山先生が室蘭から毎月通っていて、自分もそこで育てていただいたんですけど、そこの研究会で発行している任意資格となります。雪山を毎年研究会で作っていて、その実務作業と座学に参加すること、そこで参加した際にもらうスタンプを溜めることで、認定証と雪山職人っていうバッチがもらえるんです。

再生エネルギーである雪の様々な用途と可能性

雪を利用した様々な事業について

ーー雪冷熱を利用した加工食品にはどんなものがありますか?

本間:干し芋や、お酒、乾燥アワビといったものがあります。弊社が入っている建物はホワイトラボといい、スノーフード研究会が運営しています。そこで雪による乾燥品をメインで作っているんですけれど、この横に雪冷蔵庫があるんですよ。

そこに貯蔵しておいたものを、乾燥機で乾燥させて、例えば干し芋を作る。干し芋も、ただドライヤー乾燥みたいにさせるのではなく、雪を使って低温で乾燥しているので、非常に食味が良い状態の乾燥ができるんですね。

干し芋の作成工程

干し芋の作成工程

販売している干し芋

販売している干し芋

データセンターの排熱を利用しながら植物工場とかアワビの養殖とか、そうゆう軽作業農水産業を始めました。高齢化していって担い手さんがなかなかいない中で、でもそうゆう農業経験がある人は、その経験を活かしたいと思うじゃないですか。

そうゆう人たちが作業をできるところを作ってあげたい。という思いから始めたんです。同時に、内陸でアワビを買ったら話題にもなるじゃないですか。「雪アワビ」とかって名前にして出したらおもしろいですよね。昨今は安心安全のほかに、ストーリーが求められている時代なので(笑)

アワビの養殖については評判がかなりよく、視察に来る団体さんや企業は年間600件ほどにもなりますよ。それだけ面白く、興味を持ってもらっているんですね!

ーー雪冷熱利用の可能性はまだまだありそうですね!インタビューありがとうございました!

いざ、雪冷房を体験!

このインタビューのあと、雪屋媚山商店さんで行っている雪冷房を利用した施設を見せてもらいました!ここではいくつかをピックアップしてご紹介します。

オフィスの裏手に回ると倉庫がありました

本間さんに案内していただき、オフィスの裏手に回ると倉庫がありました。

倉庫のシャッターを開けると・・・

倉庫のシャッターを開けると・・・

中には昨年の冬に貯蔵した雪が!

なんと中には昨年の冬に貯蔵した雪が!

周りの泥などは、各地で除雪され、集められた雪だからなのだそう。道民からすると邪魔になることの多い雪ですが、こういった利用方法もあるんですね。

さらに反対側に回って、雪冷房で実際に冷やしているものを見せてもらいました。

冷房室内

倉庫に入り、正面に見える柵の向こうにあるのが先ほどの積載した雪です。ここから雪の冷気を直接流します。

お酒

保存されていたものには、お酒や・・・

人参

ニンジン・・・

ごぼう

ごぼうなどがありました!

取材をした日はたまたまタイミングが悪く、保存していたものを出してしまった後だったそう。収穫シーズン以降は、この倉庫がいっぱいになるそうです!

ホワイトデータセンター構想のサンプル施設も見ることができました

ホワイトデータセンター構想の一旦として、見学可能なサーバー室があるとのことだったのでそちらも見せてもらうことに。

サーバー室

サーバー室を開けると・・・

サーバーがびっしり!

サーバーがびっしり!

先ほどの雪冷房を利用して、サーバー室の空調を管理しているそうです。さらにこのサーバー室からの排熱を利用したビニールハウス施設もあるとのことで行ってみました。

すぐ隣のビニールハウスへ

すぐ隣のビニールハウスへ

中には複雑な設計の水槽

中には複雑な設計の水槽が・・・。

本間さんがおもむろに水槽に手を入れる

本間さんがおもむろに水槽に手を入れると、出てきたのは大量のアワビ!

「すごい、たくさんいる!」「アワビって結構すばやく動くんですね!」と一通り盛り上がりました。

想像よりもすばやいアワビ

アワビは結構すばやく動きます

サーバーからの排熱を利用し、微妙な水質管理をすることでアワビの養殖を行っているとのこと。ここにいるのはまだまだ子どもなのでこれからが楽しみとのことでした。

まとめ

美唄市にある株式会社 雪屋媚山商店さんは、北海道では棄ててしまう【雪】を再生エネルギーとして様々なことに利用するエコロジーな企業でした。

雪冷熱を利用した事業は今後さらに展開していくことが期待されますね!キタゴエでは引き続き美唄市の動きについて追っていきます。

次回は、実際に雪冷熱を利用した施設であるケアハウスハーモニーさんをご紹介しますので、乞うご期待ください!

株式会社 雪屋媚山商店
〒079-0261 北海道美唄市茶志内町3区 ホワイト・ラボ内

43.393510, 141.871157

この記事を書いた人

広中 裕士
広中 裕士
キタゴエを運営するビットスター株式会社所属。企画・編集を担当する広中です。北海道のIT情報とキタゴエユーザーとの接点を探して、北海道内を走り回ります。おもしろいネタ大募集!どこへでも伺いますので、どんなお話でもお聞かせください!
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