北海道釧路市在住のフリーライター こちゆうです。今回取材させていただいたのは、2013年にリモートワーカーとして釧路に移住された株式会社RHEMS Japan(レイムスジャパン)の遠藤 五月男(さつお)さん。
前編ではリモートワークするための心掛けや働き方に対する思い、後編では現在の働き方や釧路のITの現状に対する思いなどについてお話を伺いました。
取材・撮影:こちゆう 取材日 : 2018年6月23日
株式会社RHEMS Japanと遠藤五月男さんについて
遠藤さんが所属する株式会社RHEMS Japanは、ITインフラストラクチャのコンサルから構築・運用までをワンストップで提供している企業です。特にゲームなどの高負荷インフラの提供が多く、メーカーとゼロから作り込むこともあるのだとか。よく知られているあんなゲームやこんなゲームも、実はRHEMS Japanのインフラに支えられているそうです。
遠藤さんは2009年の設立から関わっているコアメンバーの一人。もともとは本社のある東京で暮らしていましたが、ある出来事をきっかけにリモートワーカーとして釧路で働くことを決めたそうです。
釧路でリモートワークをしようと思ったきっかけを教えてください。
遠藤:大きな理由は東日本大震災でした。福島第二原発の事故を受け、原発から離れた場所で暮らしたいと思ったんです。
日本地図を引っ張り出して、各地の原発を中心に半径200kmの円を描いたら、自然と道東しか残らなくて。道東には釧路以外にも北見や網走など大きな都市がありますが、私の出身が釧路だったこともあり、馴染みのある釧路に移住することを決めました。
釧路でリモートワークを始めてみた感想は?
遠藤:「釧路だから」ということで、リモートワークに困ることはないですね。必要なものは釧路で十分揃いますし、釧路に売ってないものでも通販を使えば問題はありません。回線の速度も十分速いので、釧路という場所の問題で仕事に支障が出ることはないですね。
では釧路はリモートワークしやすい?
遠藤:そうですね…ひとつ挙げるとすれば、自分の職業を周りの方に理解してもらいづらい…というところでしょうか。これは釧路だけの問題ではありませんが、「ITインフラをやってます」というと、だいたい「パソコンを直す人?」とか「水道屋さん?」とか言われることが多いですね。ただ、それが生活や業務に支障をきたすことはないです。
リモートワークのメリットは何だと思いますか?
遠藤:それぞれの事情や生き方に合わせた場所で働けることでしょうか。私の場合は上記の理由で、望んだ場所で同じメンバーと同じ仕事をすることができた。結果的に子どもの保育園が家からすぐの場所にあったので、最近までは送り迎えもできていました。
それぞれがプライベートと仕事のバランスを考えて仕事をするということは、弊社で大切にしてきたことなので、それを叶える方法のひとつがリモートワークではないかと思います。
円滑にリモートワークするためのコツ
設立からしばらくは、リモートワーカーばかりの会社だったRHEMS Japan。企業としての経験、そしてご本人の経験から、リモートワークを円滑に進めるためのツールやコツについて伺いました。
打ち合わせする際はどんなツールを使っているのですか?
遠藤:弊社ではSlack(スラック)というビジネスチャットをメインに使用していて、社内の打ち合わせだけでなく、お客様とのやりとり、あとトラブルの際の対応なども、ここでできるようにしています。一対一ならSlackで十分ですね。複数人でのチャットも履歴が残るので使いやすいです。
トラブル対応というと?
遠藤:私たちはサーバーを提供していますが、まさにインフラとなる部分ですので、トラブルにはいち早く対応しなければなりません。そのためお客様のサーバーでトラブルが起きたら、そこからSlackにアラートが飛ぶようにしています。
具体的には警報が鳴るよう設定しているのですが、Slack内でそれを止めることも可能です。こんなふうに、Slackはほかのツールと連携させやすいですし、APIが公開されていたりするので、メンバー同士が離れていても色々と使いやすいんですよ。
ではリモートワークする上で心掛けていることはありましたか?
