起業のプロセスを週末3日間でゼロから体験できる国際プログラム「スタートアップウイークエンド(SW)」が10月21~23日、札幌市中央区の「es village すすきの村」で開かれました。
2日目はビジネスアイデアを検証します。本物の起業家によるコーチングも受けて、各チームのアイデアはどう変わってゆくのでしょうか。
📢 Day 2 / Oct.22
9:00。2日目が始まりました。遅刻もなく、全員がフレッシュな表情です。本日の終了予定は夜22:00ごろ。長い1日の始まりです。
📚 Morning Facilitation 📚
2日目の朝も岩城さんのファシリテーションからスタート。チーム運営やビジネスアイデアの検証方法について、大切なポイントが説明されました。
一つ目はCEOについて。岩城さんによると、アイデアの発案者=CEO、である必要はないそうです。チーム内で一番向いている人が適任とのこと。
二つ目は、ピッチコンテストの評価基準でもあるMVP(Minimum viable product)について。MVPは初期の顧客に対してプロダクトの「最小限の価値」を伝えるアイテムであり、スタートアップが最初につくる「製品」です。お金も技術もないなかで作るとして、いったいどのようなモノが最適なのでしょう。自動車を例にして、岩城さんがMVPの基本的な考え方を教えてくれました。
現代の自動車は走ること以外にさまざまな機能が付随しています。では、自動車のMVPに「最低限盛り込むべき提供価値」とは何なのでしょう。 岩城さんが会場に問いかけると、参加者の手が すっと上がりました。「人より速く動けること」。ご名答!。それでは「人より早く動く」価値を実現するMVPとは?
悪い例を示したのがスライド上段左端のタイヤです。これだけでは人が速く動けるプロダクトになりえません(人が乗れない)。一方、良い例を示したのが下段左端のスケートボード。これだと人を乗せて、人より速く動くMVPになりえます。つまり、自動車のMVPはタイヤではなくスケートボードということになります。
これは岩城さんが家業のビジネスで実際に開発したMVPです。半導体の静電気除電につかう「ケーブルレスイオナイザ」のMVP。3Dプリンターで作ったそうです。このまま顧客へ見せに行きましたが、評価は散々なものでした。では、MVPをどのように改善すると「商品」になるのでしょうか。
役立ったのは「リーンスタートアップ」の考え方です。図のサイクルの一番上にある「アイディア」がスタート地点で、そこから時計回りにステップを進めます。
「アイディア」が思い浮かべば、次に行うのはMVPを作り上げる「構築」「製品・サービス」のプロセス。さらに、顧客に見せて意見を聞く「計測」「データ」のステップに進み、そこから得た「学び」でアイディアを改善する―という循環型のサイクルです。
「リーンのサイクルを、安く早く、何回も何回も回しましょう。そのためのツールがMVPです」「初期のアイデアは大事ではありません。顧客のもとを訪ね、行動するたびに変わるからです」(岩城さん)
岩城さんはリーンスタートアップの手法も取り入れながらMVPを改良し、ケーブルレスイオナイザを製品化しました。
顧客に会い、リーンを回す―。スタートアップにおけるアイデア検証の重要な手法です。Startup Weekendの2日目は、このサイクルを実際に回してみることが参加者のミッションとなります。
💻 アイデア検証 💻
各チーム、ビジネスアイデアの整理からディスカッションを始めました。
「誰の」「どんな課題を」「どんな方法で解決」しようとしているのか。提供価値を実現するMVPは何なのか。競合製品はあるのか。市場規模はどれだけあるのか。マネタイズの方法は?紙やパソコンでビジュアル化しながら、アイデアの解像度を高めていきます。
チーム「オタルニア」
チーム「アサノシバ」
チーム「北ブチ」
チーム「令和維新」
昼ご飯はおにぎりと卵焼き!
