世界が認めるVRコンテンツはどう生まれた?「The Time Machine~1964年の渋谷へタイムトリップ~」NoMapsビジネスカンファレンス2019

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世界が認めるVRコンテンツはどう生まれた?「The Time Machine~1964年の渋谷へタイムトリップ~」NoMapsビジネスカンファレンス2019

2019年10月16日から20日までの5日間にわたり札幌市内で開催されたクリエイティブコンベンション、NoMaps2019。10月17日(木)のセッション、「The Time Machine~1964年の渋谷へタイムトリップ~」ビジネスカンファレンス2019へ行ってきました。

【NoMapsとは】

昨今、巷で話題のVR(バーチャル・リアリティ)技術。テレビやインターネットでよく目にするようにはなりましたが、実際に「VRコンテンツとはいったい何なのか」そして「VRを利用することで、何ができるのか」を理解している人は少ないのではないでしょうか。

今回ビジネスカンファレンスで語られたのは「VR技術を活用すれば、タイムマシンで過去に戻ることができる」というお話。

過去にタイムトリップできるというのは、いったいどういう意味なのか。カンファレンスではタイムマシンにまつわる夢のある話を聞けましたので、ここで紹介させていただきたいと思います。

登壇者紹介

土屋俊男さん

土屋 俊男(つちや としお)

  • 日本テレビ放送網株式会社シニアクリエイター
  • 一般社団法人1964代表理事

1992年から2003年まで放送された「電波少年シリーズ」を手がけ大ヒット。番組内では自身も、ダース・ベイダーのテーマ曲で登場するTプロデューサーとして出演しました。

現在は日本テレビで活躍をされながらも、一般社団法人1964の代表理事もされています。

河瀬大作さん

河瀬 大作(かわせ たいさく)

  • NHKエンタープライズ メディアプロデューサー

1993年にNHK入局後、「プロフェッショナル 仕事の流儀」、「あさイチ」、「オドモTV」などの人気番組を制作。NHKエンタープライズへ異動後は、THE TIME MACHINEの製作に関わり、SXSWへ出展し世界中から注目を集めるきっかけを作られました。

現在もメディアやエンターテイメントなどの要素を皮切りに、VRコンテンツの開発に尽力されています。

1964年の渋谷にタイムトリップできる「1964  SHIBUYA VR」とは

South by Southwestに出展したTHE TIME MACHINE

今回カンファレンスで土屋さんと河瀬さんが紹介された「1964  SHIBUYA VR」とは、VRの技術を利用して1964年の渋谷にタイムトリップするプロジェクトのこと。このVRコンテンツには、「フォトグラメトリー」などの技術が利用されています。

1964年の渋谷の写真を大量に集め、それらを重ね合わせ当時の渋谷の街並を形成。様々な技術を用いることで、立体感のある街並を再現することを可能としているのが1964 SHIBUYA VRの仕組みです。

最新テクノロジーを駆使して生成された渋谷の3D空間は、その当時東京に住んでいた人にとっては懐かしい場所。2020年の東京オリンピックに向け、1964年のオリンピック開催時と比べて東京の街はどのくらい変わったのか、その成長の度合いを浮き彫りにします。

この画期的なコンテンツは、2018年度のグッドデザイン賞、2019年度開催のSXSWではアロー賞を受賞しました。

紆余曲折の時代を経た「1964 SHIBUYA VR」

1964社団法人の設立について説明する土屋さん・河瀬さん

今や世界的にも注目を集めている1964 SHIBUYA VRですが、ここまで到達するのには紆余曲折、大変な苦労があったと言います。

そもそもこのVRコンテンツは、2013年に土屋さんが鎌倉の昔と今の写真を比較するアプリを作ったことが始まり。土屋さんが開発した「鎌倉今昔写真」のアプリを見た齋藤さん(一般社団法人1964 TOKYO VR代表理事、株式会社ライゾマティクス代表取締役)と、「今昔写真を、VRで作ることはできないか?」という話がのぼったそう。

