2018年4月28日(土)、29日(日)の2日間に渡って、釧路で行われた「道東×IoTハッカソン2018 IoTで観光課題を解決する!」。今回はプレゼンタイムの様子をご紹介します。接戦の末、優勝したのは、人との触れ合いを大切にしたアイデアでした!
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取材・撮影 : こちゆう 取材日: 2018年4月29日(日)
どんなサービスが登場する?プレゼンタイム開始
ここからは全8チームそれぞれのプレゼンの概要をご紹介します。発表時間は10分。審査員は主催者の八子氏と協賛企業から5名、そして釧路市役所から1名の計6名となっています。サービスにkintoneやAWS、ソラコムのシステムを使った場合は加点されます。
ゆるキャラハイタッチ
釧路に住む人たちからの情報発信の少なさを課題に挙げたチーム1。ターゲットをママ層に絞り、飲食店やイベントに設置された「ゆるキャラボット」へハイタッチすることで、ママに優しい店舗の情報を発信するシステムを開発しました。
一定期間数に何度もハイタッチされた場合などは、位置情報がSNSに投稿されるようにボット化されているため、自然に情報を発信できるという仕組みです。
「VR×IoT」による釧路湿原カヌー体験魅力度向上
チーム2は釧路市民アンケートで、「釧路に来たらやりたいこと」の1位がカヌーだったことに着目。カヌーに通知ボタンを設置し、魅力的なポイントをほかの観光客、そして釧路でカヌーをしたいと思っている見込み客と共有できるサービスを開発しました。
またカヌーの様子をVR動画に収め、釧路でカヌーをしたいと思っている見込み客に疑似体験してもらうことで、気持ちを後押しするというアイデアも。季節や期間別にVR動画を撮影し、さまざまな釧路湿原の風景を楽しんでもらうとともにおすすめポイントを共有し、さらに需要を後押しします。
釧路観光予報
釧路市は広くて移動時間がかかります。また苦労して足を運んでも、天気に恵まれないことも。こうした課題を解決するためにチーム3が開発したのは、ベストな観光タイミングが分かるアプリです。
観光地にいいねボタンを設置し、押された状況を解析し、ベストな時間帯や天気、気温などを判断・発信できます。また近くでベストタイミングを迎える観光地の情報やルート情報の提供も可能です。
IoT×Instagram 旅フォト・釧路観光情報サイト
チーム4は素敵な写真を撮るために観光地を訪れる人たちをターゲットに、インスタ映えスポットのリコメンド機能がある観光情報サイトを打ち出しました。kintoneを使ってベストな状態の温度・湿度・照度を設定。各観光地のデバイスから送られてくる情報と照らし合わせた上で、観光地が「インスタ映えするタイミングかどうか」をサイトに表示します。観光客は「今の情報」をサイトで知ることができるので、足を運びやすくなります。
CoMeTuRu946(かむつるー946)
チーム4は開店時間にもかかわらず、客が来ないために店を閉めている飲食店が多いことに着目。扉の開閉頻度や室内温度などから、営業状況をリアルタイムで知ることができる情報サイトを作成しました。
また釧路の観光資源のひとつであるタンチョウがどこにいるかを知ることができるシステムも導入。観光客にタンチョウの居場所を知らせることができるだけでなく、酪農動物がタンチョウに驚いてケガをするといった被害を減らすためにも活用できます。
kirica(キリカ)
チーム6はkirika(キリカ)という、デポジット形式のICカードを活用した観光の活性化を提案しました。観光地に置かれたリーダーにkirikaをかざせばポイントがゲットできます。貯めたポイントは釧路の特産品などと交換可能。また、その場所で一時的に使えるWi-Fiのパスワードも表示されるため、利用者は観光地で撮影した写真をすぐにSNSなどにあげることができます。
鹿×観光 〜 釧路の新たなデートスポットを求めて 〜 DEERMINATION
フィールドワークで課題として挙げられていた「鹿によるチューリップの食害」対策とともに、新たな観光資源、そしてデートスポットもIoTで創出しようという発想から生まれたのが、チーム7のDEERMINATIONというシステムです。
チューリップの防護柵にイルミネーションを取り付けておき、鹿が接触するとイルミネーションが光るというもの。光で鹿を威嚇できると同時に、イルミネーションとしても活用することで、新たなデートスポットを創出します。すでに京都で鹿よけのイルミネーションが話題になっている事例があるそうで、デートスポット創出というのも狙えるのでは、という内容でした。
夕日ミエール
観光のコンテンツ強化を目的にしたもので、夕日のベストスポットやベストタイムをユーザーに通知するシステムです。観光客に美しい夕日を見てもらえる仕組みを作ることで、観光客数増加やリピーター獲得を狙います。また釧路の店舗とタイアップし、夕日の写真を見せたら割引が受けられるなどのサービスも視野に入れているとのこと。
結果発表!果たして結果は…?