各チームのアイデア検証が続く裏で、コーチングを担当する起業家の方々と岩城さんの作戦会議が行われていました。発展途上にある各チームに対して、どのような助言を授ければよいのでしょうか。岩城さんは言いました。
「コーチの役割は、ビジネスアイデアについて良し悪しのジャッジを行うことではありません。起業家としての経験や知恵を伝え、チームが正しい判断を下せるよう支えてあげて下さい」
👨🏫 Coaching 👩🏫
コーチを務める起業家の皆さんです。写真左から
- 鈴木 慎也 さん:株式会社esエンターテイメント代表取締役
- 依田 知則さん:Chaos ASIA合同会社代表社員
- 吉田 博紀さん:株式会社インフィニットループ取締役 Auto VR株式会社代表取締役社長 ジュニアプログラミングワールド実行委員長
- 柴田 涼平さん:合同会社Staylink創業者 NPO法人E-LINK理事 株式会社北加伊道取締役 株式会社とける代表取締役 LAUGH GROUP顧問
- 大久保 徳彦さん:株式会社POLAR SHORTCUT 代表取締役
- 今 啓亮さん:マルゴト株式会社代表取締役
- 伊藤 翔太さん:株式会社トリプルワン代表取締役 ※写真不在、後に合流
飲食業からIT業界、エンターテイメント、ファンド運営まで多彩なジャンルのコーチ7人が集まりました。「 コーチング12分 + 休憩3分」を1セットとして、計7セットのコーチングが2時間続きます。 本物の起業家によるフィードバックを受けて、各チームのアイデアはどう進化するのでしょうか。
チーム「令和維新」は、世の中にあふれる「 ちょっとイケてない 」チラシや広告のデザインを添削するサブスクサービスを検討していました。これに対し、コーチ役の今啓亮さんが助言したのは「イケてないデザインを勝手に添削して、それを制作した企業の問い合わせフォームに送りまくってみれば」ということ。一体どんな狙いがあるのでしょう。
今さんが懸念したのは、プロダクトがないままビジネスアイデアを顧客にヒアリングして、「ニーズはない」と即断されてしまうケース。
スタートアップが考えるサービスというのは、そもそも世の中に影も形もない斬新なものが多く、顧客側も具体的なイメージが掴めません。それをビジネスアイデアという抽象的な概念で説明されても「ニーズはない」との結論に至ってしまう。令和維新が考えたサブスクサービスも同様の可能性が考えられました。
そこで今さんが紹介したのは「ニーズを聞くのではなく(具体的なプロダクトで)沢山提案してみて、顧客が喜ぶか検証する」という方法。イケてないデザインの修正案を勝手に作って企業に送りつける、という助言の背景には、そのような狙いがあったのです。中身の濃いコーチングに、令和維新のメンバーはじっくり聞き入っていました。
約2時間におよぶコーチングを受けた参加者たち。あらゆる角度から助言を受けたことで、どのチームも当初描いていたビジネスアイデアが揺らぎ始めました。「どうするよ?」「脳みそ追いつかない…」。検証作業がストップし、会場全体に停滞感が漂ってきました。
窓の外を見ると、いつの間にか、繁華街すすきののネオンサインが煌々と輝いていました。
長丁場のディスカッションで疲れは頂点。
机の上もごちゃごちゃしてきました。目もしょぼしょぼ…
会場の至るところでチームを飛び出してのディスカッションが始まりました。
2日目の夕食が配られました。疲れ切った心身に少しでも栄養補給!
📝 Evening Facilitation 📝
19:30。「みなさん、元気ですか?」。会場の閉塞感を破るように、ファシリテーターの岩城さんが明るく呼びかけました。
「今、みなさんはここにいます」。スライドの折れ線は、参加者のメンタリティを示すもので、青色の小さな丸が参加者の現在地です。コーチングを受けたことでアイデアに迷いや課題が生じ、今がまさに「どん底」。
岩城さんが再度リーンスタートアップの図を参加者に見せました。
「机の前ではまり込んでいませんか?リーンのサイクルを回しましょう」。この図でいうと、各チームの現在地は、顧客のもとへ商品を持っていく前段階。そこで立ち止まるのではなく、次に「顧客のもとへ行く」というステップへ進まなければ、リーンスタートアップのサイクルは回せません。
とにかく机を離れて、顧客のもとへ行くしかない。
それにしても、顧客はどこにいるのでしょう。
岩城さんが示したのは、Value Proposition(価値の合致)の概念図。スタートアップの提供価値を欲している消費者は、全体のわずか13.5%しかいないのだそうです(アーリーアダプター層と呼ばれています)。
顧客を探すこと自体、とても難しいことなのかもしれません。なにより、ゆっくり休みたい週末の土曜夜、スタートアップのビジネスアイデアなど聞いてくれる顧客はいるのでしょうか。岩城さんはニッコリした表情で言いました。
「大丈夫。人間は意外に優しいです」
このほかにも、岩城さんはブレークスルーのヒントを教えてくれました。
「●●●だから▲▲▲に違いない、というロジックには整合性がない可能性がある。(固定観念を)疑ってみて下さい」。
「Ideaには価値がない!でも、行動から生まれる〇〇には価値がある!」
一番最初のアイデアにこだわる必要はありません。リーンスタートアップのサイクルに基づき行動を起こすことで、アイデアは変わってゆき、次の「何か」が見つかるかもしれません。
「大事なのはアイデアではありません、チームです」
チームがいるから、リーンスタートアップのサイクルを回すことができる。
ピッチまで24時間を切りました。プレゼン資料に盛り込むべき項目についても説明がありました。課題や解決策、市場規模、競合優位性などの基礎情報に加えて、収支計画やキーメッセージまで全10項目と盛りだくさんです。
発表時間はわずか5分。これ、全てを入れきることが可能なのでしょうか…。参考資料として、SlideShareにアップされているairbnbやFacebookといった世界的スタートアップのピッチ資料も紹介されました。
会場の片隅に二つのポスターが掲示されていました。「Make it Happen = 実現させよう」「No Talk, All Action. =議論より行動、外に出よう」。世界中のStartup Weekendで発信されているキーメッセージなのだそうです。机の前でいくら話し合ってみたところで何も始まらないし、生まれない。
岩城さんによると、東京都内で行われたStartup Weekendでは、ビジネスアイデアを検証するため遥々静岡へ出向き、制限時間に戻れなかったチームもありました(ピッチコンテストにはリモート参加)。「 Starup Weekend はルールがないのがルールとも言われています。思いつくことは何でもやってみて下さい」。
かのスティーブ・ジョブスも言っています。「If I try my best and fail, well, I’ve tried my best.(ベストを尽くして失敗したら、ベストを尽くしたってことさ)」。取り敢えず、ベストを尽くせってことで…。
▼▼▼ 3日目へ続く ▼▼▼
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