キタゴエ道東支部のこちゆうです。私が住む釧路には「釧路ITクラスター推進協会」という、地元のIT関連企業や事業者から成る団体があります。
今回はこちらの会長であり、「釧路市IoT推進ラボ」の代表も務める中島秀幸さんに、各団体の活動や目的、釧路への思いなどについて伺いました。
取材・撮影:こちゆう 取材日 : 2018年9月26日
きっかけは「地域の仕事を受けられる体制づくり」
—— まずは釧路ITクラスター推進協会について教えて下さい。
中島:この協会は平成17年4月に立ち上がった団体で、2018年で14年目を迎えました。前身の「釧路マルチメディア協会」の時代を含めると25年ほどになります。
個人事業主も含めると会員は現在16社ほどで、普及啓蒙セミナーやITビジネス企画事業、ほかにもIT人材育成や地域貢献のための活動なども行っています。
—— 釧路ITクラスター推進協会の活動目的について教えていただけますか。
中島:広義では地域のIT事業の活性化ということになりますが、もともとはお互いに切磋琢磨しながら、地域で発生するITの仕事を、地元の企業や事業者が主体になって受けられるよう体制を整えようということで作られました。
私が所属する株式会社サンエス・マネジメント・システムスのように、釧路を拠点に活動するIT企業や個人事業主はいくつかあります。首都圏に本社を置く大きなIT企業ほどの規模はありませんが、それぞれ独自の強みがあり、地元の顧客と良好な関係を築きながら商売ができている状況です。
しかし自治体や道庁など大きな仕事となると、たとえ地元のIT企業や事業者ができることでも、どうしても釧路以外の大企業に決まってしまいがちになります。これは知名度もそうですが、規模感やできることの範囲、人手や使えるお金の差によるところが大きい。
また既存の商圏の中だけで仕事をしていると、どうしても技術力やサービス向上というところが疎かになってしまいます。これでは大きな仕事がより受けられないようになるだけでなく、新たな雇用の創出など地元IT企業の活性化にもつながらないでしょう。
こうした課題を解決するためにできたのが、釧路ITクラスター推進協会です。釧路は地方都市ではありますが、同じ業種同士顔見知りも多い。普段は競合として商売しつつも、何かあった時には連携し、お互いに高め合うような取り組みをすることが、ひいては雇用の創出や次代の担い手の育成、そして地域活性につながると考えています。
新たなビジネスの種を生み出すために
—— 具体的にはどのような活動をされているのですか。
中島:最近だと、キタゴエさんにも取材していただいたIoTハッカソンがありますね。あとは札幌や東京でしか受けられないような研修事業の誘致や、普段お話が聞けないような方などを招いたセミナー、ほかにも学校のプログラミング教育なども企画しました。
—— いろいろな取り組みをされているんですね。
中島:そうですね。でも本当に大切なのは、その結果地域の仕事につながったかどうかだと思っています。
ハッカソンはその主たる例です。あれは地域の課題を、ITという手段を使って皆で解決しましょうという取り組みですが、「実施しました」で終わってはいけない。出てきた課題や解決策に対して、地域の中でそれを実装するという動きが出てきて、初めて意味のあるイベントなんです。
協会の会員が設備投資し、システム開発したいって手を挙げるのもいいですし、行政から予算をつけても良いという話が出るのもいいと思います。もっと広い目で見れば、ハッカソンに参加した学生の中から釧路のIT企業に入りたいという人が出てきたり、逆に企業から声掛けしたりする可能性だってあるはずです。
こうして地域に新たなビジネスやその種が生まれて、それが商売につながっていくという好循環を生み出すことが、協会の活動の意義だと思っています。そういった意味では、固定概念にとらわれずにいろいろなことをやっていきたいですね。
「観光」をテーマにすべての活動をつないでいく
—— ありがとうございます。では中島さんが代表を務める「釧路市IoT推進ラボ」も同じ思いで活動されているのですか。
中島:地域の活性化という最終的な部分は同じですが、あちらはテーマを「観光」に絞り、ビッグデータの活用を目的に活動しています。
「IoT推進ラボ」は国の取り組みのひとつで、地域ごとにIoTを推進する地域を作っていこうという目的の中で行われているものです。すでに何度か公募がかかっていますが、私たちは一回目に市と協会で手を挙げました。
—— 「観光」をテーマにされた理由を教えてください。
中島:テーマを観光に据えたのは、市がこの地域の新たな産業の柱として力を入れていたこと、そして観光立国ショーケースのモデル都市に選定されたというところが大きいですね。
観光立国ショーケースとは、訪日外国人旅行客が増加する中で、彼らを地方へ誘客するモデルケースとなる地域を形成しようという取り組みで、選定都市は釧路を含めて3都市のみでした。この取り組みの中で釧路市が掲げたのが「ストレスフリーの環境整備」です。これは観光客がストレスなくこの地域を周遊できることを目指したものですが、その中でITができることは何なのかを検討した時期でしたので、ラボではこれをテーマにしようということになったんです。
—— IoT推進ラボではどのような取り組みを?
