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震災直後だからこそ意味がある。道東×IoTハッカソン2018 IoTで観光・防災の課題を解決する!vol.2レポート〜前編〜[フィールドワーク]

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キタゴエ道東支部のこちゆうです。

去る2018年9月22日(土)と23日(日)、釧路では釧路ITクラスター推進協会(東北海道IoTハッカソン実行委員会)主催のイベント「道東×IoTハッカソン!観光・防災の課題を解決する!Vol.2」が行われました。

今回は2018年4月に行われた道東×IoTハッカソン2018 IoTで観光課題を解決するの第二弾。「観光」をテーマにした前回の内容を踏まえ、「観光防災」におけるIoTの可能性を探ります。

前回の様子はこちら

釧路初ハッカソン!道東×IoTハッカソン2018 IoTで観光課題を解決する!に行ってきた〜前編〜[フィールドワーク]


実は開催の2週間前にあたる9月6日には、胆振地方を震源とした北海道胆振東部地震が発生。北海道全体がブラックアウトに陥るという、前代未聞の事態に見舞われたばかりでした。そのため当初はイベント開催自体も危ぶまれましたが、「今だからこそやるべきだ」という声に後押しされ、今回の開催が決定したそうです。

その言葉通り、フィールドワークで得られた情報には思わず手に汗握るような緊迫感が感じられ、また多くの参加者が自分たちの経験を活かそうと活発な議論がかわされる、熱のこもった2日間となりました。

取材・撮影 : こちゆう 取材日: 2018年9月22日(土)

あの日何が起きた?釧路の防災最前線を巡るフィールドワーク

前回同様、今回もスタートはフィールドワークから。約25名の方がバスに乗り込み、釧路市街2ヶ所をめぐります。

最初に訪れたのは、釧路市の西側にあたる鳥取地域と阿寒町周辺で、新聞の印刷・配達業を行っている株式会社マルカツ 吉田新聞店です。

株式会社マルカツ 吉田新聞店
北海道釧路市鳥取大通8丁目1−5

全国・全世界の情報を家庭に届ける新聞販売所で、あの日何があったのか。吉田勝幸氏と菅原正登氏から、当時の様子を伺いました。

災害時に確かな情報が得られる数少ない情報手段

こちらでは約110名の配達員の方が手分けし、北海道新聞など1万部以上を管内の家庭に届けています。

地震が起こったのは、なんと配達の最中。すでに多くの配達員が新聞店を出発していましたが、停電と同時に電話が繋がらなくなったため、吉田氏や菅原氏は無事を祈りながら販売所で帰りを待つしかなかったそうです。

一方、配達員の多くは普段からヘッドライトを付けており、その光を頼りに仕事を続けたとのこと。毎日配達する地域なので、暗闇でもある程度配る家や道は分かったのだそうです。

吉田新聞店では以前から防災マニュアルやその際の連絡網が用意されていましたが、電話がつながることを前提に作成されていたため、出勤していない社員とも連絡が取れず、社員の安全確認には時間を要したのだとか。「まさか全道ブラックアウトになるとは想定していませんでした」と、菅原氏は当時を振り返ります。

また北海道新聞の発刊状況について伺ったところ、震災当日の夕刊から再開していたとのこと。吉田新聞店では、電気の問題から発災当日の夕刊だけは配れなかったものの、翌日の朝刊以降は配達を再開しています。

「テレビもインターネットも使えないからこそ、新聞の情報が頼りになる」という吉田氏の言葉通り、実際に購読者からは後日「配ってくれて助かった」という声が寄せられたとのこと。

紙媒体の衰退が激しい昨今ですが、災害時は重要な情報ツールとして人々を助ける重要なツールとなっていたようです。参加者たちは災害当日の新聞を見ながら、両者の話に真剣に耳を傾けていました。

市民の不安が119番通報に集中

続いて訪れたのは、釧路市街からほど近い場所にある「釧路市消防本部市民防災センター」です。

釧路市消防本部市民防災センター
〒085-0022 北海道釧路市南浜町4−8釧路市消防本部

館内1階には地震体験室やてんぷら火災消火コーナーなど、災害を身近に感じられるブースが多数設けられており、一般の方も無料で利用できます。

この建物の4階にあるのが、釧路・白糠管内から発信された119番の応対などを行っている通信指令室です。中の様子はガラス張りになった部分から見学することができます。

中には市内の様子が確認できるモニターが設置されており、大きな津波はここから確認できるそうです。

参加者の中には通信指令部を初めて見たという方も多く、到着と共に参加者の熱が上がったのを感じました。

今回案内してくださったのは、釧路市消防本部通信指令課の南 マサシ氏。実は東北海道IoTハッカソン実行委員会の四宮琴絵氏とは子どもの頃からのご縁なんだそうです。

地震当日のことを伺うと、最も大変だったのは本来の目的以外でかかってくる119番通報の対応だったと語ってくださいました。

当日は206件の119番通報があったそうですが、そのうち90件近くは「停電はいつ復旧するのか」など、停電状況を確認する内容だったとのこと。残りのうちの100件近くも、電源が切れた際に自動通報システムが作動する、高齢者向け家電製品による電話だったそうです。

119番通報は本来火事や急病、事故のほか、怪しい煙が見えるなど、緊急を要する可能性が高い事案に対応するためのもので、停電の状況確認はこの事案に含まれません。また消防本部と北海道電力は組織が異なるため、答えることができなかったそうです。

また応対できる回線数は限られているため、この状態では本当に119番の助けを必要としている人からの電話も繋がりにくくなってしまいます。通信司令部には6名程度の団員が常駐しているそうなので、とても追いつかないことが想像できます。

しかし暗闇の中、すがる思いで掛けてこられた市民からの電話を無下にすることもできず、心情的にも業務的にもつらい思いをされたそうです。

停電時の本部の自家発電や連絡手段などについては事前に対策がなされていましたが、こうした119番通報への対応の難しさを改めて痛感されたとのこと。今後解決すべき課題だと感じると共に、ハッカソンでのアイデアを期待しているという言葉で締めくくられました。

いよいよハッカソン会場に到着!