そこから一般社団法人1964 TOKYO VR を設立、当時NHKに所属していた河瀬さんもプロジェクトに誘い、渋谷の街を3D化するための動きが本格化しました。

フォトグラメトリー説明画像

渋谷の街を3Dで再現するために、まず始めたのがフォトグラメトリー。上述した、複数の写真を組み合わせることで立体で空間を再現する手法です。

なぜ渋谷の街を選んだかというと、2020年のオリンピックに向けて、1964年の東京の街を再現したくなったからというのが理由。「この56年の間に東京の街はどう変わったのか、今と昔を比較したら面白いのではないだろうかと思った」と、土屋さんは言います。

この当時の渋谷は東急会館を中心として電車やバス、自動車など交通網が栄えていたため、このプロジェクトに渋谷区や東急百貨店などが乗り気で協力をしてくれたそうです。

フォトグラメトリーについて説明する土屋さん

実際に写真を集めて渋谷の街を再現する際、使えたのは手に入った数百枚のうち、わずか6枚。この6枚によるフォトグラメトリ-は予想よりもクオリティが高く出来たものの、枚数不足により細かな部分が荒くなってしまい、上手くはいきませんでした。

そこからさらに写真の枚数を集め、何度も試行錯誤をしましたがなかなか上手くいかず。そうこうしているうちに、1964年当時の航空写真が見つかり「航空写真を使えば写真に高さが出せるから、これで上手くいくのでは?」と期待し、渋谷から日比谷まで一通りの街並を作ってみることにしました。

しかしそれでも上手く街並を再現することはできず、長い間1964 SHIBUYA VRプロジェクトは行き詰まりを見せます。

NEP伊達さんを紹介する土屋さん・河瀬さん

プロジェクトが上手くいかず停滞している折、NHKの河瀬さんがNHKエンタープライズに異動することに。この異動をきっかけに「運命的な出会いを果たした」と、河瀬さんは言います。

それは、NHKエンタープライズ エグゼクティブ・プロデューサーの伊達さんとの出会いです。

伊達さんは3Dスキャンの技術に優れており、土屋さん・河瀬さんが携わっている1964 SHIBUYA VRのプロジェクトの話をしたところ協力を快諾。伊達さんに渋谷の写真を渡したところ、わずか4日ほどで渋谷の街を綺麗に再現することに成功しました。

ここでやっとプロジェクトが前進し、渋谷の街をVRにさせることが現実味を帯びてきたと言います。

地域の大学生たちが協力して写真を生成する様子

伊達さんの協力もあり、渋谷の街を再現するための大枠はほぼ整い、あとは壁や道路などのテクスチャーをどうするかという話に。

とにかくより多くの写真を集めるために、1964 SHIBUYA VRプロジェクトは以下の行動を起こしました。

  • 朝日新聞や区長に協力を頼んだ
  • クラウドファンディング
  • テレビ・ラジオ番組で告知して、写真を集めた

プロジェクトのメンバーだけでなく、新聞社や区長、テレビ局など各方面に協力を仰ぎとにかく写真を集めることに尽力。

お年寄りから集めた1964年当時の写真を、若い学生たちにPCを使って統合してもらう。こういった多くの人々に関わってもらい協力してもらうことで、徐々に渋谷の街を作り上げていったのです。

South by Southwestの説明をする土屋さん・河瀬さん

2019年3月、1964 SHIBUYA VRプロジェクトが形になってきた頃。NHKエンタープライズと一般社団法人1964 TOKYO VRは、意を決しアメリカのテキサス州オースティン開催のSXSWへ「THE TIME MACHINE」を出展しました。

このTHE TIME MACHINEとは、VRの映像を通して1964年渋谷へタイムトリップできる仕掛けで、観客はヘッドセットを着用するだけでVRコンテンツを楽しめます。イベント当日は、ブースに長蛇の列ができ出展は大成功。たくさんのお客さんがVRを試してくれる大盛況に終わりました。

結果、THE TIME MACHINEはSXSWでアロー賞を受賞し、このプロジェクトは世界中から注目を浴びることに。アメリカのテック関係の企業からも声がかかり、このVRコンテンツの存在は世界に知れることとなったのです。

後にロンドンのMCM ComicConventionに招待されるなど、現在も1964 SHIBUYA VRのVRコンテンツは世界でも注目を浴びています。

各方面からの協力により集まった100枚以上の写真たち

このVRコンテンツが世界に注目を浴びることになった大きな要因は、多くの人の協力があってこそだと河瀬さんは話します。

「昔は、1つの企業だけでプロジェクトを回していたのが普通だった。しかし今は、組織を超えて面白がれる人たちが繋がり、皆でできることを持ち寄っていく。たとえば朝日新聞は写真を多く持っているし、渋谷というエリア自体に強いのは東急だし、個人や企業の垣根が無い時代だ。1つの企業で完結してしまえば、ブレークスルーがしにくい

