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【連載】<第四回目>雪エネルギーで美味しいお米とアスパラが食べられる!? 美唄市農協へ行ってきた!

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これからの時期、厄介者でもある「雪」をエネルギーに変換できないか、という取り組みが美唄市で行われています。これまでの連載では、データセンターや老人ホームでの導入例をお伝えしてきましたが、農業にも雪エネルギーが活かされています!

今回は美唄市農業協同組合にあるお米の保管施設「雪蔵工房」とアスパラの保管施設へ行き、インタビューさせて頂きました。

インタビュアー・取材:中村真紀・高橋アメリ 撮影 ・構成:高橋アメリ 取材日: 2017年11月9日(木)

雪蔵工房を導入したきっかけ

雪蔵工房を導入した経緯について、担当の辻脇さんにお話を伺いました。当時、お米の売価が低迷し、市場での評価を高めるためには品質の高度化・均一化が求められていました。また、以前あった倉庫が町のはずれにあり、アクセスがあまりよくありませんでした。

その頃ちょうど、「美唄自然エネルギー研究会」が雪をエネルギーとして、雪を利用した様々な取り組みを展開していました。そこで、「雪を使って、倉庫の問題や品質の問題などを解決できないか?」と思い、雪蔵工房を建てることになったのが経緯です。

実際に「雪蔵工房」の中を見せて頂きました!

雪蔵工房 外観

カメラに収まらないほどの広さ!(画像提供:美唄市役所)

雪冷蔵システムを利用して、米を貯蔵している「雪蔵工房」。この施設は、国内最大の貯蔵量で、6000tにものぼります。3月下旬に雪が入れられる貯雪庫、貯蔵庫、冷風を送る冷風循環系で構成されています。

資料:北海道経済産業局 雪冷熱エネルギー活用事例集5

この施設の仕組みは、「直接熱交換冷風循環方式」というもので、貯蔵庫から戻った空気を貯雪庫に送り、雪の下部に複数ある 横穴に通すなどして冷却したあと、戻り空気とバイパス混合器で混合させ4℃とし、貯蔵庫へ送風する、というものです。

JA美唄 雪蔵工房

この中には4つの倉庫があります。入り口の中に更に各倉庫の入り口があることで、外気との温度差を失くすことができます。

JA美唄 雪蔵工房

倉庫に入ると、このように、米がずらりと並んでいます。

JA美唄 雪蔵工房

JA美唄 雪蔵工房

JA美唄 雪蔵工房

近づいてみると、1つ1つの袋は密着しておらず、ラックに入って保管されています。隙間を開けることで、表面だけが冷えず、全体に行き渡るように工夫されています。

このようにして、庫内は米を保管するのに最適な環境である温度5℃・湿度70%に保たれています。雪零温貯蔵が行われるので、通年を通して新米のような味が維持することができます。

気になる倉庫の維持経費ですが、これまでの低温倉庫の約半分におさまったとのことです!

貯雪室

JA美唄 雪蔵工房 貯雪室

こちらは貯雪室です。雪がない現在は、お米の保管庫になっていますが、毎年3月中旬までにこちらに3600tの雪が投入されます。

雪入れ

雪が投入されている様子 (画像提供:美唄市役所)

雪入れ

画像提供:美唄市役所

雪の入れ方は、ショベルカーで除雪した雪を運び、ロータリー除雪車で細かくなった雪を吹き付けます。ロータリー除雪車を利用することで、密度が高まり、雪が解けるスピードを遅くすることができます。貯雪庫の雪は、3~8月いっぱいまで使われます。

おぼろづき

こうして雪エネルギーを活用した、雪蔵工房で生まれた「雪蔵米」は、年間を通して変わらぬ美味しさ、安心・安全をお届けできます。

おぼろづき

中でも「おぼろづき」は「全国米・食味分析鑑定コンクール」金賞受賞の栄に輝いた品種で、お米のでんぷんに含まれる“アミロース”の割合が少なく、粘りがあり柔らかくコシヒカリに勝るとも劣らない、高い評価を得ています。

新米の美味しい時期がきています。見かけることがあったら、試してみてはいかがでしょうか。
通販でも購入できます。サイトはこちら

アスパラの保管施設を導入したきっかけ

担当 山本様
続いて、同じく雪エネルギーを利用したアスパラの保管施設について、担当の山本様にお話しを伺いました!