遠藤:チャットだけだと相手の温度感がなかなかつかみにくいんですよね。これはリモートワークを通して感じたことです。文字だけだと、相手の感情ってなかなか把握できないんです。でも弊社の場合、お客様とのやりとりもSlackで行っているので、場合によっては、面識のないお客様とチャットで急にお話することも。
そのため私は「相手の温度がわからない状況である」ということを認識し、温度差を縮めるために相手の話をよく聞くようにしました。あと、今までのチャットのやり取りやメールの内容を見返して、相手のイメージをしっかり作った上で対応することも、心掛けていることのひとつですね。
チャット内の私宛のメッセージ以外にも目を通して、何に対して怒っていたのか、どういう話をしていて、どんな反応をしたのか…。そういったことをチェックするようにしていました。そのあたりは対話で話すときよりもシビアに考えていましたね。
そういう意味では、文字だけで相手のイメージをどれだけ作れるかというのは、リモートワークする上でとても大切な能力だと思います。その点チャットだと、後からやり取りを見返せるので、お客様をイメージするための要素がたくさんある。それも良い点だと思います。
リモートワークの問題点とこれから
リモートワークのために、会社として、また個人としてさまざまな工夫をしてこられた遠藤さん。一方で、リモートワークの問題点も感じていらっしゃるそうです。
リモートワークをしていて困ったことはありましたか?
遠藤:例えば大人数でビデオチャットしようとすると、誰が何を話しているのかが分かりにくいというのはあります。これはSlackに限らず、遠隔地同士で打ち合わせする際のデメリットですが、それなら近い人同士で集まってつなげたほうがいいという話になる。
実際、弊社はもともとリモートワーカーばかりの会社でしたが、ジョインする人数が増えるに従って、「近くにいるなら集まったほうが早い」という話になり、今はコアメンバーそれぞれが拠点にしている場所にオフィスを構えるようになりました。上記の理由ではありませんが、私も2018年から釧路市にオフィスを構えているので、実質リモートワークではなくなりました(理由は後半でご紹介します)。
これは私たちの業種の特性もあると思います。弊社はゲームのインフラ構築を任せていただくことが多いですが、一から作るとなると、議論しながら作業する必要がある。
でも一人ひとりがビデオチャットだとなかなか難しいこともありますし、そもそもリモートワーカーばかりだと、まず時間を合わすところから始めないといけないので、それも面倒なんですよね。その点オフィスがあれば、だいたいみんな出てきているので、すぐにスムーズに話ができます。
では今後は貴社からリモートワーカーはいなくなる…?
遠藤:結果的に今はほぼいませんが、それは一時的なものだと思っています。いつかはまた自然な形でリモートワーカーが生まれるかもしれません。
私たちが以前リモートワークをしていたのは、それが必要だったから。「リモートワークやろう!」といって始めたのではなく、自分たちの生き方ややりたいことを加味した結果、リモートワークがいいんじゃないかいうことで、自然にそういう形になりました。
でも今は事業拡大に伴って働き方を考えた結果、自然とオフィスが必要になったという状況です。リモートワークを禁止した覚えはないんですが、なぜか自然とみんなオフィスに出てきちゃったんですよね。
ですので、今後もリモートワークしたい人を止めることはないと思いますし、オフィスでの働き方に不自由さを感じたら自由になってもらいたい。それを選ぶのは個人の自由だと思っています。
2018年から始まった遠藤五月男さんの新たな挑戦とは?
遠藤さん自身も、2018年4月から釧路市内に技術支援のためのオフィス「RHEMS技術研究室」を構えるようになりました。ただ、それは「集まったほうが仕事がしやすい」以上に、会社や釧路の将来を考えたからこその決断でした。
なぜオフィスを構えたのか?なぜR&D部門だけなのか。遠藤さんの想いは後半でご紹介します。
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