審査員の話し合いの結果、あらかじめ用意されていたkintone賞と上位2つの賞に加え、「和商セット賞」と「瀬川食品賞」のふたつの賞が追加されることに!素晴らしいアイデアがたくさん出たため、急遽、賞を増やすことにしたのだそうです。
各受賞者は以下の通り。いずれも素晴らしいアイデアでした!
kintone賞 釧路観光予報(チーム3)
和商セット賞 IoT×Instagram 旅フォト・釧路観光情報サイト(チーム4)
瀬川食品賞 夕日ミエール(チーム8)
2位 鹿×観光 〜 釧路の新たなデートスポットを求めて 〜 DEERMINATION(チーム7)
優勝 ゆるキャラハイタッチ(チーム1)
得点を見てみると…驚きの大接戦!上位3チームは1点差しかありませんでした!
総評 次回に想いをつないで
最後に審査員、そして主催者の四宮琴絵氏からの総評を一部抜粋してご紹介します。
釧路のいちユーザーとして審査(釧路市役所 長山道憲氏)
長山:2位の鹿チームのアイデアは抜群におもしろかったです。ただ、釧路市内にはそれほど日常に鹿がいるわけではないんですよね(笑)。また、釧路市民としてほしいと思ったのはチーム5。あのデータがあれば『市民が欲しい情報=観光客が欲しい情報』になると思います。
課題解決に意欲的な風土ができることが重要(四宮靖隆氏)
四宮:IoTはあくまでツールであって、課題に対する100%の解決策になるわけではありません。しかし、IoTを通して『こういうものがあれば解決できるんだ』という意識を持っていただくこと、また解決策に対して意欲的になる風土が生まれることが重要なのではと、前回11月のアイデアソン、そして今回のハッカソンに参加して感じました。
IoTが空気を吸うように自然に使える技術になれば(松下享平氏)
松下:今回の皆さんが作られたものは、現場で起こっていることをデジタル化することで、遠くの人や地域の人にモノを伝えるという活用アイデアが多かったと思いました。こうした体験を通してIoTをより身近に感じていただいて、空気を吸うように使ってもらえる技術になればうれしいです。
通信のところを非常にうまく使っていただいたので、チーム1にはソラコムポイントを入れています。セルラーの通信をうまく使い、通信を用意すべきかどうかを考えなくていい場所にタッチのデバイスを置けるという着眼点が素晴らしいなと思いました。
限られた期間で動くものを作ることが大切(小梁川貴史氏)
小梁川:技術的に見ると、1位と2位のチームは限られた時間でデモを作り上げたという意味で、他のチームよりも評価が頭一つ違ったかなと思います。惜しかったのはデモが動かなかったところ。ハッカソンなので、アイデアがどんなに面白くても動くものを作ることが重要だと思っています。目的は『与えられた期間でものを動かすこと』。開発するときにもプライオリティコントロールを考える上でどうしていくかということを意識したほうがよかったかもしれません。
ハッカソンのアイデアを実装することが大切(釧路ITクラスター推進協会 中島秀幸氏)
中島:釧路の人口は現在17万人ほどですが、2040年位には10万人ほどしかいなくなってしまいます。黙ってその時を迎えるのか、今できることを頑張って将来に備えるのか、今この地域で頑張っている私たちができることを、失敗してもいいのでやってみようという意気込みで、今回実行委員の地元の皆さんは動いてきました。これだけ多くの方にご参加・ご支援・ご協力いただき、盛大に第一回目が終えられたことに、感謝の一言しかありません。
私が現役でITクラスター推進協会に在籍している間はもちろん、仮に引退したとしても続けてもらい、皆さんが考えてくださったアイデアを実装すること、そしてこの地域で活用することが大切だと思っています。
ここからがスタート(八子知礼氏)
八子:初日にこの場所に集まった時点では、『釧路の課題はいっぱいあるけれど、どんなサービスを作ればいいのかわからない』という状況だったと思います。でも議論し、1日半ほどの間で作ったアイデアや共有できた課題によって、釧路や北海道にいるからこそ分からなかった魅力を発見できたのではないでしょうか。
ただ、これは終わりではなくスタート。ぜひとも釧路市には予算を割いて地域の課題を実装することを推進いただきたいし、住人の方には新しいサービスを作っていくことにトライしてほしいと思います。
垣根を超えて取り組む姿に喜び(四宮琴絵氏)
四宮:個人的にははじめてのハッカソンということで、運営面では当日学ぶことがたくさんあり、皆様にはご不便をおかけしたと思います。反省点も多々ありますが、社会人も学生も関係なく、みなさんが2日間チームになって役割分担を決めて取り組んでいる姿を見て『釧路でやってよかったな』と感じています。
ハッカソンを終えて
ハッカソンは初参加でしたが、釧路市民として考えさせられることが多い2日間でした。IoTという素晴らしい技術を活用できるという希望がある一方、その前段階で解決しなければならない課題が、釧路には山積しています。
しかし八子氏もおっしゃる通り、これはあくまでスタート。本当に必要なサービスを実装して活用いただくことが、今後釧路に住む私たちがやらなければならないことだと痛感しました。
次回の開催は2018年9月頃を予定しています。参加してみたい方はぜひチェックしてみてくださいね。
前編と中編は以下よりご覧ください。
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