2019年11月22日、さっぽろ創世スクエア札幌市民交流プラザにて北海道IT企業合同技術交流会「Kita Tech2019」が開催されました。
北海道を拠点に活動するIT企業が一堂に会し様々な技術に関する発表を行う当イベント。今年は「GPUサーバーを活用したIT技術」をテーマに8チームが発表を行いました。本記事ではその内の2つ。
- 株式会社インフィニットループ:「AI社内コンシェルジュ」
- KidsVenture:「熱中症を倒そう! -水分取ってますか?-」
の発表内容をレポートします。
AI社内コンシェルジュ(株式会社インフィニットループ)
発表者は株式会社インフィニットループの佐藤太郎さん。開発したのは社内コミュニケーションを促進するために人と人とをつなぐAIコンシェルジュです。
社内コミュニケーションに課題を感じている企業は少なくありません。調査では7割弱の企業が部門間・事業所間のコミュニケーションに課題を感じているとのこと。原因としては
- 社内で他のチームの人とのパイプが少ない
- そもそもコミュニケーションをとるきっかけがない
などが挙げられます。
社内コミュニケーションが促進されることによるメリットは多く、情報共有の活性化やより良い企業文化の醸成などが期待できます。
そこでコミュニケーションを促進する目的で開発されたのがAIコンシェルジュの「AI(あい)えるたん」。IT企業でよく使われているコミュニケーションツールである「Slack」のログから交流のきっかけとなる発言を提示して、その人にとって交流しやすいであろう人物を推薦するという仕組みです。
推薦は話題や文章の特徴から類似ユーザーを選定することで行われます。そこで問題となるのが、文章の特徴を構成する性格や雰囲気、口調はすべて曖昧なものであるということ。つまり推薦するには曖昧さを理解できるシステムが必要です。
その曖昧を理解するために利用したのが、Googleの検索システムにも採用されている自然言語処理技術「BERT」。文脈を理解した検索結果の表示を可能にした「BERT」であれば、口調や雰囲気などの曖昧なものも汲み取れるのではないかと仮定し採用しました。
実際にユーザーに推薦・提案するまでの流れは以下です。
- Slackログの抽出
- 前処理(ログの文章・メタデータファイルに加工)
- 形態素解析(JUMAN++を使用)
- 日本語化BERTによる特徴抽出
- 可視化
- 近似最近傍探索
- ユーザーに推薦・提案
なお形態素解析とBERTによる特徴抽出はさくらインターネットの高火力GPUサーバー上で行ったとのこと。
BERTで特徴抽出した後は、抽出したデータにどんな傾向があるのかt-SNEという手法を用いて見ていきます。t-SNEとは似ているものは近づけ、似てないないものは遠ざけて配置する手法のこと。
t-SNEによる発言の処理を見てみると「暑くのぼせてきた」という発言に「冷えますね」「指先が冷たい」「無理せず休んだ方が寒いし」などの発言が引き寄せられていることがわかります。
その後、特徴ベクトル空間のなかで、新たに与えられた特徴ベクトルに最も近いものを探す「近似最近傍探索」という処理を行い、対象となる発言に最も近い別の発言をいくつか抽出します。
実際に抽出した発言が↑の写真。対象となる発言と似たような発言が上位4件抽出されました。一見会話のように見えますが、全て別のチームの人の発言とのこと。
このような工程を経て推薦する人が決まれば、AI(あい)えるたんがアプリ上で推薦してくれます。コミュニケーションの初動のコストを減らすとともに、活性化させることができる点や、発言を読むのはAIであることを踏まえ心理的な安全性も確保されていることを、AI(あい)えるたん導入のメリットとして話していました。
質疑応答では審査員の福野泰介さんから「いきなり2人で会うのはツライから4人くらいのグループを作ったり、ランダムでランチをセッティングできたりしたらすぐにでも実用可能で良いと思う」というアドバイスがありました。
本発表は懇親会で行われた審査発表で見事、大賞に選ばれました!
熱中症を倒そう! -水分取ってますか?-(KidsVenture)
子供向けプログラミング教室であるKidsVentureの発表は菊池竜矢くん、深谷光喜くん、畑華音ちゃんの3人が行いました。
発表にあたり、みんなで解決したい問題についてたくさん意見を出し合ったそうです。その中で、今年は熱中症になる人が多かったと聞き、実際に調べてみたところ年々熱中症になる人が増えてきていることを知りました。そこで熱中症対策の課題を解決することにしました。
熱中症になってしまう人を減らすためにまず熱中症の原因と対策を考えてみることに。いくつか出た熱中症対策の中でも今回は「水分を取る」という部分に着目しました。飲んだ水分の量が見てわかるようになれば、熱中症になってしまう人を減らせるかもしれません。
実際に飲んだ水分の量が見てわかるようにするために考えた必要な機能案は以下の通り。
- コップの中の水の量を測る機能
- モニタで測った水の量を観れるようにする機能
- 1日で飲んだ水分の量を測る機能
- 1日で水分を2L飲んでいなかったら、どれくらい足りなかったのかを教えてくれる機能
実装する機能が決まったところで実際に作ることに。
まず飲んだ水の量は重さによって測ることにしました。ひずみセンサーを取り付け、センサー部分のひずみで重さを測る仕組みです。しかしこれでは
- ひずみセンサーをセンサー全体で歪ませようとすると力が分散してしまう
- ひずみセンサーを置く場所が硬すぎると、センサーをゆがませられず正確に測れない
という問題が発生し精度が低かったそうです。
そこで
- センサーに設置する面を細い棒にして、1点をゆがませること
- センサーを置く土台を硬くないダンボールにすることでセンサーをゆがませやすくすること
で計測の精度を上げることに成功しました。
実際に作った作品がこちら。これにプログラミング専用こどもパソコンである「IchigoJam」を繋げて機能を実装していくことになりました。
機能を実装し、水の量を測ってみたところ、やや実際の重さより誤差はありましたが、かなり近い値がモニターに表示されました。
計測の精度を上げるために、13秒かけて測った平均値を取り出すなどの工夫を行なったとのこと。それ以外にも測った水分量をみやすくするためにグラフ表示できるようにしたり、1回の水分量を測るだけでなく統計モードも実装することで目標率までの達成率を表示したりとさまざまな工夫がされていました。
使い方の例としては
- 飲んだ水分量を家族みんなで確認し合う
- 一日どのぐらいジュースを飲むかを測る
などを想定しているそうです。
今後の課題としては
- テスト用のコップでしか計れなかったこと
- 誰が測ったのかを分けて、みんなで使えるようにする
- 精度を高くする(誤差が20〜30ml程度あった)
- 持ち運べるようにする
などをあげていました。
最後に「他にはできない体験ができてよかったです」と感想を述べて発表を終えました。
質疑応答では審査員全員からコメントがありました。中でも有限会社サイレントシステムの中本伸一さんの「発表という観点から言えば、一番よかったと思います。非常に想いが伝わった。感動した」という言葉はKidsVentureチームの発表のレベルの高さを物語っていました。
レベルの高さが評価され見事、特別賞を受賞しました!
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