言葉でうまく説明しにくい商品の良さを、いかにして伝えるのか? 顧客のニーズを呼び起こす有効な広告をどのように工夫するべきなのか?
「伝わらない」ことによって発生する潜在的なコストは、企業の悩ましい問題ですよね。
「スタークリエイツ」の代表・梅沢太一(うめざわ たいち)氏は、北海道は札幌市に、広告・ランディングページ・仕事マニュアルを「マンガ化」して企業の生産性の効率を図るビジネスを手掛けています。
今回は「業務用マンガ」で活躍する梅沢氏の掲げる【IT×生産性向上×地方(札幌)×マンガ・イラスト】をテーマにインタビュー取材をしました。
なお本記事では、このインタビュー内容を二部構成でお届けします。
前編では、スタークリエイツ代表・梅沢氏が「業務用マンガ」で起業するに至るまでの半生にスポットを当てていきます。続く後編では、氏が仕事のテーマとして掲げる【IT×生産性向上×地方(札幌)×マンガ・イラスト】を深堀していく予定です。
インタビュアー・取材 : HironaoIshiyama 撮影 : 赤沼俊幸 取材日 : 2019年4月17日
学生時代はマンガばかり描いていた
――梅沢さんは「業務用マンガ」として自らマンガやイラストを手掛けておられますが、このような仕事をなさるようになったのは、やはり昔からマンガが大好きだったからなのでしょうか?
梅沢:もともと、幼少の頃からマンガが大好きでした。小学校低学年の頃、親の転勤で中国に住むことになり、その当時は家でずっとマンガを読んでいましたね。
私のいた中国の瀋陽(シンヨウ)という場所は、当時は治安が良くなかったので、子どもが外で遊んだりすることが出来なかったんです。だから、『ドラえもん』とか『ドラゴンボール』といった少年漫画をずっと家で読んでいました。だけど、そのときはまだ自分で絵を描いたりはしませんでした。
その後、私は小学4年生のときに日本に帰国するんですが、中国にいる日本人の女の子と手紙をやり取りするなかで、だんだんと自分でマンガやイラストを描くようになりました。というのも、その女の子が、手紙によくマンガを描いてくれたんですよ。それに触発されたわけですね。今までは読むだけだったけれど、「自分でも描けるんだ!」ってことに気づかされたんです。
それに、あまり娯楽を買い与えてもらえる家庭ではなかったので、けっきょく、自分で娯楽を作るしかなかった (笑) だんだんと、自分でマンガを描いて楽しむようになりました。
――描いたマンガは、人に見せていたのですか?
梅沢:小学生時代は、よく友達に見せていましたね。その後、地方から札幌の中学校に転校するのですが、そこで「マンガを描く」という行為は、あまりイメージが良くないことに、初めて気づきました(笑)
それで、その頃から堂々と自分のマンガを人に見せるのが難しくなったんです。それでも、親しい友人にはマンガを読んでもらってました。当時は、大学ノートに150ページの長編を描いたりなんかしてました。
――とても意欲的にマンガを描かれていたのですね。しかし梅沢さんはその後、マンガ家にはならず、大学に行き、サラリーマンとして働くことになりますよね。
梅沢:マンガ家には、ほのかな憧れを抱いていました。けれど、自分よりも圧倒的に高い画力をもつ人たちですら“厳しい世界”だという現実を目の当たりにして、本気でその道を志す気にはなれませんでした。
――それでもいつか「マンガ」を仕事にしたいという夢は、当時からあったのでしょうか?
梅沢:その思いはありました。ただ、その頃は、どんなふうに仕事にできるのか想像さえできませんでしたが。
また、社会人になった当時、叶えたい夢はいくつもありました。もちろん、マンガに関係する仕事にもつきたかったし、社会を良くする仕事もしたかった。また、安定した仕事をして、結婚して子どもをもっておうちを建てるというのも叶えたかった。そしていつか、起業をして自分でビジネスを生み出したいという気持ちもこの頃からありました。
“デジタル”の時代が到来したおかげで、仕事に追われる社会人の身でありながら急激に画力が向上した
――こうして現在、梅沢さんは“点と点”がつながり、マンガで起業されているわけですが、ここに到達するまでに、どのようないきさつがあったのでしょうか?
梅沢:「いきさつ」というより、サラリーマンとして生きていくなかで、先ほど述べたような自分の思いやアイディアがだんだんとカタチになっていったというのが本当のところなのかもしれません。
じつは社会人時代、最初は私、生協の鮮魚コーナーで働いていたんですよ。内定が決まったときは、大卒だからきっと企画職なのだろうと考えていたのですが、いざフタをあけてみれば、朝早くから包丁をにぎって魚をさばく現場仕事。
自分はもともと手先が不器用な人間ですので、慣れない仕事に四苦八苦していました。最初の頃は、さばいた魚がボロボロすぎてパートさんに失笑されたり、あまりの要領の悪さに上司に怒られてばかりいましたね。
――忙しい毎日に追われるなかで、やはり当時は、マンガやイラストから遠ざかってしまった時期があったのですか?