アスパラの保管施設を導入したきっかけは、先ほどの「雪蔵工房」で米の保管時に利用する雪エネルギーにまだ余力があるので、アスパラの保管施設(利雪型予冷庫)を導入しました。

自然対流方式

資料:雪屋媚山商店

この、利雪型予冷庫の仕組みは、ハードコンテナに雪を詰め貯雪し、その冷熱を利用して、アスパラガスの予冷・保管をする「自然対流方式」という方法が採用されています。通常の冷蔵保存と比較し、低温かつ高い湿度での保管が可能なため、みずみずしさが持続します。

また、夏の間の急激な気温変化による品質の低下を防止するため、予冷庫に入れる前に「前室」を設け約15℃にあらかじめ下げた後、予冷や貯蔵を行うというシステムで、品質を管理しています。

貯蔵・栽培方法の工夫でよりおいしく!

実は美唄のアスパラは、全道6位なのはご存知でしょうか。そんな美唄のアスパラですが、1980年ごろは生産量が全国一位となったものの、それ以降は病虫害などから生産量が低下してしまいました。その状況を脱却するために、親茎で優しい木かげをつくった「こもれび栽培」という方法を取り入れました。

「こもれび栽培」とは、春に収穫を終えたアスパラをそのまま成長させ、茎をのばしていきます。茎を伸ばしたアスパラは、まるで竹林のように、茎をどんどん伸ばしていきます。

こもれび栽培

画像提供:JAびばい

この竹林の部分が、光合成を活発に行うことで若い茎の成長を促します。この若い茎を、秋口に収穫することで、春の時期しか楽しむことができなかったアスパラを、4~9月まで楽しむことができるのです。

こもれび栽培の仕組み

資料:JAびばい

九州地方では「立茎栽培」と呼ばれる方法ですが、美唄ではアスパラの葉から差し込んでくる夏の太陽の美しさを表現し、「こもれび栽培」と呼んでいます。

こうして栽培や貯蔵方法に工夫し、収穫される美唄のアスパラ「夏得物語」は、太くて根元まで柔らかいのが特徴です。

利雪型予冷庫を導入してよかったこと

雪を利用しているので、電気代が下がったことが一番大きいです。そして、予冷庫の中で低温多湿で保管されることにより品質が高まったことで、ブランドとしての価値も高まりました。最近ではアジアへも輸出し、販路の拡大もできました。導入してよかったと感じています。

残念ながら今年のアスパラは既に完売しているため、来年お店で見かけた際は美唄産の「夏得物語」を試してみて下さいね!

 

取材した感想

雪エネルギーを利用したことで、電気代などのコストが少なくなり、また品質を保つことができるのでブランドとしての価値が高まりました。おいしいお米やアスパラが届くことは、私たち消費者の立場にとっても嬉しいですよね。美唄や北海道の素晴らしさがたくさんの地域に広がるきっかけになりそうです。

 

これまでの連載についてはこちら

【連載】<第一回目>ホワイトデータセンター事業について美唄市に行ってきた! | キタゴエ

【連載】<第二回目>雪は再生エネルギーの時代へ!雪屋媚山商店に行ってきた!

【連載】<第三回目>雪冷房システムを取り入れる、美唄・ケアハウスハーモニーへ行ってきた!

この記事を書いた人

高橋 アメリ
可愛いもの、新しもの好きなアラサー。見た目ふんわり、でもパワフル。
家と会社を往復する毎日に「このままでいいのかな」と悶々としていた時に自分の「好き」を見つけ、毎日が楽しくなったことをきっかけに「一歩踏み出した先の楽しい世界」や「新しい自分を見つける」後押しになる記事や「次の週末がちょっと楽しみになる」記事を執筆。
札幌在住。趣味は旅行とポーセラーツ(教室も開催)、カフェめぐり。
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