1964 SHIBUYA VRが世界に認められた経緯には、こういった組織を超えた人々の繋がりが基盤にあったことがわかります。

新しいテクノロジーを生み出すには「面白そうだから、やってみよう」と思える人たちが集まり、力を合わせることが重要なのだと実感しました。

「テクノロジー」と「体験」の組み合わせで人々に幸せを

South by Southwest参加時を振り返る土屋さん・河瀬さん

「VRはテクノロジーだが、我々が提供するのは体験。どうやったら面白いことができるかは考え方次第

SXSWでTHE TIME MACHINEが人気を集めた理由について、上記のことを土屋さんと河瀬さんは話してくれました。

THE TIME MACHINEでは、ただ単にVRで映像を見せていただけではありません。VRのヘッドセットを着用した観客がハチ公前に訪れた時、観客にハチ公を撫でている感触を味わせるために、発砲スチロールで作ったハチ公を実際に触らせたそう。

その他にもVRで風が吹くシーンでは、実際にスタッフが後ろから団扇で扇ぐなどの原始的な方法で観客を楽しませる取り組みがなされました。

この「エンターテイメント性」こそが、SXSWでTHE TIME MACHINEが受け入れられた理由だと言います。テクノロジーはもちろん大切だが、それに何を足したら楽しいのか考えるのが勝負。

これは今までテレビ業界でエンターテイメントと向き合ってきた土屋さんと河瀬さんだからこそできる、テクノロジーだけでは表現しきれない「体験を通した面白さ」を追求した結果だと言えるでしょう。

No Border映像

さらに2019年7月、大阪のクールジャパンパークで土屋さんの企画・総合演出により「No Border」というVRのイベントが開催されました。これは大きなスキャナー機械の中に人間が入り、スキャンされた人のアバターが画面上でダンスをするというもの。

40人ほどの観客をランダムで選び、その40人が舞台で踊るこのエンターテイメントは、お年寄りから子供まで、国籍や年齢を超えて皆で手を取り踊ることから「No Border」という名前が付けられました。

No Border映像

河瀬さんは「THE TIME MACHINEやNo Borderなど、これらのテクノロジーは決して新しいものを使っているわけではない。複数のテクノロジーを組み合わせて、どうやったら面白いことができるか考えているだけ」と、言います。

さらに続けて土屋さんは「VRの技術を利用すれば、当時の銀座に友人と会うことや、青春時代の場所に戻ること、さらには若い姿で旦那とデートをすることができる。そういう人々の楽しみに、テクノロジーを繋げるのが面白い」と、話します。

テクノロジーはそれ単体ではなく「エンターテイメント」と掛け合わせることで、人々に体験を通した面白さを感じてもらえる。そして、それは結果として人々の幸せに繋がる可能性がある。

このことを土屋さんと河瀬さんは伝え、「The Time Machine~1964年の渋谷へタイムトリップ~」ビジネスカンファレンスは大盛況のもと幕を閉じました。

さいごに

木村あゆみさん(@ayugraphic)によるグラフィックレコーディング
木村あゆみさん(@ayugraphic)によるグラフィックレコーディング

メディアでは度々「テクノロジーが発展することの弊害」が語られますが、土屋さんと河瀬さんの話を聞き、「テクノロジーは人を幸せにする力がある」ことを強く実感しました。

特にVRのようなこれからさらに発展する技術は、「現段階では想像もできないような使われ方をするのではないか?」と、人々をワクワクさせる側面を持っています。

1964 SHIBUYA VR、そしてVRコンテンツの将来は、今後の動向にも目が離せないトピックだと言えるでしょう。

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私が書きました!

1991年生まれの北海道出身です。 外国語学部インドネシア語専攻を卒業後、都内のメーカーに入社。その後、フリーランスのライター兼翻訳家として活動しています。 海外や日本の都心での経験を通し、改めて地元北海道の良さを実感。 記事では「読めばちょっと世界が広がるIT情報」をお届けします。

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