梅沢:ところがそうではないんですよ。むしろ、鮮魚コーナーで働いていた社会人時代に、画力が急激に伸びていったんです。
なぜかというと、その頃からマンガやイラストの環境に大きな変化があったからなんです。ペンタブによってデジタル絵が発達して、ピクシブやニコニコ動画で自分のマンガやイラストを公開して評価を貰えるようになったり、インターネットにアクセスして絵の上達ノウハウを習得できるようになったわけですね。だから私は、ますます絵にのめりこみ、暇さえあればずっとマンガを描いていました。
もし、あのときデジタル絵の世界に足を踏み入れずにいたら、きっと今の自分はなかったと思います。まさに私は、デジタルの恩恵を受けた人間のひとりですね。
――なるほど。アナログの世界で完結していたマンガ・イラストが、“デジタル”になっていったおかげで、結局はめぐりめぐって、現在の梅沢さんのお仕事があるわけですね。
梅沢:はい。そしてじつは私が恩恵を受けたのは、けっして“デジタル”だけではないんです。苦労した鮮魚コーナーの仕事も、自分の画力にとても役立っていたんです。一生懸命に魚をさばく動作を反復していくうちに、まっすぐ線を引いたりする体の使い方を覚えたんですよ。また、プロフェッショナルとして仕事をするということがどういうことかが叩き込まれました。
たしかに、希望して始めた仕事ではありませんでしたが、その中で本気で自分を鍛えて働きました。こうした仕事の経験の積み重ねが、結果的に後のの仕事に活きてきた。
マンガとは一見関係のないサラリーマン時代の仕事が現在に活きている
――現在に活きている社会人の経験は、他にもありますか?
梅沢:生協の売り場で培った「お客様目線」の発想は、私の現在の仕事「業務用マンガ」制作にも活きています。
「商品の価値をどのようにしてお客様に伝えるのか?」 ――これがサラリーマン時代の大きなテーマでした。どんなに素晴らしい商品でも、誰にも知られなかったら意味がないわけですよね。だから、どう工夫すればお客様の関心を引けるのか、欲しいと思っていただけるのかを考えなければなりません。
そしてもうひとつ。私が本部で店舗管理の仕事をする部署に異動になってから、いろいろと社内のITシステムが一新されて、発注用のタブレットが導入されたんです。そのとき本当に苦労したのは、このタブレットの使い方を従業員に伝えることでした。
当時はまだ、スマートフォンが普及しはじめたばかりの頃でした。従業員の大半は、ガラケーしか使ったことがなく、「スマートデバイス」にまったく触れたことのないような主婦の方々ばかりでした。このときもまた、私は「わかりやすく伝える」ことの重要性を再認識させられました。
ようするに、商品の良さをお客様にアピールすることも、社内で従業員同士が共有しなければならない情報も、「伝わらない」ことで余計なコストがのしかかってしまうことに気づかされたんです。
せっかく素晴らしい商品なのに、お客様に知られずに廃止になってしまえば、それは当然、大きな損失ですよね。また、せっかく生産性の効率を図って多額のコストをかけて導入したシステムも、従業員が上手に使いこなせなければ、これもまたかえって企業の負担になってしまいます。
こうして、私が気づきと発見を積み重ねていくなかで、次第に“点と点”がつながっていったんです。「情報を相手にわかりやすく伝えることのビジネス上の重要性と、マンガの利点が結びつくのではないか」と。マンガは視覚に訴えるので、文章よりも圧倒的なわかりやすさがありますからね。そして私は、「人にものを伝える」ところに、ビジネスの可能性がとてつもなく広がっていると確信しました。
――そして、ついに起業に至るわけですね。
梅沢:元々は「石橋を叩いても渡らない」くらい慎重なタイプだったんですが、サラリーマン時代にたくさんのプレッシャー、いや責任ある仕事を任せていただいたおかげで、「家庭を背負って起業する」という度胸がついていたんでしょうね(笑)
――過去のサラリーマン時代の経験がすべていまにつながっているわけなんですね。
梅沢:その通りです。近年、「新卒から起業する」のがもてはやされる風潮ではありますね。たしかにできる人にとっては、それはそれで素晴らしいことです。しかし、私個人としては、「起業したい人がまず就職することも悪くないんだよ」と言いたい。
私がサラリーマンの頃に、本気で取り組んだ仕事は、決して自分で選んだ仕事ではありませんでした。でも、そういった自分の想像の外にあった仕事が、めぐりめぐって、「自分が好きなことで生きていくための実力」を身につけさせてくれました。大切なことは、仕事を「やりたい」とか「やりたくない」で価値判断をしないで、眼の前の仕事に全力で取り組むことです。その中で身につけたものは、いつか自分の「好きなこと」をする時に助けてくれます。私はそう確信しています。
(続きは後編をご覧ください)
「マンガで起業する」使うIT、伝えるマンガ!スタークリエイツ代表 梅沢氏が語る地方創生のビジョン(後編)
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