中島:Wi-Fi整備のほか、電波の届かないところでも利用できる情報提供アプリや、店舗情報を多言語で提供するコンテンツの開発・提供などさまざまですね。多言語アプリについては46店舗ものお店にご協力いただき、こういったサービスのニーズがあるのかを調査しました。
残念ながらこのアプリの提供は終わってしまいましたが、今動いているものではバスロケーションシステムなどがあり、すべて観光に絡んだものになっています。
実はハッカソンのテーマが一貫して「観光」に終止しているのも、こうした釧路市IoT推進ラボの取り組みがあるからなんです。ITで解決できることは、観光課題以外にもたくさんあります。でも今後、市として観光を新たな産業の柱に据えようという中で、ラボとして「観光」をテーマにするなら、ITの活動すべてをそれでつないでいったほうがいいと思ったんです。
それぞれの活動や団体が別々のテーマで動くこともできますが、中の人はほぼ同じですから、動ける人材も限られますよね。その中で多様な課題を取り扱ってしまうと、手が回らなくなってしまいます。それならひとつのテーマに絞ったほうがいいし、それぞれの活動がつながって成果になりやすいと考えました。
—— では実際に、ハッカソンで取り扱った内容が釧路市IoT推進ラボの活動に反映されたことがあったのですか?
中島:LPWAの実証実験がまさにそれですね。2018年の4月に行ったハッカソンはLoRaWANを使ってどのような課題解決ができるかを皆さんに考えてもらいましたが、あれは釧路でLPWAの実証実験をしたいという私の思いが根底にあったからです。
実際にあのイベントの後、市の建物の上にLPWAの基地局をつけることができました。LPWAで観光客の動向についてのデータを取ることができれば、貴重なビッグデータの蓄積につながり、それを課題解決のために活用できます。
訪日観光客という観点でいえば、今後個人旅行客が増えていく中で、彼らが何に困っているのか、どういうことを課題だと感じているのかを地域として把握しないと、何も改善できません。ビッグデータがあればいろいろな分析ができるので、課題解決につなげられると考えています。
またLPWAの基地局は観光以外にも、例えば子どもや高齢者の見守りなどにも利用できるかもしれません。釧路市IoT推進ラボとしてのテーマは観光ですが、すべてをそこに限定するわけではなく、将来的にさまざまな課題解決へと派生する地盤づくりが、ラボの活動を通してできればいいと思っています。
—— ありがとうございました!
取材を終えて
釧路市IoT推進ラボは現在、同じく観光をテーマにしている京都市のラボと交流事業なども行っているそうです。さまざまな地域、そして人材とつながりながら、釧路のIT事業の活性化、ひいては地域活性化を目指す姿に、改めてこれからの釧路の可能性を見ることができました。今後もさまざまな取り組みに期待しています。
住所:釧路工業技術センター(釧路市鳥取南7丁目2番23号)内
問い合わせ先:staff@ksr-it.net
住所:釧路市鳥取南7丁目2番23号
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