釧路市消防本部市民防災センターを後にした一行は、その後食事休憩を挟んで、ハッカソン会場となる『釧路市生涯学習センター「まなぼっと幣舞」』に到着。

釧路市生涯学習センター「まなぼっと幣舞」
〒085-0836 北海道釧路市幣舞町4−4−28

会場には地元の企業が製造・販売しているお菓子などが用意され、和気あいあいとした雰囲気に包まれながらハッカソンはスタートしました。

テーマ発表と主催者の思い

今回も司会進行は株式会社ウフルのCIO 兼 IoTイノベーションセンター所長の八子知礼氏。挨拶と共に、今回のテーマ「釧路の魅力を発信し、その魅力を求め訪れた人の安全を確保せよ!」が改めて発表されました。

その後登壇されたのは、イベント主催者の一人である 釧路ITクラスター推進協会会長の中島秀幸氏。今回の開催に至る思いについてお話がありました。

「かつて釧路の基幹産業だった漁業や製紙業が衰退する中で、新たな産業として取り組んでいるのが観光です。幸いにも観光立国ショーケースの選定など国にも後押ししていただいており、外国人観光客も増えています。

こうした背景を受け、今回のテーマを『観光防災』にしようと決まったのは今年の6月頃です。しかし2週間前に北海道胆振東部地震が発生し、このタイミングでやるべきかどうか少し悩みましたが、今だからこそ見える地域の防災課題があるのではないかと、実施を決意しました。

北海道に住んでいた方のほとんどが被災したと思いますが、その中で色々な課題が見えたのではないでしょうか。今回のハッカソンではそれを解決できる方法を見出すと共に、この地域で実装までできればと思っています」

合わせて中島氏より、前回のハッカソンで使用されたLoRaWANを使い、現在情報収集のための実証実験が行われていることが報告されました。今回のアイデアが同じように実証実験され、実装されるようサポートしていくとのことです。

5つの審査基準とハッカソンで大切なこと

続いて進行役の八子氏より、ネットワーク情報や今回のスケジュール、釧路の地域性に関する紹介とともに、審査基準について説明がありました。

今回は5つの審査基準が設けられています。

  • 革新性とユニーク(今までにないデザインか)
  • 実現性と実装性(開発可能か、ここで動作するか)
  • デザイン性(洗練されたデザインか、訴求力があるか、わかりやすいかなど)
  • 事業性(開発・運用資金の捻出方法)
  • テーマ性(テーマとの合致度)

特にハッカソンでは実現性と実装性が重要視されているので、その点を踏まえて開発に臨んでほしいとの注釈もありました。

また1位から3位まではそれぞれ10万円、5万円、3万円の商品券、他にも釧路ならではの賞品が用意されているとのこと。

説明の最後には「とにかく、この時間を思いっきり楽しもう!」という激励で締めくくられました。

釧路の現状を知る情報提供タイム

続いて共同主催者である四宮 琴絵氏から、今回のテーマに絡んだ情報提供が行われ、参加者の手元には釧路市が発行しているハザードマップが配られました。

その後釧路ITクラスター推進協会の中島氏から市の防災情報などについて、以下のような情報提供がありました。

<防災無線について>

  • 釧路では津波対策をメインに防災対策が行われているため、防災無線用のスピーカーは海・川沿いに集中している
  • 今回の災害時にも放送が流れたが、何を言っているのか分からないという人が多く、あまり機能しなかった

<防災カメラ>

  • 釧路市街地に2ヶ所、音別および阿寒地域に3ヶ所設置されている
  • いずれも海沿いに設置されている

<防災メールサービス>

  • 市からの防災情報が届くメールサービスがあるが、住民にあまり周知されていない
  • メールアドレスでの登録のほか、電話やFAXにも対応している
  • 今回の災害は自主避難だったため、防災メールは配信されなかった

また合同会社Hokkaido Design Codeからは今回のイベントのために収集した、発災時の対応や困ったことなどについての市民アンケートが公開されました。

その後、株式会社ジョイゾーの四宮 靖隆氏および株式会社ウフルの村上 草太氏、メンターを務める株式会社RHEMS Japan遠藤 五月男氏からそれぞれ、今回の技術説明があり、いよいよアイデア出しへと移ります。

熱を帯びたアイデア出し、そしてハッカソンの様子は次回中編でご紹介します。

中編はこちら!

震災直後だからこそ意味がある。道東×IoTハッカソン2018 IoTで観光・防災の課題を解決する!vol.2レポート〜中編〜[ハッカソン]

この記事を書いた人

こちゆう
こちゆう
合同会社Hokkaido Design Code執行役員。
奈良県出身、釧路市在住。本職はフリーライター。
釧路・十勝の魅力を発信するWEBサイト「くしろはてな」編集長。女性だけのライティング集団「ことのは」副代表。
釧路や道東、北海道に関する取材記事のほか、ビジネスノウハウや保育に関する記事やシナリオ作成などを行う。
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